一連の騒動は同ドラマの提供スポンサーにも影響を及ぼし、第1話(1月15日)放送時には8社のスポンサー名が放送内で表示されていたが、騒動を受け第2話(22日)では全社の表示を取りやめ。第3話(29日)では全社がCM放送を見合わせるという異例の事態に発展しているが、27日、日本テレビの大久保好男社長は定例会見で「最後まで見ていただければ、制作の意図はわかる」と説明し、予定通り全9話まで放送する意向をあらためて表明した。
本ドラマの内容については、同ドラマの監修を務める元養護施設長の岡本忠之氏が「週刊文春」(文藝春秋/1月30日号)の記事で「一話と二話の台本は実際の施設の実態とかけ離れているので日テレにその旨を伝えた」と話しているように、放送前から物議を醸しかねないとの指摘が制作サイド内でも上がっていた様子がうかがえる。
そんな本ドラマであるが、その内容について世間一般の人々はどのような感想を抱いているのであろうか。インターネット上では、賛否両論のさまざまな意見が見られる。
【否定的意見】「ドラマということは百も承知だが、現に生活している子供を傷つけてまで訴えたいものがあのドラマにはあるのだろうか」
「入所の仕方からして現実とかけ離れすぎている」(養護施設職員)
「ドラマは里親になる人のこともバカにしている。ペットを選ぶように選んでるわけじゃない」
「子供に対する偏見を増大させる内容」(養護施設職員)
「子供が学校でポストとあだ名をつけられて帰ってきた。もう観ない」
このような多くの批判の声が施設関係団体職員や視聴者から上がる一方、番組を肯定的に捉え、積極的に擁護する意見も多数見られる。
【肯定的意見】「このドラマをきっかけに、多くの人が児童養護施設について考えていくことは意味があるとは思います」
「私も施設出身だが、このドラマはましなほう。もっとひどいこともある」(養護施設出身者)
「私から言わせてみれば、施設側の声に耳を貸す必要はない。現実ではもっと冷たい、戦慄する出来事が起きている」(養護施設出身者)
「私は高校生まで養護施設で生活していました。忠実に再現されているとは思います」(養護施設出身者)
このように一般視聴者の間から賛否両論の声が上がる中、時に出演番組が批判の対象となりかねないタレントからも積極的に発言がなされている。
例えば、「はるかぜちゃん」こと女優でタレントの春名風花は自身のTwitterで「完全にドラマの解釈を間違えている『観る力不足』による誤解」と発言。続けて「ポストは、ポストという名前に誇りを持って生きてる。それを『かわいそう~』といって見下す行為は、あのこの出生を、存在を、まるごと否定するに等しい行為だ」と、同ドラマへの批判に反論している。
また、タレントの吉木りさもSNS上で「想像をはるかに超えた真に迫る“言葉の伝え方”に脱帽せざるを得ませんでした」と感想も漏らしている。
このほかにも、お笑いタレント・岡村隆史(ナインティナイン)は、1月24日1:00~放送のラジオ番組『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に出演し、「もし、これで本当に放送中止になってしまったら、もうテレビの未来はないです」と懸念を表した。お笑いタレント・松本人志(ダウンタウン)も出演した1月28日0:50~放送のテレビ番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)内で、「もし『はい、やめます』ってなっちゃったら、『クレームしたら番組終わらせられるんだ』っていうのができちゃうと、どんどんつくり手はやりにくくなってくる」と危惧を口にした。普段からバッシングの対象になりやすいバラエティ番組で活躍する人気タレントたちも、一連の騒動を受け、「クレームと規制の問題」に敏感になっている様子がうかがえる。
同ドラマはフィクションのため、現実の児童養護施設とかけ離れている部分もあるのは確かだろう。しかし、「恩寵園事件」(1995年に発覚した児童養護施設内での虐待事件)といった悲惨な事件が、ドラマではなく実際に起きているのも事実である。多くの児童養護施設では虐待などなく、職員も懸命に働いているだろう。今回の一連の問題をたんに騒動として終わらせるのではなく、親と離れて暮らす子供たちにとってかけがえのない受け皿である児童養護施設をめぐる現状や在り方について、より建設的な議論に発展させることが求められているのかもしれない。
1月15日に放送された同ドラマの第1話内では、赤ちゃんポストに預けられたという設定の子役に「ポスト」というあだ名がつけられたり、施設長が「お前たちはペットショップの犬と同じだ」という言葉を子役たちに浴びせたり、子役たちを平手打ちにするなどのシーンも見られた。
また、同ドラマ第1話の平均視聴率は14.0%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)であったが、22日放送の第2話では13.5%(同)へ低下した。脚本監修は、過去に『高校教師』(TBS系)や『家なき子』(日本テレビ系)などに関わった人気脚本家・野島伸司氏が担当している。
(文=成田男/フリーライター)