グレイスケールが展望する2026年の暗号資産市場 「投機から金融インフラへ」転換加速

世界最大級のデジタル資産運用会社グレイスケール(Grayscale)は、2026年の暗号資産市場を貫く10の主要投資トレンドを示した。今回の展望の核心は、暗号資産が短期的な価格変動を狙う投機資産の位置付けを超え、グローバル金融インフラの中核へと進化しつつある点にある。


同社は、ドル覇権の相対的低下、規制環境の明確化、ステーブルコインおよびトークン化資産の本格普及が重なり、暗号資産市場が構造的な成長局面に入ると予測している。

1. ドル価値希薄化リスクとビットコインの再評価

米国の財政赤字拡大や世界的な通貨供給の増加を背景に、ドル価値の希薄化リスクは中長期的に高まっている。これに伴い、ビットコイン(BTC)を中心としたデジタル資産が、価値保存手段(ストア・オブ・バリュー)として再び注目を集める可能性があるとした。

2. 規制明確化がもたらす採用拡大の転換点

米国および欧州を中心に暗号資産規制の枠組みが整備されることで、機関投資家や伝統的金融機関の参入が加速すると見込まれる。グレイスケールは、「規制の明確性そのものが、デジタル資産採用を促す最も強力な触媒になる」と指摘した。

3. GENIUS法案後、ステーブルコイン普及が本格化

GENIUS法案の成立を契機に、ステーブルコイン市場は本格的な成長フェーズに入ると予想される。決済や清算、国境を越えた送金など、実体経済と直結する領域で、ステーブルコインが“デジタルドル”としての役割を担うとの見方だ。

4. 資産トークン化、実用段階への移行

不動産、債券、株式などの実物資産をブロックチェーン上で扱うトークン化(RWA)は、2026年を起点に実験段階を超え、実用フェーズへ移行すると予測された。金融市場の流動性やアクセス性を大きく高める構造的変化と位置付けられている。

5. プライバシー技術への投資需要拡大

ブロックチェーンの普及が進むにつれ、個人情報保護と規制順守を両立するプライバシーソリューションへの需要が急増すると見込まれる。次世代プライバシー技術は、新たな投資テーマとして存在感を高める可能性がある。

6. AI集中化への対抗軸としてのブロックチェーン

AI技術が一部の巨大テック企業に集中する中で、分散型ブロックチェーンが代替的なAIインフラとして注目される可能性がある。
データ所有権や計算資源の分散が、重要な課題として浮上すると分析した。

7. DeFi、オンチェーン信用市場へ再編

分散型金融(DeFi)は、従来の利回り重視型モデルから、オンチェーン貸付や信用市場を軸とした実用的な金融サービスへと進化すると見込まれる。実体経済に近い金融機能を担うDeFiが、再評価される局面を迎えるという。

8. 次世代ブロックチェーンインフラの需要拡大

大衆向け商用利用を見据え、高性能・低コスト・高い拡張性を備えた次世代ブロックチェーンへの需要も拡大する見通しだ。レイヤー2、モジュール型ブロックチェーン、決済特化型ネットワークなどが成長分野として挙げられた。

9. 持続可能な収益モデルが投資基準に

2026年以降は、短期的な話題性に依存するトークンよりも、持続可能な収益構造を持つプロジェクトが評価されると予測された。実利用に裏付けられた明確なビジネスモデルが、投資判断の重要基準となる。

10. ステーキング、基本戦略として定着

ステーキングは選択肢ではなく、基本的な投資戦略として定着すると見込まれる。ネットワークの安全性に貢献しながら安定収益を得られる点が、長期投資家にとって不可欠な要素になるという。

「2026年、暗号資産は一つの経済システムになる」

グレイスケールは、「2026年は暗号資産が投機対象から脱却し、実質的なグローバル・デジタル経済の中核インフラとして定着する年になる」と指摘。ステーブルコイン、トークン化資産、AI、DeFi、ブロックチェーンインフラを軸とした、構造的な投資戦略の重要性を強調した。
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