書店で本を手に取り、レジに並ぶ。オンラインでの購入なら、カートに入れる。読書の楽しみは、本を選ぶその瞬間から始まるといっていい。では、本好きたちは、世の中の多く書籍のなかからどのように選んでいるのか? 今回、本好き500人(男性316人、女性184人)を対象に「本を買うキッカケ」「どんな本を読みたいか」についてアンケートを行った。結果は下記の通り。
※「本好き」の定義は1年間に20冊以上本を読む人
Q.本を買うキッカケで一番多いのはなんですか?「好きな著者だから」215票/43%
「書店で見かけて」147票/29.4%
「TV・雑誌・ラジオで紹介されているから」36票/7.2%
「ネットニュース・SNSで知って」20票/4%
「知り合いに薦められて」7票/1.4%
最も多かったのは「好きな著者だから」という理由で、215票を集め、全体の43%を占めた。おそらく、この結果には多くの人が共感できるのではないだろうか。
逆に意外だったのは、「TV・雑誌・ラジオで紹介されているから」がわずか36票、全体の7.2%の支持しか集めなかったことだ。『王様のブランチ』(TBS系)、『めざましテレビ』(フジテレビ系)など、人気番組で取り上げられたことでベストセラーになる本は多い。大手書店にはテレビで取り上げられた本を平積みするコーナーを設けるところも少なくない。ところが、こと本好きに限れば、テレビで紹介された本を買う人は少数派のようだ。
同じような傾向は、次のアンケート結果にも見て取れる。
Q.どんな本を読みたいと思いますか?(複数回答可)※雑誌・コミック除く
「感動する」290票
「勉強になる」210票
「スッキリする」159票
「生活に役立つ(レシピ・貯金術等)」133票
「現実逃避できる」104票
「泣ける」51票
「売れている」43票
どんな本を読みたいか? という質問に対して「売れている」は最下位。よく書籍の広告で「〇〇部突破!」「〇〇書店ランキング1位!」といったコピーを目にするように、出版社側は「売れている」事実をセールスポイントとして読者の需要を喚起しようとするものだ。
だが、今回のアンケートでは、そういったやり方では少なくとも本好きの読書欲はかきたてられないことがわかった。
反対に「感動する」、つまり心を揺さぶられる本を読みたいという意見が290票を集めて最多。これは本好きならば誰もがうなずけるだろう。
実際、近年のベストセラー小説2作のオビには、いずれも読者の感情に訴えかける惹句があった。2015年に発売、ミリオンを達成した『火花』(文藝春秋)のキャッチコピーは「この物語は、人の心の中心を貫き通す」、2016年に発売、年間ベストセラー総合トップ10入り(日販)の『君の膵臓をたべたい』(双葉社)のキャッチコピーは「読後、きっとこのタイトルに涙する」。いまの時代、読者の心をつかむには数字ではなく、文字通り「心に訴える」ことが必要なのだろう。
一方、「勉強になる」「生活に役立つ」という回答も多かった。近年、マネー術、レシピ本、ビジネス書など実用的なジャンルの書籍は、セールス的にも盤石の地位を築いている。書店での取り扱いも大きい。
オリコンが発表した2017年の上半期本ランキング(総合)では、上位10位のなかに、『やせるおかず』のレシピ本(小学館)が2冊、『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)というマネー本が1冊ランクインしている。アドラー心理学『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の大ヒットも記憶に新しい。「どうすれば人は幸せに生きられるのか」というシンプルかつ普遍的な問いに、対話形式で迫っていく同書は、面白いうえに知識にもなり、胸に響くだけでなく実用性の要素も含まれていた。
本好きたちにとって、読書は単なる娯楽なのではなく、どれだけ自分の役に立つかも大切なのだろう。
次回は「本好きの人生を変えた本&無人島に持っていきたい本」を紹介したい。