2011年7月に『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』に出演し、俳優の道を歩み始めた青木玄徳。舞台、ドラマ、映画と、活躍の幅を広げてきた彼が、2015年から出演を続けている映画シリーズが『闇金ドッグス』だ。
今回は、1月14日(土)より公開の最新作『闇金ドッグス5』について話を聞いた。
インタビュー後半では撮り下ろしカットも掲載されるので、お楽しみに。
青木玄徳「『こんな現実、なかったらいいな』という話を積極的に...の画像はこちら >>
写真を拡大 (C)2016「闇金ドッグス4&5」製作委員会

――『闇金ドッグス』は今回が5作目で、青木さんの主演作は『闇金ドッグス3』に続いて2作目ですね。1作目で“中途半端なイケメン”と言われるホスト役で出演したときは、このような展開は予測していましたか?

青木 まさか先のシリーズで、自分の役があるとは思っていませんでした。1作目の『闇金ドッグス』では、ボコボコにやられて消えていく……という、半ばエキストラみたいな役でしたからね(笑)。

――自身が演じる、元ホストの闇金業者・須藤司という人間は、どんな人だと感じていますか?

青木 普通に生きていたら体験できない、崖っぷちの状況に追い詰められる人間ですよね。運の悪いヤツでもあるし、受け身で生きている男でもある。でも、そういう人間が力強く生きていく様を見せられるのは、この役ならではの楽しさだと感じています。

――金に苦しむ人、金に群がる人や、闇の世界の欲望や暴力を描く『闇金ドッグス』の世界は、本当に現実社会では考えられない恐ろしさですよね……。

青木 「こんな現実、なかったらいいな」という話を積極的に描いていくシリーズですからね。ただ、今回の『闇金ドッグス5』で菅原大吉さんが演じている役柄は、実話にインスパイアされたものなんです。だから現実には、この映画より過酷な状況で生きている人もいると思うんですよ。

――『闇金ドッグス』シリーズでは、以前はアイドル業界の裏側の過酷さを描いていましたが、今回は「認知症の母の介護」「生活保護」といったことがテーマになっていますね。現実社会でリアルタイムに起きている問題を、作品に取り込んでいるのが面白いと感じました。

青木 そのような現実の世界と、山田くん(山田裕貴、安藤忠臣役)や僕の闇金業者「ラストファイナンス」がぶつかっていく部分が、今回の『闇金ドッグス5』は特に見所になっています。山田くんが演じる忠臣と、僕の司はキャラクターが全然違いますし、ゲストのキャラクターが出てくるたびに新しい話が生まれるので、このシリーズはまだまだ続いてほしいですね。

青木玄徳「『こんな現実、なかったらいいな』という話を積極的に描いています」
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――闇金業者の仕事は、演じていてどんなものだと感じましたか?

青木 やっぱり修羅場が多いですよね。それに闇金業者は、「子供の頃からなるのが夢だった」という仕事ではないし。客から力づくで利子を取り上げ、メシを食っていくという生き方は、男らしく見える部分もあるし、悲しく見える部分もあります。

――また、裏社会の人なのに、法律を持ち出して相手を脅したりと、知識で理論武装しているところも、映画を見ていて面白いと感じました。

青木 ごく普通に生きている場合は、法律を利用して何かを仕掛けよう……なんて考えないですよね。でも、闇金までいっちゃうと逆に法律を使い始めるんです(笑)。

――でも青木さん演じる司は、まだ闇金の世界に染まりきれていない部分もありますよね。今回の映画でも、生活が苦しくて返済を待ってほしい……と頼まれて、温情で許してしまう場面がありました。

青木 まだ生半可な闇金業者なんです。ただ、『闇金ドッグス3』の頃よりは成長していますし、忠臣を見習って変わってきた雰囲気も出そうと意識しました。今回の『闇金ドッグス5』の事件をきっかけに、また司も変わってくと思います。

――そうやって司は、普通の人の世界と、裏社会の狭間で葛藤しているキャラクターだからこそ、見ていて感情移入できました。

青木 司は一般の人の考え方や反応がよく表れる人間なんです。闇金業者なのに、何の奥の手も持っていないし、脳みそもツルツルですから(笑)。今回はその司が、インテリヤクザみたいな頭のいい男を相手に、古き良き時代の戦い方で勝負をするところも見所です。

青木玄徳「『こんな現実、なかったらいいな』という話を積極的に描いています」
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――一方で、司は元ホストの女好きらしく、今回も「結婚はリセットしても愛のマジックでコンティニューするから」といった甘いセリフを吐いていますよね(笑)。ああいうセリフは、やはり言うときには気合いが必要なんですか?

