ドライバーを除いては、ほとんどの人が意識をすることがないであろう「道路標識」。だが日本全国には、知られざる奇妙珍妙な道路標識があった! マニアでなくともニヤニヤせずにはいられない、奥深い世界をご堪能あれ。
標識コンプの壁

 筆者は全種類の道路標識を撮影しようという無駄な意気込みに燃えて、ぼちぼちとコレクションを進めている最中である。だが「全種類」となった場合、問題となるのが国道の標識である。国道は現在507号まであるが、どれか一枚をその代表としてゲットしてよしとするか、それとも全路線の標識を撮影すべきか。筆者はもともと国道マニアと称してあちこち撮影してきた身なので、ほとんどの路線の写真をゲット済みではあるが、コンプリートとなるとまた厳しい。まあ個人の趣味であるから、基準をどうするかは勝手に決めればいいわけではあるが、これは悩みどころである。

 それでもやるのがマニアだ、との声もあろうが、これを入れてしまうと都道府県道の標識もフルコンプするのか、という話になる。何しろ都道府県道は全国に1万本以上存在するから、この完全コレクションはさすがに人間業ではない。というわけで、まあ国道だけでもコンプリートを目指すか、と思っている次第である。

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写真を拡大 県道の標識

 では国道標識は何種類あるのか。現在、国道は507号まで指定を受けているが、実は欠番があり、59~100号、109~111号、214~216号が存在しない。このへんは歴史的経緯によるものなので、興味のある方は拙著『ふしぎな国道』(講談社現代新書)をご覧いただきたい。

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 現在最大番号の国道507号

 

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幻の道路標識を求めて滋賀県・琵琶湖へ向かった
】  レアな国道標識

 ということで、国道は現在459路線あるのだが、このうちレア標識といえるものはどれくらいあるだろうか。実は、全ての路線に国道標識があるわけではない。たとえば圏央道や東海環状自動車道などは、東名高速などと同様の高速道路に見えるけれど、法律上は一般国道という区分に入っており、それぞれ国道468号、475号という番号が振られている。だが、これら高速風の国道には、どこを探してもおにぎり型の国道標識は設置されていない。

 では、いわゆる「したみち」の国道にはすべて国道標識があるのかというと、実は一枚もない路線が存在する。筆者の知る限りでは、国道130号(東京都港区)、131号(東京都大田区)、172号(大阪府大阪市)には、正規の国道標識が一枚も設置されていない。

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 大阪港へ向かう国道172号には、正規の標識は一枚もない

 

 これらは、いずれも「主要な港及び空港と、幹線国道を結ぶ道は国道とする」という規定によってできた道で、「港国道」と通称される。港国道は全国に15路線あり、いずれも数キロ程度の長さに過ぎない。前述の国道130号など、全長わずか480メートルほどしかないミニ国道だ。

 だが、日本最短の国道174号(兵庫県神戸市)は、全長187メートルしかないにもかかわらず、きちんと国道標識が2枚設置されている。京都府舞鶴市を走る国道177号、山口県岩国市の国道189号、福岡県北九州市の国道198号なども1キロメートルに満たない短距離路線で、いずれも設置数は2~3枚だ。このあたりが国道標識のレア物件ということになるだろう。

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 日本最短の国道174号

 

 港国道以外にレア標識はないのかというと、国道474号というラスボス的存在がいる。この道は、長野県飯田市から静岡県浜松市を結ぶ予定なのだが、現在のところごく一部しか開通していない。全部開通する日が来るのかどうか甚だ怪しい気もするが、まあそれはおいておく。

 その474号の一部である「飯喬道路」と呼ばれる区間に、問題の国道標識が設置されている( ※Wikipediaリンク に写真がある)。

 しかしこれがかなりの山奥にあり、太平洋側からだと120キロほども山道を駆け上がらねばならない。国道標識コレクターの前に立ちはだかる、難攻不落の要塞の如き標識なのである。

【まだある! 奇妙珍妙なレア標識 連載第7回:観光地に続々登場! 外国人増加でできた期間限定のレア標識 】国道標識バリアント

 国道標識には変種も存在する。下に示すのは、交差点に設置されるタイプの標識で、その形状から「そとば」と通称される。単独の国道標識には、番号のほかに「国道」「ROUTE」の文字が入っているが、そとばには番号が入っているのみである。また、路線名や愛称が書き込んであるものと、無地のものとがある。

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 国道130号にはそとば標識が設置されている

「そとば」は別にレア物ではないが、下に示すような四角いプレート内に国道標識をプリントしたタイプは、間違いなくレア品だ。他の標識では時折こうした変種が見られるが、国道標識では宮城県仙台市と、静岡県静岡市に存在しているのみだ。

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 仙台のプレート内おにぎり

 

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 静岡のプレート内おにぎり

 もうひとつ、発光する国道標識というものもある。中に蛍光灯が仕込まれていて、夜になると点灯するタイプだ。東京在住の方にはおなじみかもしれないが、実は都心部にしか存在しない珍品だ。

おにぎり型から発光タイプまで。「国道」のレア標識
写真を拡大 秋葉原駅付近の発光標識

 

 だがこちらのタイプはもはや製造されていないらしく、どんどん通常の標識に入れ替えられている。最近では反射材の進歩によって、通常の標識でも夜間視認性のよいものが普及しているから、わざわざ蛍光灯などで光らせる必要はなくなっているのだろう。標識の道は一期一会を何度も書いてきたが、これなどもあと数年もすれば消滅するかもしれない。忘れずにゲットしておきたい一品である。

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