「人生、山あり谷あり」というキャッチフレーズで、大人から子どもまで楽しめる盤ゲームの金字塔、「人生ゲーム」。発祥は1860年のアメリカだが、1968年に日本で第1弾が発売されて以降、現在までにシリーズ商品を含め累計約1500万個以上を売り上げている、タカラトミーの看板商品だ。

 そんなタカラトミーが、新元号の“令和”を迎えてからちょうど1カ月後の6月1日、『人生ゲーム+(プラス)令和版』と題した新商品を発売した。今までのルールやアイテムをガラッと変え、さらに令和という時代背景を色濃く反映した“新・人生ゲーム”ということで、注目を集めているのである。

 インターネット、とりわけSNSという手軽に人とつながることのできるツールが日常生活にすっかり根付いた令和時代。そうした世相をどのように取り入れ、この新商品を開発したのかについて、タカラトミーの広報担当者に詳しく話を聞いた。

歴代元号も取り入れてきた人生ゲーム、今作の“+(プラス)”とは?

 人生ゲームといえば、特徴的な盤上のルーレットを回して自動車型のコマを動かし、ドル札風の紙幣を用いて人生を模擬体験する遊びだが、なぜ今回の新作では“令和”というテーマを選んだのだろうか。

「実はこれまでも、人生ゲームは時代の世相やトレンドを反映させながら、常に話題性のあるゲームとして展開してきました。過去には平成の幕開けとともに『人生ゲーム平成版』、2003年には人生ゲーム35周年を記念して『人生ゲーム昭和おもひで劇場』という商品を発表したこともあります。そこで今回も、今の時代に合わせた新たな商品を開発しようという話になったのです」(タカラトミー広報担当)

 加えて今回は、ただ令和という新元号とコラボレーションしたのではなく、“人生ゲーム+”という今までにない新シリーズとして展開しているのだという。いったい、何が違うのだろうか。

「一番大きな特徴を挙げるならば、従来のシリーズより“戦略性”が高くなっているという部分です。今までの人生ゲームは基本的にゴールが定められていて、ルーレットを回してマス目を進みながら、そのなかでどれだけ多くのお金を得られるかを競うものでした。

 しかし今回の新作は決まったコースやゴールがないうえ、集めるのもお金ではなく“フォロワー”。

フォロワー数を増やすためにはどのように“アイテムカード”(後述)を集めていくか、相手のフォロワー数を増やさないためにはどのタイミングで妨害をするかなど、従来のシステムに比べて戦略性が求められるというわけです」(タカラトミー広報担当)

 お金よりもフォロワーを集める時代……なぜこうした変化を加えたのだろうか。

「人生ゲームは“時代を映す鏡”としての側面を持たせてきたシリーズです。さまざまなトレンドや社会ネタを取り入れてきたなかで、令和の時代に何があるだろうと考えたときに、インフルエンサーというテーマが思い浮かびました。従来のゴールを廃したつくりに変更したのは、“SNSの世界をグルグルまわっていく”というイメージを表現したかったからですね」(タカラトミー広報担当)

インフルエンサーを目指す……「令和版」の斬新なルール設定

 新たなