弊社・KKベストセラーズが20年に渡り、発行し続けたファッション誌『STREET JACK(ストリートジャック)』。1997年創刊し、その歩みは2017年の休刊でしばし止めている。

 手前みそになりますが、ストリートファッションブームの火付け役となり、シーンを牽引する雑誌のひとつだったと思う。

 2011年、東日本大震災が発生。日本中に甚大な影響を及ぼしたこの大災害は、ファッション業界、出版業界にももちろんのこと、襲いかかってきた。
 そんな中、いったい“何”を考え、“何”を発信していたのか、振り返っていきたい。SJ クロニクル 2011

「2011年7月号」を振り返る 

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前年に朝ドラ『ゲゲゲの女房』でブレイクしたばかりの向井 理さんが表紙。「天才型か努力型かと聞かれたら、僕は完全に後者」と自分を分析していた。

【DATA】発売日:2011年5月24日
表紙:向井 理
巻頭特集:誰でも簡単♪ リアルな300コーデ

 東日本大震災から9年。

 あの大災害は、当時を知る者すべての心に刻まれ、そして風化させてはいけない、想いと叫びを残していった。

 そんな震災が起こった年。当時日本中が自粛ムードとなる中、ファッション業界、雑誌業界も例外ではなく、ストリートジャック編集部でも「今、何をすべきか」が毎日のように問われていた時期。そのまっただ中で作られたのが、この号だった。

 編集部が出した答えは、「こういうときだからこそ、全国で待っている読者のために、いつものストリートジャックを届けよう」だった。


 こういった判断には当然、賛否があるかもしれないが、あのときの葛藤は、9年経った今も絶対に忘れてはいけないと思う。

 

 さて、この号はのちに毎月恒例になったある「企画」が本格的にスタートした号でもあった。それは…

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?

そう、付録である。

 この号までも『STREET JACK』には特別付録がなかったわけではないが、本格的に“商品開発”が始まったのは、この号がきっかけだった。

 上にも書かれているとおり当時としては「付録の常識を超えた!」クオリティで、「セレクトショップの名前を冠した腕時計が付いてくるなんて!」と業界でも騒然となったとか。

 

 そして、この号の中身(目次)がこちら

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?

 表紙にはブレイクまっただ中の向井 理さんが登場。
 2010年にNHK朝の連続テレビ小説(いわゆる「朝ドラ」)の『ゲゲゲの女房』で好演し、以降「朝ドラ」は若手俳優の登竜門となるのだが…。

 

■当時のNo.1人気連載が「街こそおしゃれの教科書だ!」

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?
写真を拡大 2010年11月号の大幅リニューアル後、SJの看板連載となった「街こそおしゃれの教科書だ!」は約4年にわたりSJの巻頭を飾った。

 この頃の『STREET JACK』でトップクラスの人気を誇ったのがスナップ連載「街こそおしゃれの教科書だ!」。毎月、「シャツ」「ジーンズ」「ブルー」などアイテムやカラーのトレンドテーマで、街のおしゃれさんをスナップするこの企画。

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?
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 刺しゅう入りのシャンブレーシャツや、ボルドーのボウリングシャツなど、アイテムチョイスには若干時代を感じるものの、当時のファッションは今見てもそこまで違和感はない。

■「切り貼り風」の合成写真がなぜか編集部でブームに!
東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?
写真を拡大 全国のセレクトショップのスタッフさんを各地で撮影。

 この頃の誌面でとにかく目立つのが、雑誌のスクラップのように切り貼りした感じの写真レイアウトだ。ファッション誌の表現としては王道パターンのひとつなのだが、当時は編集部的な「マイブーム」でもあった。

 例えばスナップだけでなく、モデルも…

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?
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 これ、実際にプリントした写真を実際にハサミで切って、それをさらにパソコンに取り込んで…と、カメラマンさん泣かせの企画。

 カメラマンチームからは「またアレっすか…!?」とこっそり編集への恨み節があったとか、なかったとか。

 

■これまでモノクロだったカルチャー企画、カラーへ昇格。

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?
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 もうひとつの隠れた人気連載だったのが、SJ編集部員が最近買ったものを紹介する「SHOPPIN’ JACK FLASH!!」。

 この連載は今なお、各所で復活を希望する声が多い(笑)。

 そして、この頃の誌面にはモノクロページがなくなり、オールカラーだったため、創刊以来モノクロ扱いが続いていたファッション以外のカルチャー企画がカラーに昇格することも多くなった。

 

東日本大震災から9年。あの年、『ファッション雑誌』は何を発信していたのか?
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 特に2011年~2013年ごろのSJは、カラーのサブカル企画全盛期を迎え、数多くの迷珍企画も生み出されるのだが、これもまた別の機会に・・・。

 制作側は「つい最近」と思っていても、もうだいぶ…というか9年も経っているだなーと、感慨深いものがあります。

 若々しく、大学生たちとがむちゃらに、トレンドを追いかけていた部員たちもすっかりオジサンになってしまいました(笑)。

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