【前回:世界一の投資家・バフェットに学ぶ。
これまで見てきたようにバフェットの成功は「大好きなことをとびきり上手にやる」「原則に忠実に」といった生き方によってもたらされたわけですが、バフェットが単なる大金持ちではなく世界中の尊敬を集める大金持ちになることができたのはバフェットのお金に対する考え方、生き方が寄与しています。
バフェットが親から受け継いだのは「使う金は入る金よりも少なく」ですが、そこに「複利式の考え方」が加わることでバフェットはお金を大きく殖やすことができました。複利式の考え方は投資家の多くが行うものですがこういうものです。
たとえば、自分自身が散髪をするかどうかについてこう自問自答します。
「本当に私はこの散髪に30万ドルを費やしたいだろうか?」
もちろん実際に散髪に30万ドルもかかるわけではありません。しかし、わずか30ドルのお金であっても、そのお金を投資して年利10%で運用したとすれば、5年後、10年後にはかなりの大金になるというのが複利式の考え方です。
たいていの人にとって「消費」と「浪費」うち、浪費は節約の対象となっても消費は仕方がないものとなります。しかし、バフェットにとっては普段の何気ない消費でさえ「よくよく考えて使う」ものとなるのです。
1セント硬貨を拾い上げ…「10億ドルへの第一歩さ」若者が節約する10ドルはいずれ100ドル、1000ドルになるというのが節約に長けたお金持ちの考え方です。ある時、バフェットはエレベータの床に1セント硬貨が落ちているのを見つけ迷わず拾い上げています。乗り合わせた人たちは世界的富豪の行為に驚きましたが、バフェットはこう言いました。
「10億ドルへの第一歩さ」
こう考えるからこそバフェットはどんなにお金持ちになっても若い頃に買った家に住み続け、そして食事はコカ・コーラとハムサンドウィッチさえあればいいという質素な生活を当たり前のように送ることができるのです。
それにしてもバフェットはなぜこれほどまでにして支出を抑え、お金を殖やすのでしょうか。少なくとも稼いだ金額や溜め込んだ金額を誇る気持ちはありません。どれほどお金を持っているかは成功の尺度にはならないというのがバフェットの考え方です。
では、何のためにお金を殖やすのでしょうか。そこには「お金は社会に返さなければならない預かり証」という考え方があります。バフェットにとってお金は「自分のために」ではなく、「社会のために」使うものであり、社会のために何も生み出さない消費や浪費は意味のないものだったのです。
ハサウェイ株の大部分を財団に寄付だからこそバフェットは築き上げた富を自らの豪華な生活に浪費することもなければ、子どもたちにまるごと継承することにも関心がありませんでした。資産家の家に生まれたという理由だけで子どもたちが大金持ちになるのは「アメリカ的ではありません」し、お金を持つ者には持たざる者のことを考える義務があると考えていました。こう話しています。
「幸運な1%として生まれた人間には、残りの99%の人間のことを考える義務があります」
そう考えたバフェットは2006年、自分が持つハサウェイ株の大部分を、ビル・ゲイツが運営するビル&メリンダ・ゲイツ財団に寄付する決断を行っています。それ以前にも自分の財団を持ち、慈善事業話行っていましたが、ビル・ゲイツの財団は規模も大きく、自分が行うよりも上手に、最後の1ドルまで世界のために使ってくれると信じたからこそ自分の資産を託すという決断を行っています。
お金は稼ぐのも難しいのですが、どう使うかはさらに難しいとも言われています。
バフェットがやっている「好きなことを一生懸命にやる」「良き習慣を身に付け、原理原則やルールに忠実に生きる」「お金を無駄にしない」は決して突飛なことではありません。誰しもが知ることですが、実はこうした当たり前のことを当たり前に実行するというのはとても難しいことです。大切なのは「当り前のことを当たり前にとことんやり続けること」です。その答えがバフェットの成功なのです。
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