体幹を使うから歩き疲れず健康維持にも効果がある
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 日本ウオーキング協会専門講師の上野敏文さんが長年にわたって実践し、講座でも指導しているのが「ナンバ歩き」だ。これは古来の日本人の歩き方だといわれており、実に理にかなった歩き方だと、太鼓判を押す。

 ナンバの語源を「難儀な場所」とする説もあり、どんな困難な場所も乗り越えられる歩行術といえる。その昔、飛脚はこの歩き方により、1日で100㎞を移動したともいわれる。明治時代以降に西洋式の歩き方が定着して廃れてしまったが、欧米人に比べて身長が低く手足が短い日本人には、ナンバ歩きが適していると上野さんは考えている。

「現代人の歩き方と最も異なるのは、右足と右手、左足と左足同時に出すという点です。この歩き方だと、使う筋肉が全く違ってくるのです。通常歩行ではつま先で地面を蹴るため、ふくらはぎなどの“小さな筋肉”を使います。一方、ナンバ歩きはかかとで押し出すため、肩関節と股関節が連動して広い範囲の“体幹”、つまり“大きな筋肉”を動かして進みます。だから体幹が強くなるほどに、効率よくパワーを使うことができて、疲れにくく、長時間歩けるようになるのです」。 

 スポーツ界で注目されている体幹だが、一般人にとっても重要だ。体幹を使うほどに、腰周りの筋肉が鍛えられるので、腰痛や膝痛の予防になり、基礎代謝がアップして、太りにくく締まった体になっていくという。

毎日の通勤や買い物にもナンバ歩きを活用しよう
「ナンバ歩き」は日本古来の体幹トレーニングだった
歌川広重『東海道五拾三次 水口・名物干瓢』より

 とはいえ、左右同じ側の手足を同時に出す歩き方は、現実的ではない。そこで、現代風にアレンジしたのが上野流ナンバ歩きである。

それは「腕を振る」のではなく、「腕を胴の近くに添えて、ひねりながら上下に動かす」という方法だ(イラスト参照)。

「両手を軽く握り、親指を“いいね”の形に立てて、両脇に軽く添えます。足を踏み出す側の手は、ひねりながら少し上げて、反対側の手は、ひねりながら親指を下に押すイメージで動かしてみてください。大げさに動かす必要はなく、体に沿って軽くで構いません」。

 しばらく練習すれば、どんな人でもできるようになるという。この歩き方をマスターすれば、踏み出した足に重心がかかって、スッスッと、自然と体が前に進む感覚が分かってくる。

「ウォーキング時だけでなく、通勤や買い物、散歩の時など、いつでもやってみてください。この歩き方が身につけば、長い距離も疲れずに歩けるようになりますし、坂道や階段をラクに上れるようになりますよ。何よりも、スムーズに心地よく歩けるので、『自分はこんなに歩けるんだ!』と自信がつきます。気持ちもワクワクと弾んで、歩くこと自体が本当に楽しくなってくるはずです」。

『一個人』2017年10月号より構成〉

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