あの東京大学ですら、世界大学ランキングでは39位止まり(2016-2017年度版のタイムズ・ハイアー・エデュケーションより)。ではその上位に食い込む、世界の名門大学は何が違うのか? その名門を名門たらしめる特徴――「傾向」と実際の入学までのルート――「対策」を、世界を見据える読者に提供。
第3回目は、世界大学ランキング16位(同)、宇多田ヒカルも通っていたコロンビア大学。【傾向編】ニューヨークにある名門大学

 コロンビア大学は、世界でもトップクラスの知名度を誇る私立の名門大学で、アイビーリーグ8大学の中の一つです。1754年に設立され、米国の高等教育機関の中で5番目に古く、ニューヨーク州の高等教育機関では最も古い大学です。他のアイビー校は、都市部ではなく郊外に置かれているのですが、コロンビア大学だけは都市部(ニューヨーク市のマンハッタン北部)に位置しているのが他のアイビー校と異なる点です。

宇多田ヒカルも通っていた、あのアメリカ名門大学の実力の画像はこちら >>
 イギリス国王の勅命で設立

 コロンビア大学は元々1754年に英国の国王、ジョージ2世の勅許によりKing's Collegeとして設立されました。国王の許可、勅命を得て設立されたのですが、1754年当時のアメリカはまだ正式に国としては樹立しておらず(アメリカの独立宣言採択は 1776年7月4日)、「国立大学」ではなく「私立大学」として開校することとなります(国王はアメリカではなく英国にいるため、また王家が運営に直接携わるものではなかったため、「王立大学」ともされなかった)。

 ちなみに、英国の国王により設立されたアメリカの大学は極めて少なく、有名校ではウィリアム・アンド・マリー大学(バージニア州、州立大学)があげられます。こちらはハーバード大学に次いでアメリカで2番目に古い学校で、英国の国王ウィリアム3世と女王メアリー2世により建てられました。

 このように、建設においてユニークな経緯を持つコロンビア大学ですが、もともと宗教色の強い大学でした。大学として信仰する宗教を英国国教会(Church of England)の教えに限定するかどうかが論点の一つとなっていましたが、大学の基本方針を決定する際、大学としては宗教の自由の原則を守るとの結論に至りました。

 当初は、植民地社会における将来のリーダーたちを育成することを目標としていましたが、医学を始め、様々な学問が学べる総合大学に少しずつ形を変えていきます。1754年、学生たった8名からのスタートでしたが、講義の数も生徒の数も増え続け、現在では3万人以上もの学生が学んでいます。

 今でこそUSニューズ&ワールド・レポートなどの大学ランキングの上位に安定して名前が挙げられるコロンビアですが、学校の存続が危ぶまれた時期もありました。

 アメリカ革命がはじまると、King's Collegeは閉校に追い込まれます。この沈黙の状態は8年も続きました。困難と思われた時期もありましたが、この苦難を乗り越え、1784年に再び開校することになるのですが、その際に大学名を King's College から、「アメリカ」のもう一つの呼称である「コロンビア」*大学に変更します。即ち「アメリカ」大学と名づけたようなものです。この名前は大学の愛国の精神を表したものといえるでしょう。

* アメリカ大陸を発見したとされるコロンブスの名前から派生し、「コロンビア」がアメリカ大陸の呼称として使われていました。アメリカ大陸を発見したコロンブスの名前は(本人の知るところなく)、名門大学の正式名称として使われるに至ったのです。

宇多田ヒカルも通っていた! 多彩な顔ぶれ

 コロンビア大学は多くの著名人を輩出しており、有名な政治家も多くいます。アメリカの第26第大統領Theodore Roosevelt、第32大統領Franklin Delano Roosevelt、そして第44第大統領Barack Obamaは、コロンビア大学の教育を受けています。ビジネスでも、コロンビアの卒業生は大きな成功をおさめています。世界に名を轟かせる投資家Warren Buffet、Walmart会長のS. Robston Walton、Morgan StanleyのJames P. Gormanなど他にも多くの財界人が卒業生として有名です。

 文学や音楽など芸術においても、著名人の名前をを挙げ始めればきりがありません。

 日本人の卒業生はどうでしょうか? 

 三菱マテリアル初代会長の故永野健、専修大学の創設者である故相馬永胤、第17代最高裁判所長官の竹崎博允など、各分野に著名人がいます。他に意外な所では、歌手の宇多田ヒカルがコロンビアに通っていたことも有名です(卒業はしておらず中退)。

 コロンビア大学は多方面の業界から高い評価を得ており、どの専攻の学生も「コロンビア大学のプログラムはすばらしい」と母校の教育の質を誇りに感じています。あらゆる分野で最高の教育を提供しているコロンビアにおいては、一般によく聞かれる「この大学で一番強い専攻科目は何か?」という問いに答えるのは難しいでしょう。「どれも素晴らしい」が回答となります。

 同校で最も(生徒からの)人気がある専攻は、工学や政治学、生物科学、生物医学、英語学、英文学、言語学などがあります。

第10代学長Frederick Barnard 氏の情熱

 コロンビア大学の姉妹校にはBarnard Collegeがあります。

 この大学はリベラルアーツの名門私立女子大学です。通常の提携校のような象徴的な関係ではなく、米国の高等教育機関の中でも非常に珍しい関係性を築いています。

 Barnard College の 校名は、Frederick Barnard 氏(コロンビア大学の第10代学長)から取られたものなのです。Barnard氏は、コロンビア大学が男子校であった当時、女性の入学も認めるべきとの強い信念を持ち、理事会に共学への転換を働きかけていました。

 しかし理事会は頑として首を縦に振りません。

 それに折れることなく20年間働きかけを行ったBarnard氏に押され、理事会はついに譲歩の姿勢を見せ始めます。コロンビア大学の入学審査を通った女性は、コロンビア大学では学べないものの、コロンビア大学に隣接した新設大学「Barnard College」で、コロンア大学と同等の教育を受けることが許されました。

 時は流れ、今では Barnardの学生はコロンビアの講義を、コロンビアの学生はBarnardの講義を受講することもできるようになっています。Barnardの卒業生は、コロンビア大学から学位を授かり、コロンビア大学の卒業式に参加することもできます。

 それぞれ独立した大学でありながら一心同体のように機能するコロンビアとBarnard、この関係性を築いた Barnard 氏は、耳が不自由であったと言われています。コミュニケーションにハンデがありながらも20年ものあいだ周りを説得し続け、変革をもたらした同氏の教育への信念には、凄まじいものがあったのでしょう。

様々なバックグランドを持つ生徒が在籍

 コロンビア大学に通う生徒はとても多様です。

 様々な民族、人種、経済的状況の学生たちが在籍し、2020年卒業予定クラスだけを見てみても、全米50州、世界69か国から学生が集まっています。また学生の16%が親が大学に行っていない学生で、16%が低所得層対象の奨学金を受けています。

 エリートスクールには名家の子供だけが行くもの、と思い込んでいる方も多いようですが、決してそんなことはありません。持つべき数値(学校の成績やテストスコア)を持ち、学校の傾向をしっかり分析した出願書類を揃えれば、誰にでも合格のチャンスはあります。

★下記問い合わせフォームから、質問を受けつけています★ メールアドレス ※
質問内容
(留学について何でも聞いてみよう) ※
編集部おすすめ