◆その名の通り「道化師」のような皮膚
カーテンをくぐると、陽(我が子)はオムツを替えてもらっていた。
看護師さんの優しい言葉がけ、心地のよい少し高くて可愛い声。
オムツを替えるといっても、ちゃんとオムツは履けず、敷いてあるだけのオムツ。
白く分厚い皮膚、真っ赤でジュクジュクした皮膚、
この二種類の皮膚が模様になり、
それはまさに、道化師。
ピエロの着ている服のようだった。
この病名を名付けた方は、この見た目で決めたんだ。
初めて病名を聞いたとき、なんてふざけた病名だろうかと耳を疑ったけれど、
今の陽は紛れもなく、その名の通りの姿だった。
オムツを替えている間、陽はか細い声で泣いていた。
ゆっくりと腕を動かして、何かに抵抗しているかのように。
赤ちゃんが泣くことなんて普通で、泣くことが仕事、と聞いたこともある。
しかし私は陽が泣くと、痛くて、辛くて、苦しくてもがいている、としか思えなかった。
陽にまだ触れることも禁止されていて、ただ傍で見つめていると、近くで赤ちゃんに面会にきた夫婦の声が、カーテン越しに聞こえる。
「ちっちゃい手やなぁ~」
「足もちんちくりん」
「あっほら! 手握ったで!」
「写真撮って!!」
「やばい ちょーいい写真撮れた!」
NICU(新生児特定集中治療室)へのデジカメの持ち込みは、許可されていた。
写真・・・。
1か月の早産で、出産する前からNICUにお世話になると分かっていたため、デジカメはすでに用意してあった。
今の陽を撮る? この姿を撮る? 私には無理だ……。
すぐ近くでは愛しい我が子の様子を、何枚もカメラに収めている。
きっとその写真はアルバムに挟まれて、
この先も、産まれてすぐの写真として大切に保管されていくのだろう。
羨ましいな。心からそう思った。
でもね、陽、私はあなたが産まれてきてすぐの姿を、きっと忘れることはないよ。
忘れることなんて、できないよ・・・。
何日か母乳を届ける日は続き、陽が産まれてちょうど2週間。
この日は、夫とともに陽に会いにきた。
夫と話し合い、陽の写真を撮ろうと、手にデジカメを握りしめて。
写真について、夫と話し合った。
今の陽の姿を私たちの記憶の中だけでなく、ちゃんと写真として記録に残そう。
夫の両親は、まだ一度も孫の姿を見ていない、かといって撮った写真を見せるわけではない。
今はまだ、見せる時じゃない。
そんな話もしながら、ふたり揃って陽の所に行ける時、写真を撮ろうと決めた。
そして、その日はすぐにやってきた。
陽が産まれて2週間経った日、カメラを握りしめて、陽のもとへ・・・。
寸前になって、この姿を撮っていいものか。
そう迷ってしまう私をよそに
「反射して光が入ってしまうわ~」と言って、
四苦八苦しながら撮影する夫。
そしてなにかを察したのか、
「僕は陽が愛しいで」
「どんな姿でも、陽が可愛い」
「もう見慣れたんかなぁ~」
陽に優しい笑みを浮かべながら話す夫。
あぁ、この人が夫でよかった。
この人が陽の父親でよかった。
この人となら、なんとかなるのかな。
そう思っていると、近くにいる看護師さんが写真を撮っていることに気付き、
光が入らないよう協力してくれて、無事に何枚か写真を撮ることができた。
この日から面会時には必ず、陽の姿をカメラに収めるようになった。
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