規制緩和の影響やカーシェアの普及によって、割安なレンタカーサービスが定着しつつある。自動車を所有していない人が自家用車替わりに、手軽に車を使えるようになっただけでなく、旅先などでも便利な交通手段になりつつある。
難点は、気軽に乗り捨て(ワンウェイ利用)ができないことだ。東京や大阪をはじめ、全国のさまざまな都市で普及しつつあるシェア型のレンタサイクルは、各エリアに設置されたどのポートへ返却してもよい。つまり乗り捨てが可能で、電車やバスが混んでいたり、乗り継ぎが面倒な場合のアシとして、気軽に使える。
だが、基本的にレンタカーの乗り捨て料金は高額だ。同一都道府県内はおおむね「乗り捨て料金無料」というレンタカー会社もあるが、通常は、借りたい店舗と返したい店舗が20km以上離れると、有料になるのが一般的。距離が遠くなればなるほど、乗り捨て料金も高くなる。
例えば東京駅付近の店舗を出発し、大阪駅付近で返却する場合、乗用車ならおおむね3万5000円~4万5000円程度の乗り捨て料金が発生する。もちろんこれに、通常の基本料金やオプション料金などが別途加わるわけで、手軽に利用できる金額とはいえないだろう。
そんな中、割安なワンウェイサービスを行っているレンタカー会社もある。ここでは、特に使い勝手のいいサービスをいくつか紹介してみよう。
岡山・香川・愛媛の「平成レンタカー」が面白い岡山・香川・愛媛の3県で営業を行っている「平成レンタカー」は、オープンカーからキャンピングカーまで、多様な車種を扱っている。乗り捨て料金は同一県内なら無料。
筆者も高松空港でレンタカーを借りて、香川県内の讃岐うどん店めぐりと丸亀城を観光し、そのまま広島方面へと仕事に向かったことがある。車で瀬戸大橋を渡り、岡山で乗り捨てることも考えたが、香川県内の坂出駅前店で返却して電車で向かうほうが安かったため、そちらを選択した。
岡山・高松・松山の3空港のほか、岡山駅や新倉敷駅、高松駅など主要駅の近くにも営業所があり、利用しやすい。軽乗用車なら12時間まで4374円(ネット会員料金)とリーズナブルなのも魅力だ。
タイムズカーレンタル「AIRPORT ACCESS」は2980円から!飛行機に乗って旅行へ出かけるとき、重い荷物を抱えながら小さい子どもを連れて電車移動するのは大変だ。
タイムズカーレンタルの「AIRPORT ACCESS」(エアポートアクセス)は、羽田・成田空港と東京圏、関西空港と大阪市内、広島空港と広島県内、大分空港と大分県内、新千歳空港と札幌・岩見沢・室蘭・小樽・苫小牧エリアなどを定額でワンウェイ利用できるサービスだ。
3時間限定だが、ガソリン代や安心補償コース加入料も含まれているためお得。料金は2980円~で、車種はコンパクトカーのほか、ミニバンなどもある。
日進レンタカーは1日2500円から!東京近郊で営業している日進レンタカーも、成田営業所への発着限定で乗り捨て無料サービスを行っている。もちろん、営業所から空港までの送迎もしてくれるので安心だ。
日進レンタカーは乗用車などをネットで予約すると、2日以上(暦日計算)の利用で1日分無料となるというサービスもある。つまり、12時間分の料金で、最大36時間まで利用することができるわけだ。
さらに、周囲の目が気にならなければ、ボディに日進レンタカーのロゴがデカデカと書かれた「マスコットカー」がお得。1日2500円~(会員料金)と、節約派にはうれしい価格設定だ。電気自動車(日産・リーフ)やメルセデス・ベンツなどもラインナップしているのも魅力的だ。
トヨタレンタカー「片道GO!」は24時間で2160円!さらに最近登場したのが、大手レンタカー会社による長距離の乗り捨てプランだ。
