――映画やドラマに登場するキャラクターというのは、脚本家や監督をはじめとしたスタッフと、そして役者の力が合わさって生まれるものだと思います。古美門研介はものすごく破天荒なキャラクターでしたが、古沢さんが脚本を書かれた時点では、あのキャラクターはイメージできていたのでしょうか。
僕のイメージとしては、もうちょっとクールなキャラクターでしたね。ドラマの制作にあたっては、スタッフやキャストが集まる顔合わせがあるんですが、『リーガル・ハイ』の顔合わせでは、その流れで1話の何シーンかを軽く稽古してみたんです。それで何度かセリフを合わせていくなかで、堺雅人さんの演じるキャラクターがどんどんエスカレートしていったんですよ(笑)。
――その顔合わせの稽古のなかで、僕たちがドラマで見た古美門研介が生まれたんですね。
あのキャラクターは堺さんが作り上げた部分がすごく大きいと思います。僕としても、そういうエスカレートした強烈な演技を見せられちゃうと、前にイメージしていたものでは物足りなく感じてしまう。それで最終的に、堺さんの演技したようなキャラクターになりました。
――顔合わせでその演技を見たのは、脚本を書き終えた後だったんですか?
書いている途中でしたが、残りは終盤のほうだけでしたね。
――脚本の執筆中にそういう強烈な演技を見せられると、その演技に影響されて脚本も変わっていく……ということがあるのではないでしょうか。
ある程度ありますけど、それがあり過ぎてもよくないなって思って。脚本を書くときは、僕は自分が最初に思い描いたキャラクターを大事にするべきだと思っている。それを受け取って、どう表現しようか考えるのが俳優さんの仕事だと思うんです。だから僕が俳優さんを意識して書くことは、俳優さんの演技の領域にまで踏み込むことになるし、それは良くないんじゃないか……と最近は思っています。
――自分が全力で作ったキャラクターに対して、役者さんがどんなな演技を実際見せてくるのかは、毎回楽しみなのではないでしょうか。
それは楽しみですね。最終的にはどのキャラクターも、すべて僕が思い描いた通りにはならないですから。だから実際の俳優さんの演技を見たときには驚くことは多いですし、『リーガル・ハイ』の古美門以外にもそういう経験はたくさんあります。
〈明日の質問は……Q6 .「巧みに伏線を張り巡らせたドラマはどうやって作っているのでしょうか?」です。〉