■優勝候補の筆頭、伊藤美誠

 1月14日から20日まで開催中の全日本卓球選手権。女子シングルス展望の後半は、19日(土曜)の準々決勝から始めよう。

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 この日は卓球台が2台になり、ベスト8がぶつかる。午後にはダブルスの準決勝と決勝も行われる。

伊藤美誠、平野美宇に挑むは、〝ミキハウス3人娘〟全日本卓球、...の画像はこちら >>
昨年の全日本で三冠優勝した伊藤美誠。変幻自在のプレーで魅せる

 昨年の全日本でシングルス、女子ダブルス、混合ダブルスの三冠を制覇した18歳の伊藤美誠は、今大会も優勝候補の筆頭。昨年のワールドツアーで中国トップ選手を立て続けに撃破して「大魔王」のニックネームを付けられたことも有名だろう。異質ラバーから繰り出す、妖術師のような変幻自在のみまちゃんワールドは、誰も真似できないオンリーワンの卓球だ。

 特にスウェーデンオープンで猛威を奮った「クロスのバックドライヴ→ストレートのミート打ち→フィニッシュのフォアスマッシュ!」という3連コンボは無敵だった。

 

 準々決勝の相手は橋本帆乃香か、安藤みなみか。これが微妙なところ。

 カットマン相手に鬼の強さを誇る伊藤美誠は、橋本帆乃香と相性が良く、危なげなく勝つ試合が多い。しかし、異質ラバーで自分と似たクセ者の安藤みなみは苦手で、一昨年の全日本でも敗れた相手だ。今の伊藤が負ける伏兵がいるとしたら安藤だけだろうという、その天敵と同じブロックに入った。

 安藤みなみは専修大学4年生の学生チャンピオン。みまパンチと同じミート打ちの得意な、変則卓球の使い手である。伊藤美誠がここを突破すれば、次の準決勝は石川佳純と早田ひなと芝田沙季のブロックを勝ち上がった選手が相手になる。

■成長株の21歳、芝田沙季
伊藤美誠、平野美宇に挑むは、〝ミキハウス3人娘〟全日本卓球、後半の見どころ
世界ランク急上昇の芝田沙季。18年は国際試合チャレンジシリーズの4大会に優勝した

 芝田沙季にも注目したい。世界ランク15位まで上昇してきた21歳。知名度はまだ高くないが、18年のスペインオープンなど、ワールドツアーに準じる4大会で優勝。当時世界ランク2位の朱雨玲(中国)にも黒星をつけた右利きの成長株だ。小柄ながらも力強いフォアハンドを振り抜く。
 昨年の全日本では平野美宇とフルゲームの激戦を繰り広げ、あと一歩まで追い詰めながら敗戦。しかし、その後のワールドツアーでは韓国オープンとチェコオープンで、平野美宇に2連勝している。

 ワールドツアーの成績上位者だけが出場できる昨年12月のグランドファイナル、芝田沙季と世界女王・丁寧の一戦は印象に残った。


 丁寧は、必要のない相手にはしゃがみこみサーヴを使わない。この技を使うのは自分が認めた相手だけだ。芝田との試合では序盤、しゃがみこみサーヴを使っていなかったが、芝田にたびたびノータッチで抜かれると一変。途中から、この必殺サーヴを連発し始めた。世界女王が芝田を認め、本気になった証である。試合は丁寧が勝利したが、芝田も1セットを取り、進歩を見せつけた。
 今年の全日本。順調に勝ち上がれば、芝田沙季は準々決勝で石川佳純-早田ひなの勝者とあたる。これも楽しみなカードだ。

■3年連続で決勝に進出している平野美宇。そして〝ミキハウス3人娘〟
伊藤美誠、平野美宇に挑むは、〝ミキハウス3人娘〟全日本卓球、後半の見どころ
平野美宇の高速卓球、なかでも注目はバックドライヴのクロスファイヤー

 平野美宇は3年連続で決勝に進出し、17年には石川佳純を負かして全日本の最年少王者になった。今年はどちらかといえば恵まれたドローを引き、ライバルの伊藤美誠や早田ひな、石川佳純とは反対側の山だ。

 天然高速プリンセスの異名を持ち、海外ではハリケーンのニックネームも付いた18歳。ラリーをさせたら世界トップクラスの速さで、教科書のような両ハンドを相手コートに叩き込む。なかでも対角線をえぐる超高速バックドライヴのクロスファイヤーは、その場の時間を止める。

 順当なら平野美宇が準々決勝であたるのは、日本女子ナンバーワン・カットマンの佐藤瞳だろう。

 佐藤瞳は世界ランク12位の21歳で、全日本は17年がベスト4、18年がベスト8。抜群の守備範囲の広さを持ち、好調時はダンスを踊っているかのようなリズミカルなフットワークで、あっちの球も、こっちの球も拾いまくる。

 芝田沙季と同じミキハウスの所属で年齢も同じ。ミキハウスの選手は独自路線を貫き、Tリーグにも参戦していないため、実力の割にマスコミ露出が少なく、過小評価されがちな傾向がある。

伊藤美誠、平野美宇に挑むは、〝ミキハウス3人娘〟全日本卓球、後半の見どころ
佐藤瞳(左)と橋本帆乃香(右)。ダブルスでもペアを組むカットマンの2人


 佐藤瞳、芝田沙季、そして佐藤と同じカットマンでダブルスのパートナーでもある橋本帆乃香の〝ミキハウス3人娘〟が、波乱を巻き起こすか。これが19日の準々決勝の見どころになる。

 20日の日曜日、卓球台が1台になり、全日本卓球は最終日を迎える。

女子シングルスは午前中に準決勝、15時から決勝だ。

■ランキングどおりの結果となれば…

 もし世界ランクの高い選手がすべて勝ち上がっていくとすると、準決勝は伊藤美誠vs石川佳純、平野美宇vs加藤美優の組み合わせになる。あくまでも「もし」だ。

 伊藤美誠vs石川佳純は昨年の準決勝でもぶつかり、4-2で伊藤の勝利。ワールドツアーでは17年が1勝1敗、18年も1勝1敗。ほぼ互角の成績だ。東京五輪の代表争いで先頭を走るふたりの決戦が、今年も実現するか。伊藤美誠vs早田ひなの、みまひな対決の可能性もある。

 

 平野美宇vs加藤美優なら、これは幼い頃から何度も対戦してきた相手。バラエティ番組などで幼い平野美宇が表彰台に上がった映像が紹介されると、たいていその横には加藤美優か伊藤美誠がいる。
 加藤は通称かとみゆ、年齢はみうみまひなより一つ上の19歳。世界ジュニアで、みうみまひなと一緒に金メダルを獲ったメンバーでもある。

逆チキータと呼ばれるレシーヴを日本で始めたのは加藤美優で、これは「ミユータ」と名付けられている。

 ただし、加藤のブロックには、全日本準優勝の経験を持つ森さくら、昨年のジュニア優勝の長崎美柚、昨年ベスト4の永尾尭子ら強豪がひしめき、予測は難しい。
 毎年、ダークホースが現れ、上位に進出するのも全日本卓球の醍醐味だ。

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