ただし、希望の日時に借りられるかどうかは、かなり運まかせだ(ウェブ及び予約センターでの予約は受け付けていない)。実はこのプランは、ほかの客が乗り捨てした車を活用したもの。乗り捨てられた車は、社員などが乗り捨てされた店舗へ出向き、出発した店舗へと回送する、というのが一般的。
しかし、東京~大阪間などの長距離は、この回送作業に手間も時間も費用もかかる。だからこそ、通常は多額の乗り捨て費用が請求されるわけだ。そこで、この車両を“逆方向”で利用したい人に格安で貸し出してしまおう、というのが「片道GO!」の仕組みなのだ。
そのため「片道GO!」は、出発店舗(つまりほかの客が乗り捨てした店舗)が限定されている。毎日チェックしていると、関西空港店や成田空港店の比率が極めて高いのは、遠方や海外からの利用者が乗り捨てるケースが多いからだと考えられる。
もちろん車種も限定されるわけだが、こちらもハイエースの10人乗りモデルやアルファードなど、大人数が乗れるミニバンが多い。当初の客が借りた際、1人あたりの金額を考えれば乗り捨て料金も許容範囲だった、というわけなのだろう。
ニッポンレンタカー「特割ワンウェイ」はちょっと不親切より汎用性の高いサービスを行っているのが、ニッポンレンタカーだ。2017年に「ワンウェイレンタル格安プラン」として首都圏限定でスタートし、現在はスマートフォン用アプリを使用する「特割ワンウェイ」を展開している。
出発または返却の営業所を指定すると、利用できる車種の一覧が表示される。東京~関西間に限定されているトヨタレンタカーに比べ、利用できる地域の選択肢が広いのは大きな魅力。ただ、日時や車種は運まかせであることは変わりない。
また、出発店舗での検索が難しいのも難点だ。こちらも出発店舗は他の客が乗り捨てた店舗に限定されるわけだが、近隣の営業所を1軒ずつ調べていくのは実に面倒だ。
一方で到着店舗は、ある程度の範囲内であればOKという設定になっているようで、東京23区内の店舗を指定すれば、ある程度の数が見つかることが多い。検索する際は、到着店舗を指定して探したほうが、希望のプランを見つけやすいだろう。
このニッポンレンタカーの「特割ワンウェイ」を実際に予約して、利用してみた。使ったのは6月下旬。出発は栃木県、到着は宮城県の営業所だ。
出発店舗に到着して戸惑ったのが、店員さんの準備がまったくされていなかったこと。これは筆者が悪いのだが、出発店舗に到着したら、アプリで来店を通知するというシステムを認識していなかった。これで自動的に通知がいくようだ。
ただそれにしても、その後の対応には疑問が残った。アプリで、特割ワンウェイの予約をしたと伝えても、よくわからない様子。15分ほど待たされて、ようやく車のカギを渡されるが、免許証を確認し、車の場所を教えられただけで、あとはなんのの説明もない。
料金はアプリとクレジットカードが連動しているので自動的に引き落とされるものの、車の傷の確認も、事故の場合の説明も、到着先の営業所の場所も、まったく案内がない。50メートルほど離れた場所へ1人で行かされ、止まっていた車に近寄ってみると、洗車もされていなかった。
利用料金は9時間使って1080円という破格の料金だったので「安かろう悪かろう」というサービスなのであれば納得はするのだが、ならば事前にそういう案内があるとありがたいところだ。
格安料金とセルフサービス、自己責任が徹底しているあたりは、飛行機のLCCに似た雰囲気も感じた。運まかせのサービスでもあるため、旅やレンタカーにある程度慣れている、上級者向けのプランといえるだろう。
(文=渡瀬基樹)
●渡瀬基樹(わたせ・もとき)
1976年、静岡県生まれ。ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。自動車、野球、マンガ評論、神社仏閣、温泉、高速道路のSA・PAなど雑多なジャンルを扱います。