コロナショックによって世界規模での経済の悪化に歯止めが利かない。そこで各国では大規模な財政出動による経済対策を始めた。
日本も同様だが、そこでまた再び注目されているのがMMT(現代貨幣理論)だ。MMTをいち早く日本で紹介し、『奇跡の経済教室』シリーズ(『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』)がベストセラーになっている評論家・中野剛志氏が緊急寄稿。■「日本は、財政危機だ」というのは思い込み
これは「第二次世界恐慌」だ!〜評論家・中野剛志氏が緊急寄稿~...の画像はこちら >>
1929年、ウォール街で起こった「暗黒の木曜日」が引き金を引いた世界大恐慌。

 コロナウイルスのパンデミックにより、世界経済は深刻な事態に陥りました。

「第二次世界恐慌」という声も出始めていますが、決して大げさではありません。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-25/Q7Q1WJT0G1KY01

 

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-23/Q7M9HTT1UM1001?utm_source=yjp&utm_medium=bd&utm_campaign=yjp

 

https://www.barrons.com/articles/washington-must-go-all-in-now-on-fiscal-aid-or-america-will-pay-later-51584746071

 

https://www.theguardian.com/business/2020/mar/21/100-years-on-another-great-depression-coronavirus-fiscal-response

 

 米国は220兆円の経済対策を決めました。

 米国の国内総生産(GDP)の約10%に匹敵する、史上最大の経済対策ですが、「第二次世界恐慌」なのですから、当然の措置でしょう。

 ちなみに、「インフレが止まらなくなる!」とかいう批判は出なかったようです。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032500887&g=int

 

 ところが、この期に及んでもなお、財政赤字の拡大が心配で、財政出動が嫌いな経済学者や経済評論家たちがいるんですね、日本には。

 さすがに「インフレが止まらなくなる」という批判は自粛中のようですが、その代わりに、「財政政策は効果に乏しい。それより、まずはパンデミックを収束させるのが先決だ」などとゴタクを並べているようです。

 

 もちろん、コロナウイルスの感染拡大を防ぐのが先決だというのは、その通りです。

 問題は、言うまでもありませんが、感染拡大を防ぐために経済活動を制限すると、経済全体が大打撃を受けるということです。

 

 そのため、感染拡大の防止のためには、厳しめの措置が必要だと思っても、経済への打撃が怖いので、感染拡大防止措置を徹底できなくなります。

 その結果、感染拡大の阻止に失敗し、さらなる厳しい措置が必要になるものの、それも企業倒産や失業のことを考えると、徹底するのに躊躇する。

 それが、感染をさらに拡大させるという負のスパイラルです。

 要するに、コロナウイルス対策と経済の板挟み、というわけです。

 

 しかし、感染拡大防止措置による経済へのダメージは、国の経済政策によって、かなり軽減することが可能です

 米国の220兆円の経済対策は、まさにそれですし、自民党の若手議員による提言も、そうです。

https://nihonm.jp/post_article/20200311

 

 このように、経済へのダメージが経済対策によって軽減できるのであれば、その分だけ、コロナウイルス対策も強力なものにできるでしょう。

 コロナウイルス対策と経済の板挟みというものから、脱出できるわけです。

 

 ところが、ここで問題なのは「日本は、財政危機だ」という思い込みです。

 この思い込みがあると、「コロナウイルス対策を徹底したいが、経済へのダメージを軽減させる財政政策をやると、財政破綻するかもしれないからできない」ということになります。

 そうすると、コロナウイルス対策と財政問題の板挟みにはまって、またしても負のスパイラルに陥ります。

■MMTによって「固定観念を打ち破る思考の偉業」をやってみようではありませんか

 さて、ここでMMT(現代貨幣理論)が重要になります。

 MMTによれば、自国通貨を発行する政府には財源問題はなく、したがって日本は、財政危機ではありません。

 財政赤字をもっと拡大させても、日本政府がデフォルトになることも、インフレが止まらなくなることも、金利が暴騰することもありません。

 

  詳しくは、以下の二冊のいずれかをご覧ください。

『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』

『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』

 

 ですから、コロナウイルス対策と財政問題の板挟みなどというものは存在しません。

 日本政府は、財源を気にせずに、コロナウイルス対策も経済対策も徹底することができます。

 

 このように、MMTは、日本にとっても世界にとっても、極めて重要な理論だったのです。

 そういう理論が昨年、日本に紹介されたというのに、日本の経済学者や経済評論家の多くが、MMTについて正しく理解しようともせず、「MMTなんてあり得ない!」とか「インフレが止まらなくなったらどうする!」などといった、批判というより誹謗中傷をしていました。

 極めつけは、これですかね。もはや、反論する気も失せるほどの凄いレベルです。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200326-00612108-bookbang-bus_all

 

 ちなみに、1930年代の世界恐慌(「第一次世界恐慌」)では、当時の主流であった健全財政論は吹き飛ばされ、米国のルーズヴェルト政権によるニューディール政策や、日本の高橋是清による高橋財政のように、MMTの先駆けとなる積極財政政策が実行されました。

 特に、日本の高橋財政は、当時の世界で最も早く、恐慌からの脱出に成功したのです。

(参考:高橋是清とMMT)

https://ies.keio.ac.jp/upload/Nakano_Paper.pdf

 

 高橋是清やルーズヴェルトは、ジョン・ケネス・ガルブレイスの表現を借りれば、健全財政という「固定観念を打ち破る思考の偉業」を成し遂げたのです。

 

 なお、MMTを批判する経済学者たちは、高橋財政についても、それが放漫財政や軍事費の増大、あるいは高インフレを招いたなどと言って貶めていますが、

それも間違いです。

 詳しくは、以下の二冊を参考にしてください。

 

『高橋是清 ―日本のケインズ その生涯と思想』(著・リチャード J スメサースト/東洋経済新報社)

『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』(著・島倉原/KADOKAWA)

 

 MMTは、1930年代の「第一次世界恐慌」の経験を教訓にして生まれた理論です。

 「第二次世界恐慌」の今こそ、このMMTによって「固定観念を打ち破る思考の偉業」をやってみようではありませんか。

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