みなさんが友達にメッセージアプリでメッセージを送る時、その文章は「絵」と「文字」が交ざり合っていませんか? このような「絵と文字を組み合わせる、言葉と絵で遊ぶという発想」は、実はデジタル時代よりずっと以前にもあったのです。
日本が豊かな絵文字文化を生み出せた理由の一つとしてもこの「絵と文字で遊ぶ文化」があってのことだとよく言われています。
●「かまわぬ」こうした発想は、実際に江戸時代の判じ物などに表れています。図1の写真を見てみましょう。これは、鎌の絵に輪の絵、そして「ぬ」という文字からなっている有名な判じ物です。読めるでしょうか? 鎌(かま)+◯(わ)+「ぬ」で「かまわぬ」ですね。江戸時代、町奴の間で流行した衣服の模様から来ている判じ物で、「お構いなし」「構うものか」を表したしゃれだとされています。
この「かまわぬ」は手拭のブランド名として親しまれてきました。外国人の観光客の間にも人気なお土産品です。
写真を拡大 図1 手拭のブランド名に残っている「かまわぬ」の判じ物 出典:筆者の友人が撮影●「あさくさ」次の判じ絵は、「江戸名所」というシリーズからですが、始めて見た時になかなか印象的でした。この記事の後半には西洋にも判じ絵があったという話をしますが、おならをネタにしたものはなかなかないでしょう。

判じ物の他に、絵暦(えごよみ)という絵のみからなっている暦も江戸時代から伝わっています。絵暦は、古くは「めくら暦」と呼ばれており、文字が読めない人向きに作られていたとされています。

この暦には、十二支や農具が絵で表現されていますが、現代の絵文字に使われているキャラクターも出ています。どれなのか分かりますか? はい、左下にある鬼の絵です。

少しズームアップしますとこんな感じです。この暦では「節分」を表すのに用いられていますが、現代の絵文字「鬼」にそっくりですね。250年近くのタイムギャップがなかったかのようです。

このように見ると、確かに日本には古くから絵文字の文化があったと納得できますが、西洋にも、実は判じ物のような遊びが存在していました。「レブス」と呼ばれることば遊びですが、絵や単語の発音などで解かせるパズルのようなものです。
古いものは、15世紀まで遡れて、日本の絵暦のように、絵だけのものがあれば、絵と文字を組み合わせたものも少なくありません。特に有名なのは、1582年にフランスで刊行されたことば遊び辞典のような本です。

現代の絵文字でもよく使われるハートマークがすでに見られますね。
ちなみに、「SwiftKey Emoji Report2015」という世界各国におけるEmojiの使われ方の調査によると、フランスで最もよく使われる絵文字はハートだそうです。他の国のほとんどは、トップ絵文字が笑顔なのに、フランスだけは平均と比べて4倍もハートの絵文字が使われていると、フランスらしいですね❤️
●「判じ物」
筆者の母国ロシアにも、1881年~1918年『判じ物』という雑誌が刊行されていました。なんと表紙の雑誌タイトルからして判じ絵になっています。ドレミのレ(re)+ キリル文字のБ (英語のBと同じ) + ひげ (us) = rebus「判じ物」という意味になります。

このように、判じ物の文化は西洋にも古くから存在し、絵と文字を組み合わせる、絵と文字で遊ぶことは、東西共通の発想だと言えます。