新卒入社の若者に対し言われることの多い「まずは3年働け」という言葉。「3年以内離職率」という指標もあるように、「3年」という年数がある程度の説得力をもって使われることは多いようですが、林先生は、「まずは3年」という考え方についてどのように思っているのでしょうか。

「この会社で自分はトップ争いに加われないな」と思ったときも同様

 僕は新卒で入った長銀(日本長期信用銀行)を5か月で辞めた人間なので、「まずは3年働け」なんて言ったことはないですし、言う資格もありません。

林修が「まずは3年働け」の定説に異論 「会社の将来性に不安を...の画像はこちら >>
写真/花井智子

 長銀を辞めたのは、入行してすぐに「この銀行はいつか潰れる」と、感じたからです。このバブルに浮かれ立つ人の中にいても、得るものはないと思ったので、スッパリ辞めました。ただ、実際破綻したのは9年後でしたし、辞めた後の3年くらいはよくわからないことばかりしていたのですかから、「まずは3年」働いたほうがよかったのかもしれません。(笑)

 会社って入ってみないとわからない部分が多いと思うんですよ。入社前に、問題点をちゃんと教えてくれるような会社は、あまりありませんからね。実際に働いてみて、会社の将来性に不安を感じたらさっさと辞めるという判断を、僕は否定しないし、できません。
 入ってみたら、会社の将来性に疑問を抱くようになった、あるいは周りの社員を見て「この会社で自分はトップ争いに加われないな」と思い、しかも二番手としてやっていく覚悟もできないのであれば、辞めるという判断も十分あり得ると思います。たとえば、デザイナーの事務所に入ったものの、どう見ても他のデザイナーがすご過ぎて、ちょっとやそっとじゃ追いつかないと思ったようなとき、そこで頑張り続けることに意味があるかどうか。

 自分のいる予備校界のことなら、もっとハッキリ言えます。授業を見ていて、明らかに授業が下手で、講師に向いていないなあと思う人を何人も見てきました。そういう人で、努力して素晴らしい講師になったという人は皆無です。

特にうちの予備校は厳しいので、そういう講師は、確実にいなくなっていきました。逆に、若くても、上手い人は上手い。そういう兆しがあるんです。少なくとも、予備校界の場合は、早めに切り替えたほうが後々のためになることが多いと思います。

 ただし、単に仕事が嫌とか、上司とそりが合わないとかいう理由で、あっさり辞めてしまうのは考えものです。なぜ辞めたいと思うのか、まず、じっくり自分に向き合うことです。その理由が、上に述べてきたようなものであるならば、早めの決断をしてもいいのではないかと思います。
 

明日の第十四回の質問は「Q14.予備校で、生徒のモチベーションを上げるために行っていること、かけている言葉はありますか?」です。
※この記事は2月15日(水)までの限定公開です
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