昨年夏のリオ五輪閉会式、安倍首相が「スーパーマリオブラザーズ」のマリオに扮して登場したことでも話題になりました。オリンピック旗・パラリンピック旗を引き継ぐフラッグハンドオーバーセレモニーの企画・演出に携わった演出振付家のMIKIKOさんが、椎名林檎さんらと議論した「日本人らしいクールさ」とは。
難しいことを涼しい顔で披露するのが日本人らしいかっこよさ

 日本は昔から海外に対する憧れがすごく強かった。だから一生懸命研究して、フォローしてきたら、いつのまにかきちんと超えられていた、という印象があります。それは、研究熱心なところや、細部にとことんこだわるところ、丁寧さなどが日本人は秀でているからだと思いますけど。

リオ五輪閉会式 演出振付家・MIKIKOが椎名林檎らと話し合...の画像はこちら >>
写真を拡大 Photo by Tokyo 2020 / Shugo Takemi

 日本人らしい演出といえば、リオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニー。日本人としてどんな演出にするべきか議論をしていたときに、椎名林檎さんから“江戸前”というテーマが上げられて。作品を作っている過程や、心の中はぐつぐつと燃えたぎっているんだけど、お披露目するときにはその苦労を見せずに、すっと、さりげなく発表する。“とっぽさ”とでも言いますか。丁寧に丁寧に作って、隅々までホコリを取って、でもその苦労は一切見せない。「何も難しいことはしてませんけど?」なんて涼しい顔をしている。もちろん一生懸命作るわけですが、その舞台裏は見せずに、難なくやってのけてしまうような。そういう、頑張っている感がバレてしまう方がダサいという感覚が “江戸前”なんじゃないか、と話し合いました。

リオ五輪閉会式 演出振付家・MIKIKOが椎名林檎らと話し合った日本人らしい「クールさ」とは
撮影/杉田裕一 [POLYVALENT]

 最近は“クールジャパン”なんて言われますが、そもそも「クールとは何か」という話にもなって。

アメリカ人の思う日本の「クール」って、日本茶を飲んだときのすっきりした喉越しのようなものなんだとか。そのすっきりした喉越しは、茶葉を摘んで、炒って、たくさんの工程を経ることで初めて完成する。それがとても「クール」なんですって。あるいは、出汁から取るお味噌汁みたいなもの。その裏の工程をこれ見よがしに見せるのではなく、昔からある「お茶はこうやってお出しするものですから」というしきたりに従って、おもてなしのためにお客様に出すもので。
 だから、どうなっているのかという裏の仕掛けはわからなくていいけど、手間暇をかけた喉越しのようなものがきちんと伝わる8分間にしたい、ということが、フラッグハンドオーバーセレモニーの裏にあった気持ちでした。忍者の忍法も、仕掛けは簡単なのに、それをわからなくする技術が重要だったりしますよね。日本人のパフォーマンスは、そういうことが秀でていると思うんです。

明日の第二十二回の質問は、「Q22.コンサートなど、舞台演出のおもしろさはどんなところにあると思いますか」です。
編集部おすすめ