今年3月25日、関西に住む女性・Aさんの元に、こんな文書が届いた。

「貴殿宛到着した国際郵便物は、輸入差止申立てに係る貨物に該当し、関税法第69条の11第1項第9号に掲げる輸入してはならない貨物に該当すると思料するので、同法第69条の12第1項の規定により、当該貨物がこれらに該当するか否かを認定するための手続(以下「認定手続」という)を執ることを通知します」

 これは、大阪税関大阪外郵出張所から届いた「認定手続開始(輸入者等意思確認)通知書」の一文である。

この「認定手続開始通知書」とは、海外から持ち込まれた物品が知的財産を侵害する疑いがある(コピー商品や偽ブランド品)と判断され、侵害の有無を認定するための手続き(認定手続)が開始されることを通知するものだ。この結果、知的財産の侵害が認定されれば、対象の物品は日本に持ち込めず、原則として税関で没収・廃棄処分となる。

 そして、Aさんの元に届いた「認定手続開始通知書」によると、彼女が海外の販売店から購入した、人気ブランド「TORY BURCH(トリーバーチ)」のバッグが「商標権を侵害する物品に該当する疑いがあるため」、10日以内に輸入禁止貨物に該当しないという証明ができなければ、税関によって没収・破棄される可能性があるという。

ECサイトのキケン~購入品が実は知的財産権侵害で違法行為?運営元は「関与せず」

 つまり、Aさんが購入したバッグが偽ブランド品であったために、税関で輸入差し止めされたというのだ。

 ここまで聞くと、「だまされちゃったんだね」と言われて終わりそうな話だが、しかし問題は、彼女が商品を購入した“店”である。

●言い逃れをする販売店、関与しないサイト運営元

 AさんがTORY BURCHのバッグを購入したのは、Mobageでおなじみのディー・エヌ・エーが運営するECサイト(オンラインショップ)「DeNAショッピング」。同サイトに出店していた「桜花屋」なる中国・上海に拠点を持つ店舗が格安で販売していたものを購入したという。

 通常は3~8万円のTORY BURCHのバッグが1万円前後で購入できたというから、「本物なのか?」という疑念はよぎっただろう。しかし、現在は日本のプロ野球界にも球団(横浜DeNAベイスターズ)を有する大企業ディー・エヌ・エーのサイトに掲載されていた商品であり、安心してしまったのだ。Aさんは同社を信用して、この“激安TORY BURCH”を購入したという

 突然の通知に驚いたAさんは、すぐにその意味するところをDeNAショッピングに問い合わせた。すると、同社からの返答は、

「この度はお取引にあたり、ご購入の商品に問題があったとのこと、お客様にはご不便をおかけして申し訳ございません。(中略)偽ブランド品、レプリカの販売は、商標法等で禁じられています。

そのため、DeNAショッピングでは、偽ブランド品、レプリカの販売の出品はお断りしております。大変申し訳ございませんが、DeNAショッピングではお客様へのご連絡や商品の管理・発送は店舗でおこなっており、購入手続き後のお取引は、ご購入者様と店舗の双方でお進めいただいております。そのため、商品に関するご連絡につきましては、店舗に直接お問い合わせいただきますようお願いいたします」(DeNAショッピングサービスカウンター 担当者からのメール文)

と、“偽ブランド品の販売が禁止されていることは知っているが、あとは出店者と購入者の問題なので勝手に解決してくれ”、という無責任なものだった。

 そこで今度は、直接販売店に説明を求めるメールを送ると、

「じつは、通関文書不全の為に、商品は税関に引っかかりました。税関の方の対応はこちらに任せてください。そちらは何も返事しなくて大丈夫です。(中略)後ほど、クレジットカードで返金させていただきます。今回の注文もキャンセルとさせていただきます」(桜花屋担当者からのメール文)

との回答がきた。しかし、先に述べてきた通り、今回の通知内容は「通関文書不全」ではない。「商標権を侵害する物品」との忠告をはっきり受けているのだ。

 これについて再度問いつめたところ、「商品代金・送料は返金し、大阪税関とのやり取りは自分たちが行うから大丈夫だ」との一点張り。DeNAショッピングに二者間協議が難しいと訴えても、

「DeNAショッピングはお取引の場を提供するサービスとなっており、お取引自体には関与いたしかねる立場にございます為、お力添えできる範囲が限られております。

(中略)つきましては、引き続きお話し合いにて解決いただきたくお願いする次第ですが、それでも解決されない場合には、しかるべき機関等への相談をご検討くださいますでしょうか」(DeNAショッピングサービスカウンター 担当者からのメール文)

と、こちらも間に入ることを断固拒否されてしまった。

●模倣品輸入をすれば、知的財産権侵害にあたる可能性も…

 もちろん、今回の例でいえば、Aさんの元には代金が返金され、それ以上の問題が起きたわけではない。しかしながら、偽ブランド品などを日本国内に持ち込んでしまった際、場合によっては「10年以下の懲役」または「1000万円以下の罰金」、あるいはその両方が科せられる可能性があるのだ。

 AさんがDeNAショッピングを介して取引を行った「桜花屋」をインターネットで検索したところ、某大手携帯サイトのショッピングモールにも出店の形跡が見られた(現在は退店済み)。Aさんがやり取りを行った桜花屋のメールアドレスはすでに使用できなくなり、両社が同じ業者であるかの確認はできないが、大手企業が運営するECサイトを介して、“怪しい販売店”による取引が行われていることは確かだ。

 年々ECサイトが増え続ける中、7年ほど前から、偽ブランド品やコピー商品、模倣品といった知的財産侵害物品の税関での輸入差止め件数は、毎年2万件以上にも上っている。安心して購入したものが、実は法律違反だった……。そんな危険性が、すぐ身の回りに潜んでいることを忘れないでいただきたい。
(文=千吉良美樹)

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