焼き鳥チェーン「鳥貴族」は、飲料やラーメンなどのサイドメニューも含めて、全品が「税抜き280円均一」というわかりやすい料金設定を採用する。商品の鮮度を保つため、肉に串を通す作業はすべて店内で行う。関西と首都圏、東海地方で約350店を展開しており、2018年までに1000店体制とする目標を掲げる。業績は13年7月期の売上高128億円、経常利益4.9億円、純利益2.1億円だ。
「足元、消費者は高級志向をやや復活させており、低価格が武器の居酒屋の経営環境は厳しい。その中で増収増益を続けているのは、価格を抑えつつ原材料をほぼ100%国産品で賄うなど、品質向上にいち早く取り組んだことが大きい。今後はシニア向けメニューの開発などに力を入れる方針だ」(同記事より)という。
鳥貴族の公開価格は仮条件の上限に当たる2800円に決まった。初値が公開価格を上回るのかが、注目される。IPO(新規株式公開)銘柄の値動きを見ると、13年は新規上場した54社中52社で初値が公開価格を上回っているが、14年は26社中7社が公開価格を下回っているためだ。「同社の株価動向で個人投資家の物色意欲の高さを測ることになりそうだ」(同記事より)
注目される理由はそれだけではない。鳥貴族の大倉忠司社長は、実は、ジャニーズ事務所の人気グループ「関ジャニ∞」のメンバー・大倉忠義の実父。
6月13日付日刊ゲンダイ記事『関ジャニ大倉 実家の居酒屋「鳥貴族」新規上場で株長者へ』によれば、「有価証券報告書によると、株の52%に当たる75万株は筆頭株主の大倉の父親が保有。大倉は0.69%(13位)に当たる1万株、2人の弟も同じ割合の株を保有している。資産管理会社を含め、一族が手にする資産は25億円超だ。兄弟3人のうちいずれ
●成功の秘訣はパクリ?鳥貴族の成功の秘訣については月刊誌「サイゾー」(2013年6月号)の記事『大倉忠司社長が語る居酒屋業界と“忠”の秘密』が詳しい。
「小誌が発売される2日前の5月16日、関ジャニ∞の大倉忠義は28歳の誕生日を迎えた。さかのぼること28年前の1985年、長男・忠義が生まれたその年、父は、今や庶民の味方として愛される『鳥貴族』の第1号店をオープンさせたのだ。『最悪1店舗にまで縮小する日が来たとしても、またこの腕一本で焼き鳥を焼いて、家族を支えますよ』。そう笑顔で語ってくれた、大倉忠司社長の『鳥貴族』への思いとは!?」という大倉社長へのインタビューだ。
鳥貴族の強みは「鳥に特化して大量販売することで仕入れ価格を抑えられるという点」だが、低価格の均一価格や人気メニューの「じゃんぼ焼鳥」はオリジナルアイデアではないことを明らかにしている。
「鳥貴族を始める前、若い頃に通っていた地元の炉端焼きの店が230円均一だった。そこに感動しましてね。
悪くいえば、パクリ。よくいえば、いいアイデアを貪欲に吸収する姿勢が、成功の秘訣といえるだろうか。
●ライバルはコンビニ? 貪欲な大倉社長ところで、意外にも東京は客単価が低いと大倉社長はいう。
「東京ってお金持ちが多いイメージですけど、そういう人はウチには来ないでしょ(笑)。ミュージシャンの卵をはじめ、発泡酒の大ジョッキと、おかわり自由のキャベツだけで飲んでる方も多いですよ」(同記事より)
その大倉社長がライバル視するのはコンビニだという。
「今の一番のベンチマークは“家呑み市場”なんですよ。コンビニで鶏の唐揚げの新作が出たら、必ず買いに行ってます。鶏に関しては、コンビニに負けたくないですから! 焼き鳥に関してはレベルが違うぞという自負はありますけど、唐揚げは作り置きしててもイケるんですよ。
もっと経営学的な視点で鳥貴族を味わいたければ、『鳥貴族「280円均一」の経営哲学』(大倉忠司著/東洋経済新報社刊)が詳しい。「お通しを出さないがすぐに提供できるスピードメニューを用意する」「炭火焼へのこだわりを捨て、自社開発の電気グリラーで焼き鳥を作る」といった詳しいコスト削減の知恵が満載だ。
(文=松井克明/CFP)