テレビ番組『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)の「あざとさ」と「迅速な根回し」には、いつも感心する。
で、6月7日放送の美奈子出演である。ビッグダディこと林下清志の元嫁である。テレビ朝日の超高視聴率番組『痛快!ビッグダディ』で突如現れ、ビッグダディと結婚し、有名人になった美奈子。美奈子が現れるまでは、わりとビッグダディの「オレ流子育て」を応援する視聴者が多かった。が、美奈子が登場して以来、夫婦の喧嘩が売りとなり、視聴者が少しずつ離れていったのは確かだ。つうか、ビッグダディの「オレ流」が鼻につき始めたのかもしれない。
まあ、ここんちのお家事情を説明するのは大変なので省略するが、今年のゴールデンウィーク頃に、ビッグダディと美奈子は離婚し、それぞれが別々の出版社から“暴露本”と銘打った本を出版。うっかり2冊とも買ったが、まあ、その内容の薄っぺらさに愕然とした。
そんな美奈子が『金スマ』に! 鼻息荒くして観たのだが、特別に新しいことは何ひとつない。彼女の本『ハダカの美奈子』(講談社)の魅力そのままに、腑に落ちない部分をすっとばしてセンセーショナルかつキャッチーなシーンを淡々とつなぎ合わせただけだった。とにもかくにも、美奈子を被害者に仕立て上げる空気感づくりに邁進。『金スマ』の常套手段だけどね。
前半は美奈子一家御一行様をTBSに招待し、金をほとんどかけない接待でもてなし、芸能人に会わせ、握手会密着取材という構成。ビッグダディを初回からずっと観続けてきた私としては「長男が元気そうでよかった……」という感想を持った程度。
いや、面白かったのは芸能人たちの温度差である。特に、司会の中居正広の「どう扱っていいのかわかんね~ッ」という態度。
どこまで真実なのかはわからないが、とにかく肉体的にも精神的にも暴力を受けやすい体質の美奈子。ビッグダディもある意味モラハラ(モラルハラスメント:精神的虐待や嫌がらせ)男だったし、「共依存」の言葉も浮かぶ。でも、美奈子のいいところは「働く」ことを前提にしているところだ。「子供のためにも働かなきゃ」と番組の最後を締めくくった。これが、男に経済的にべったり依存する女だったら阿鼻叫喚の地獄しか見えない。あとは二度と暴力男につかまらないよう祈るだけだ。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)
●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。