『吾妻みやげ』に「女色魚に順ず」というランキングがある。女遊びを魚になぞらえ、評価したものである。
一 太夫格子は鯛のごとし。平人の口に入りがたし。
(吉原の太夫や格子などの上級遊女はタイである。庶民はとても手が届かない)
一 品川は鰹のごとし。上下ともに味いし。
(品川宿の女郎はカツオのようなもの。高級も安価もあり、手軽に味わえる)
一 夜鷹、鯨のごとし。くさみにこまる。
(街娼の夜鷹はクジラのようなもの。あそこが臭い)
一 下女は鰯のごとし。好味なれども床いやし。
(下女はイワシのようなものだ。味はいいが、品がない)
一 妾は赤貝のごとし。子をうむと味わいなし。
(妾は赤貝のようなもの。妊娠して子供を生むと、途端に味わいが落ちる)
一 娘は金魚のごとし。色の最上。
(未婚の素人の女は金魚で、まさに色事の相手としては最上)
一 女房は鰹節のごとし。さして味わいなけれどあかず。
(女房はかつおぶしのようなもので、たいして味はないが、飽きがこない)
一 人の女房は鰒のごとし。好味なれども命あやうし。
(他人の女房はフグのようなものだ。味はよいが、へたをすると命が危ない)
まさに江戸の遊び心であろう。
いっぽう、俗に「一盗二婢三妾四妓五妻」というランキングもある。読み方は「いっとう、にひ、さんしょう、しぎ、ごさい」。一盗は、人の女房を盗み食いすること。いまでいえば不倫であろう。ばれはしないかというスリルもあって、快感もまさるのだろうか。二婢は、下女など奉公人の女に手を出すこと。現在の感覚で言えば、上司がその職権を濫用して、部下の女子社員を強引にものにするようなものだろうか。セクハラにあたる。三妾は、言うまでもあるまい。しかし、妾という表現はいかにも古い。