日本は昔から海外に対する憧れがすごく強かった。だから一生懸命研究して、フォローしてきたら、いつのまにかきちんと超えられていた、という印象があります。それは、研究熱心なところや、細部にとことんこだわるところ、丁寧さなどが日本人は秀でているからだと思いますけど。
写真を拡大 Photo by Tokyo 2020 / Shugo Takemi日本人らしい演出といえば、リオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニー。日本人としてどんな演出にするべきか議論をしていたときに、椎名林檎さんから“江戸前”というテーマが上げられて。作品を作っている過程や、心の中はぐつぐつと燃えたぎっているんだけど、お披露目するときにはその苦労を見せずに、すっと、さりげなく発表する。“とっぽさ”とでも言いますか。丁寧に丁寧に作って、隅々までホコリを取って、でもその苦労は一切見せない。「何も難しいことはしてませんけど?」なんて涼しい顔をしている。もちろん一生懸命作るわけですが、その舞台裏は見せずに、難なくやってのけてしまうような。そういう、頑張っている感がバレてしまう方がダサいという感覚が “江戸前”なんじゃないか、と話し合いました。

最近は“クールジャパン”なんて言われますが、そもそも「クールとは何か」という話にもなって。
だから、どうなっているのかという裏の仕掛けはわからなくていいけど、手間暇をかけた喉越しのようなものがきちんと伝わる8分間にしたい、ということが、フラッグハンドオーバーセレモニーの裏にあった気持ちでした。忍者の忍法も、仕掛けは簡単なのに、それをわからなくする技術が重要だったりしますよね。日本人のパフォーマンスは、そういうことが秀でていると思うんです。明日の第二十二回の質問は、「Q22.コンサートなど、舞台演出のおもしろさはどんなところにあると思いますか」です。