門倉貴史著のベスト新書『不倫経済学』より、「ピラニア女」の実態について紹介する。
人生のターニングポイントに差し掛かった裕福な中高年男性は、若い女性による「ハニー・トラップ(蜜のように甘い罠)」にひっかかって、汗水垂らして蓄えた財産がすっからかんにならないよう、日頃から十分な警戒をしておく必要がある。
近年、紳士の国イギリスでは「ピラニア女」が猛威を振るっているという。いかにも恐ろしいネーミングであるが、「ピラニア女」というのは、自らのダイナマイト・バディーと巧みな話術をフル活用して、ターゲットにした男性をベッドに誘い、避妊をせずに獣のような性交渉に臨む。あわよくば、そのまま妊娠して養育費を名目に巨額のお金をむしりとる、一度噛みついたら絶対に離れないピラニアのような女性のことを指す。
「ピラニア女」の餌食になりやすいのは、既婚・未婚を問わず、お金持ちの中高年男性。容姿もまったく関係なし。薄毛であろうが、太っていようが、低身長だろうが、とにかくお金を持っていればどんな男でもいいのだ。
哀れにも「ピラニア女」の罠にはまってしまった中高年男性は養育費や住居代、車代、保育園代から大学の授業料までの教育費などを払わされ続け、子供が成人するまでの18年間でざっと2億円近くのお金が吹き飛ぶことになるという。恐ろしい「ピラニア女」に目をつけられそうな気の弱い中高年の紳士は、常にお守り代わりにコンドームを持ち歩いていたほうがいいかもしれない。ただし、慎重になりすぎてコンドームを2枚重ねにするのは逆に危険なので、やめたほうがいい。コンドームは摩擦に弱いという特徴があり、2枚重ねるとゴム同士が強く擦れ合い、破損しやすくなるのだ。
さて、ここ日本でも婚活をする中高年男性が「出会い系サイト」や「婚活サイト」などで詐欺の被害に遭うケースが増えている。
「罠にはまる快感も悪くないわよ」中高年男性が結婚詐欺などの被害に遭う場合、犯人の女性はなぜか不美人であったり、ポッチャリさんであることが多い。
09年9月に結婚詐欺の容疑で逮捕された木嶋佳苗は、その代表例と言えるだろう。逮捕後、首都圏で相次いだ婚活男性の不審死は、木嶋による殺人であったことが判明し、2012年に埼玉地方裁判所は死刑判決を言い渡した。
木嶋は、働かずに贅沢三昧の暮らしを維持するために、「婚活サイト」などで知り合った被害者から多額のお金をむしり取っていた。木嶋佳苗死刑囚に金を貢いだ男性は約30人にも及ぶという。
そして、08年から09年にかけて、木嶋が殺人や詐欺、窃盗事件で獲得したお金の合計額は判明している分だけでも1億745万円に達する。
ポッチャリの女性になぜ多くの中高年男性が心を奪われ、多額のお金を貢いでしまうのか疑問視する声も上がっているが、美人ではないからこそ結婚詐欺が成功しているとも考えられる。
必死になって結婚相手を探している中高年男性に美人が近づいてきて「結婚するから金を出してくれ」と切り出してくれば、警戒心を強めて、「何か裏があるに違いない」と疑うだろう。しかし、地味で平凡な女性が同じことを頼んできた場合、妙にリアリティがあってその話を信じてしまいがちだ。
また、木嶋佳苗は「私は名器の持ち主なんです」という衝撃の告白をしているが、こうした「名器」発言も男を惹きつける要素になる。自信満々に自分の長所を宣言するので、多くの男性は「容姿からは想像もつかないが、これは本当に名器なのかもしれない。一度試してみたい」というセックス願望を強めることになる。
木嶋佳苗を「東の毒婦」とするのであれば、「西の毒婦」はやはり上田美由紀ということになるだろう。上田美由紀も木嶋佳苗と同様、09年11月に多くの中高年男性の不審死事件で逮捕され、2012年に鳥取地裁で死刑判決を言い渡された。
上田美由紀が妻子持ちの男性を同居に引きずり込んだ手口は、先ほど紹介した「ピラニア女」そのものだ。上田は、自分が働く鳥取県のスナックの常連客と恋愛関係になったのだが、その客とは「避妊薬を飲んでいるから大丈夫」といって避妊なしでセックスを行い、後になって「避妊薬を飲み忘れて妊娠してしまった、責任をとってほしい」と迫り、同居に持ち込んでいくというもの。
検挙数や被害者の平均申告率、1件あたりの被害金額などをもとに行った筆者の推計によると、結婚詐欺などを含む「出会い系サイト」での詐欺市場の規模は、00年から2015年までの累計で95.6億円にも上る。
晩婚化の進展に伴って、中高年男性の「婚活」はますます活発になるとみられ、それに伴って、今後、女性による結婚詐欺事件がさらに増加してくると予想される。
〈『不倫経済学』(門倉貴史)より抜粋〉