青木 気合で乗り切らないとダメですね(笑)。「ビジネスラブ」とか、ギャグで言うような言葉を、まっすぐ相手に伝えるわけですから。こういう女好きのキャラクターは、過去にも何度か演じてきましたが、演技をするのが見た目以上に難しいんです。だからこそ役者冥利につきますし、演じていて根性が付きます。

――舞台やミュージカルでも様々な極端なキャラクターを演じてきたと思いますが、それと比べても『闇金ドッグス』の司の方が難しいですか?

青木 違う難しさがありますね。歌やダンスがあったり、刀を持っていたりすれば、それを武器にして役を作っていくことができますが、司は何の武器もない。純粋に相手のお芝居を受けて、それをお芝居で返していく役ですから。

――ある意味、設定やキャラクターが極端な方が演じやすさもあるわけですね。

青木 やりやすさはありますし、素の自分を隠しきることもできます。逆に『闇金ドッグス』シリーズの司の場合は、驚いた表情なんかは、素の自分も出ていると思います。リアルに演じれば演じるほど、自分がそういう人間だと思われそうだし、誤解を生みやすいキャラクターなんですけどね(笑)。

青木玄徳「『こんな現実、なかったらいいな』という話を積極的に描いています」
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――この『闇金ドックス』のシリーズは、『ミュージカル・テニスの王子様』の出演時から青木さんのことを応援している方はどんな反応で見ているんでしょうか。

青木 楽しんでもらえていると思います。司はカッコいいキャラクターではないですが、生きるために必死な人間ですし、現実的なキャラクターでもあります。テニミュが好きな人にも、『闇金ドッグス』はぜひ見てほしいです。

――この『闇金ドッグス』のようなヘヴィな世界観で演技をしながら、昨年は舞台『パタリロ!』にも出演されていましたね。

青木 声までアニメキャラのバンコランに似せたり、ミュージカルっぽく歌ったり、『闇金ドッグス』の世界では全くやらないことをやりました(笑)。僕はあっちこっち飛び回って、色々な役を演じていますが、1作品1作品がすごく楽しいです。

――それにしても、こうして並べてみると(役の)ふり幅がスゴいですね。

青木 パタリロでは、舞台上で男とキスまでしていますからね(笑)。でも舞台が終わった後には、「『闇金ドッグス』見ました!」って言ってくださる方もいましたし、舞台を見た後で『闇金ドッグス』を見てくれた方もいましたね。

――この先、「こんな役をやってみたい」という希望はありますか?

青木 バンドマンの役をやりたいですね。音楽が好きなのもありますし、単純にカッコいいじゃないですか(笑)。ボーカル役でガッツリ歌うのもいいし、楽器の練習をしてギター役に挑戦するのもいいなと思います。

――2017年、プライベートの方で挑戦したいことは?

青木 去年、久々にスノーボードをやろうと思って道具を一式揃えたんですが、結局できなかったので、今年こそはやりたいです。でもここ何年か、趣味がどんどん消えていっているんですよ。古着はずっと好きで、このあいだも中目黒のJANTIQUES(ジャンティーク)の服を見て「スゲぇカッコいい!」と思ったんですけど、「レベルが高すぎてついていけないかも」って思いましたし(笑)。レコード集めも最近はしていないし……。

――そうやって趣味も忘れるほど、仕事に打ち込んでいる……とも言えるんじゃないですか。

青木 そうですね。特に今年は仕事にガッツリ取り組んで、飛躍の年にしたいです。実は、お正月に引いたおみくじが大吉だったんですよ。「楽しく遊びたい」と思っていたら、そっちに運がいっちゃうと思うので、今年は仕事です(笑)。その大吉の運のよさも、「清き心でいれば」という但し書き付きでしたから。

――やましさを見せてしまうと、運が逃げていってしまうわけですね。

青木 そうなんですよ! 『闇金ドッグス』みたいな状態でいると、大吉が飛んでいっちゃうので気をつけたいです(笑)。

 

Profile
青木玄徳(あおきつねのり)

青木玄徳「『こんな現実、なかったらいいな』という話を積極的に描いています」
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1987年10月19日生まれ、埼玉県出身。2011年にミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで氷帝学園の部長・跡部景吾役で俳優デビュー。その後、ドラマ「仮面ライダー鎧武」、舞台「海峡の光」、「瞑るおおかみ黒き鴨」(主演)、「パタリロ」映画『闇金ドックス3(主演)、『コープスパーティー Book of Shadows』、『インターン!』、『Bros.マックスマン』などに出演。現在ドラマ「猫忍」にレギュラー出演中。

今後の待機作に、映画『探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。』(2017年初春公開)、『くらわんか!』(2017年夏公開/主演)、舞台『里見八犬伝』など多数。

 

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