まず驚かされるのが、ムーミンの多さ。同園ではムーミンキャラクターとライセンス契約を結んでおり、テーブルから照明、コップにいたるまで、園内のあらゆる所にあの見覚えのあるキャラクターが顔を出す。
同園の創設者、バーバラさんは「ムーミンは大使のようなもの」だと言う。フィンランド式の教育を、どんな子どもにも同じように受けてもらいたい、その橋渡しとなるのが、生き方のエッセンスが詰まっているムーミン物語。ムーミンをふまえ、多くの個性的なキャラクターから学べることが多いのだそう。園児達は、孤独を好むスナフキンから、ひとりの時間を持つことの重要さや自立心を感じ取ったりするそうだ。
●「問いかけ」「遊びながら」がキーワードフィンランド式教育では、子どもへの問いかけを軸としながら探究心を伸ばすことを重視している。ここムーミン幼稚園でも、毎日先生が子どもたちと会話を交わしながら、興味・関心を尊重しながら学ばせることを大切にしているという。
1日のスケジュール
09:00-09:30 登園・自由遊び
09:30-09:45 サークルタイム
09:45-10:00 スナックタイム・外遊びの準備
10:00-11:00 外遊び
11:00-11:30 毎月決められたテーマにあわせたプロジェクトタイム
11:30-12:15 ランチタイム,片付け、はみがき
12:15-12:30 読書の時間
12:30-13:30 お昼寝、オムツ替え/半日プログラム終了
13:30-14:00 アート系ワークショップ/終了
1日の大枠のスケジュールは以上の通り。
サークルタイムでは毎月先生がテーマを設定する。
その後のパークタイムでは、近くの公園などで自然の中から学びを得る。といっても日本の幼稚園のように画一的に同じことをやらせるのではなく、一人ひとりの個性を考え、その日の調子などもケアしながらフレキシブルに対応する。小雨くらいならカッパを着て出かけ、天気で変わる自然の変化を学ぶのだとか。


ムーミン幼稚園では、事前に保護者と先生が、ミーティングをし「どんな子どもに育てたいか」という目標を決めている。そしてそれを遊びの中で達成できるようにする、というアプローチが特徴的だ。例えば「カウント(数字を数える)できるように」という目標があれば、「1、2、3、4」とただ言わせて覚えさせるのではなく、トランポリンで遊ぶとき、階段を遊びながら上がっているときなどに「いま何回だっけ?」と問いかけをしながら自然に身につけさせていく。これは日本の幼稚園にはない風景だろう。
●バーバラさんの教育哲学「子どもは何でもできる」子どもの好奇心をいかし、先生が手を差し伸べつつ自分の力で学ばせる。根底にあるのは創設者バーバラさんの「子どもは何でもできる」という信念だ。その言葉は力強い。
「子どもたちは何でもできるんです。“Sisu”というフィンランド語で『あきらめない』という言葉がありますが、今はできないかもしれないけれど、もう1回、もう1回、と積み重ねていけば必ずできるようになる。そしてそれは男の子も女の子も同じです」(バーバラさん)
バーバラさんはNYで金融系の会社に勤めていた経歴を持つが、女性も将来社会に出て男性に負けない力を発揮できる、と語る。そんな同園では、生き方の知能指数“SQ”(Social Intelligence Quotient)を高めることも重要視している。
●どんな子どもたちが通っているか。実際に通うなら?現在ムーミン幼稚園に通う園児は*13人程度。フィンランド、オランダ、フランス、アメリカ、日本、スペイン、メキシコなど、さまざまなバックボーンを持つ子どもたちが通う。こう書くと「語学力が必要なのでは」と入園のハードルが高いように感じてしまうかもしれないが、先生は日本語も話せるため、英語が全くできない子どももウェルカムなんだそう。インターナショナルスクールにあるような条件(両親ともに英語のネイティブスピーカーでなければならない、海外の国籍でないとだめ)もない。「すべての子どもが質の高い教育を受ける権利を持っている」を理念として掲げているからだ。
また実際に通うにあたっては午前中は別の幼稚園に通い、午後からムーミン幼稚園に、など個々の家庭の事情にあわせて柔軟な通い方が選択できるそう。
フィンランドでは幼稚園と保育園の区別がない。
グローバル教育のエッセンスがたっぷりつまったムーミン幼稚園。教育理念に共感した方は選択肢に入れてみてはいかがだろうか。
*生徒数は6月現在の人数。空きがあれば、年間を通して入園可能