保険を検討するときのポイントは2つ。「誰のため」と「何のため」だ。
ライフネット生命会長・出口治明氏に聞く、保険の本質。政府のセーフティネットを補完する民間の保険
保険を選ぶときのポイントはたったの2つ。業界のパイオニア・出...の画像はこちら >>
 

 保険を検討するとき、明確にさせないといけない重要なポイントが2つあります。

 それは、「誰のために」そして「何のために」保険を買うのかということです。

 まず、「誰のために」については、自分のため、あるいは家族(パートナーや子ども)のためであることは言うまでもありません。原則このどちらかしかないので、いたってシンプルですよね。

 次に、「何のために」ですが、これには2種類あります。

 1つ目は、政府がセーフティネットとして提供する、社会保障を補完するためです。

 死亡リスクや働けなくなるリスク、病気になるリスク、長生きリスクなど、人生には、予測できないさまざまなリスクによって、大きな損失が生じる可能性があるのです。

 生きていれば得られたであろうお金、働いていれば得られたであろうお金、病気にならなければ払う必要のなかったお金、長生きすればするほど必要となるお金……。

 しかし、公的医療保険や公的年金保険などの社会保障だけでは、それらのすべてをカバーすることはできません。

 そうしたセーフティネットからこぼれてしまった損失を補完してくれるのが、民間の生命保険です。

 金融業界では、レバレッジという言葉がよく使われますが、レバレッジとは梃(てこ)のことです。

 梃を使うと、小さな力で大きな物を持ち上げることができるように、保険もまた、リスクに直面したときに、本人が払った保険料に対して金額を大幅に上乗せして支払ってくれるので、大きな保障を得ることができます。

 保険の本質は、このレバレッジにあると言ってもいいでしょうね。

 そして2つ目は、貯蓄のために保険を利用するというものです。

 これは積み立て型の保険を指しますが、たとえば学資保険などが、まさにそうですね。

 子どものための教育費を貯めて、殖やすことが目的であり、子どもの入学や進学に合わせて、祝い金や満期保険金が受け取れる仕組みになっています。

 ただし、積み立て型の保険全般に言えることですが、今やゼロ金利時代ということもあり、貯蓄タイプの商品は本来のメリットがほとんど期待できません。

 これは、「72のルール」を思い出せばすぐわかります。「72÷金利=元本が倍になる年数」です。現在の市場金利を挿入すれば、貯蓄のために保険を利用することがほとんど意味のないことが簡単にわかります。

 ゼロ金利時代にお金を殖やしたいのなら、投資信託などの変動商品がいいでしょうし、絶対に元本割れをしたくないのなら、基本的に保険料から付加保険料(保険会社の運営経費)が引かれる保険よりも、定期預金のほうが確実です。

 そう考えると、やはりさまざまなリスクに備えることこそが、250年前にロンドンで生まれたときから変わらない、生命保険本来の役割なんですよね。

明日の質問は「Q.26 これからの時代、特にオススメの保険はありますか?」です。
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