まずは早速、アンケートの結果から見てみよう。
市販されたら購入したい「ひみつ道具」のランキングはこちら。
2位 タイムマシン …80人
3位 もしもボックス …24人
4位 タケコプター …23人
5位 スモールライト …9人
【6位以下】四次元ポケット、暗記パン、タイムふろしき、ほんやくこんにゃく、フエール銀行、など
なんとトリプルスコア以上の差をつけ、どこでもドアの圧勝である(ちなみに2017年に株式会社マイナビが大学生を対象に調査した同様のアンケートでも、どこでもドアはダブルスコアで1位になっている)。「通勤」や「旅行」といった身近な移動手段の代替として、昔から根強い人気ではあるが、「いつでも好きな場所に一瞬で行ける」ことにみんなこれほど希望を見出しているとは。平均の購入希望価格は、667万5047円。最高額は1億円(上限なし回答の人を除く)。ちょっといい自家用車を買う感覚か。
続いて2位はタイムマシン。子供の頃は「未来」に行きたかった少年少女も、今や「あの頃に帰りたい」「少しでも若返りたい」と行き先変更のご様子。さて希望のお値段はどこでもドアから一段階上がりまして、平均919万1840円。
3位がもしもボックス。世界を丸ごと改変できてしまうという性質から、ドラえもんファンの間では「もしもボックス最強説」が唱えられるほど。さてそんな最強のひみつ道具をいくらで買うかというと、平均価格帯は2,304万2000円で、最高額は8億円。これを安いととるか、高いととるか…。
「全財産投げ打つ覚悟!」「どれだけ借金してもいい!」という熱狂的意見もある一方で、もし市販されて一般流通したら…と結構リアルに考える人が多かったようだ。「ねえ、○○さん家は新しいどこでもドア買ったらしいわよ。そろそろうちも旧式から買い換えましょうよ」「でもなあ、去年タイムマシン新調したばっかりだしなあ」「最近、たまに行き先間違えるのよ。そろそろ買い換えどきじゃない?」…などという会話が家庭内で当たり前のように交わされる未来。想像すると、ちょっと楽しいかも。
■実は意外に現実になっている「ひみつ道具」たち

さて、2040年までにドラえもんの「ひみつ道具」はどこまで現実になるのか? そして2040年以降、少なくとも僕らが生きている間に「どこでもドア」「タイムマシン」「もしもボックス」は開発されるのかーー?
まず、2040年までの現実化という点で有名なのが、富士ゼロックスが中心となり進めている『四次元ポケットプロジェクト』。さまざまな企業が持つ技術を結集する形で、ドラえもんのひみつ道具を本当に作ろうというプロジェクト。これまでに、コンピューターが一緒に将棋を指してくれる『セルフ将棋』、遠くの人声や音を届けることができる『望遠メガフォン』、部屋全体に風景の立体映像を映し出せる『室内旅行機』の3つを現実化。2015年を最後に新しいひみつ道具の更新は止まっているが、実は水面下で開発中、という企業はきっと少なくないだろう。
また、ひと口にドラえもんのひみつ道具といっても確認されるだけで軽く2,000を超える数があり(「ドラえもん学」として学術的研究で知られる富山大学名誉教授の横山泰行氏をはじめ、諸説ある)、すでに実現し、市販化されているものは結構多い。例えば、「うそ発見器」などは簡易的なものであればバラエティグッズとしても販売されているし、「降雪機」は冬季オリンピックなどでも使われているなど、この辺りは2018年時点でさほど「ひみつ道具」感は感じない。そして、インターネットとVR(バーチャルリアリティ)が、私たちが日常で使うガジェットをことごとく「ひみつ道具」化している現状がある。有名なところでいくと、「宇宙完全大百科」はスマホのGoogle検索で世界中のありとあらゆる情報を習得できるし、絵本の中に入れる「絵本入り込みぐつ」はVRでゲームを楽しんでいるのと同義だ。この10年でのこれらの普及ぶりを考えると、案外驚くべきスピードでドラえもんの世界は、かなり近いところまでやってくるかもしれない。
しかし、あくまで「近いところまで」であり、「完全」ではない。それは次の議題、「果たして生きている間に購入したい道具トップ3は現実になるのか」というところで、大きな理論上の壁にぶち当たるからだ。
■3つの中で、最も実現する可能性があるのは?

2017年3月に公開された『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の公開を記念し、バンダイナムコエンターテインメントが制作した『ドラえもんVR「どこでもドア」』は、VRゴーグルと体感マシンで「どこでもドアの世界観を体感できる!」と大きな話題となった(のび太の部屋から映画の舞台である南極へ行くことができ、行程の前後にはドラえもんも登場した)。
順に追ってみよう。まずはどこでもドア。ここでヒントになるのが、2015年にアメリカの国立標準技術研究所(NIST)が発表した、光ファイバーを用いた100km先への「量子テレポーテーション」の成功、というニュースだ。当時、「この理論を使えば、どこでもドアが実現するのでは?」と一部で話題にもなった。しかし、理論の詳細はここでは省くが、簡単にいうとこれは「物体を一旦して量子化してテレボーテーションする」技術のため、一旦私たちは量子レベルまで破壊、分解され、移動先に転送された結果、再構築される必要がある。そうなったとき、再構築された私たちは破壊される前の私たちと物質としては同じでも、人間としてはどうなのか?という問題がおき、これはもう哲学レベルの話にもなってくる。結論から言うと「生身の人間がそのまま瞬間移動する」というのは、現在発表されている技術レベルでは限りなく難しいようだ。
続いて、タイムマシン。こちらも長きにわたり「宇宙人いる、いない」と同じように延々議論されているテーマなのであるが、ここに興味深い記事がある。雑誌『AERA』2016年1月11日号によると、宇宙物理学の権威である佐藤勝彦東京大学名誉教授の発言として「未来に行くのは簡単。光速に近いスピードで動く乗り物さえ開発すればいいのですから。
最後に、最も難しいであろう、もしもボックス。物理学においては並行宇宙の存在は考えられており、パラレルワールドとして現実とは違う世界はありえない話ではないが、今ある世界をまるっきり変えてしまう、となると理論的に不可能だろう。ただ、「誰かの一言でその瞬間、世界が激変する」という点だけを考えると、情報化社会においては全くありえない話ではない。その意味ではもしかすると、どこでもドアやタイムマシンよりも簡単に実現してしまうかもしれず…これまたちょっとホラーな話でもある。
いずれにせよ、子どもの頃夢中になったドラえもんの「ひみつ道具」は、私たちの当時の想像とは違う形で、少しずつ現実のものとなっている。スマホやVRが出てきたときようなブレイクスルーがいつまた起こるのか。その日を楽しみにして待ちたい。