国勢調査によれば、平成初期の1990年で、生涯未婚率(50歳時点における未婚者の割合)は男性5.6%、女性4.3%だ(図1‐1)。
では、25年後の2015年はどうだろうか。グラフから、未婚率は一貫して上昇しつづけ、男性23.4%、女性14.1%となった。つまり、男性のうちおよそ4人に1人、女性のうち7人に1人が、生涯一度も結婚しなくなったのである。このように、日本は平成を通して未婚化が進み、「皆婚」社会から「未婚」または「非婚」社会へと大きく変化した。もし「結婚したいけどできない」としたら、4人に1人は決して軽くない数字だ。

それでは、なぜこのような転換が起こったのだろうか。出生動向基本調査によれば、戦前は見合い結婚が結婚の中心だったのが、1970年ごろに恋愛結婚が上回った(図1-2)。その後も増えつづけ、2015年には87.7%と9割近くを占める。ただし、すでに平成初期の1990年に恋愛結婚が8割以上だったので、恋愛結婚化だけが未婚化の原因とは考えにくい。
すると、人びとの「恋愛の仕方」に変化があったため未婚化が進展した、というストーリーが想像できる。そこで、私は2015年に全国調査を実施した(2015年社会階層とライフコース全国調査、インターネットを用いた調査)。
中学卒業から最初の結婚(初婚)まで(または未婚者は現在まで)、恋人数、デートした人数、キスをした人数、性関係をもった人数を調べた。すると、男性は概ね40代か50代がピークとなり、30代では減っていた。一方、女性では概ね若い世代ほど、どの人数も増えていた。

とくに、「恋人が1人でもいたことのある人の割合」を求めてみた(図1-3)。恋愛結婚が主流の社会では、恋人が1度もできなければ、結婚という競争にエントリーすることすらできないのである。グラフから、男性は50代がピークで、40代、30代と若い世代になるにつれ、恋人がいたことのない人が増えている。女性はどうか。対照的に、若い世代ほど恋人がいることが分かるだろう。
このように、平成を通して女性は恋愛に積極的になった、男性がその動きに応えていない。恋愛も結婚も、(通常は)男女の間で行われるため、このアンバランスさが未婚化を引き起こしてきたといえそうだ。
ただし、すべての男性が草食的になったり、結婚しなくなったりしたわけではない。むしろ、恋人ができ結婚するグループと、恋人ができず結婚もできないグループに、二極化しているのかもしれない。私の研究でも、中学時代に恋人がいた人ほどその後恋人が多く、そして結婚しやすいことが、統計的に分かっている。いわば、早めに恋愛という列車に乗った人は、結婚という駅まで辿りつくが、乗り遅れると「結婚しない」という駅に向かってしまうといえる。
平成を通して、日本社会はますます豊かになり、多様なライフスタイルが可能となった。その影で、「恋愛したいのにできない」「結婚したいのにできない」人が増えたのなら、かえってライフタイルにおける格差が拡がったのかもしれない 若い世代にインタビュー調査すると、「恋愛はたまにする贅沢」と言いながら、「結婚はぜったいにしたい」という人が多い。平成末期の現在、実はこれが簡単でないことを、データは示している。
〈雑誌『一個人』2018年5月号より構成〉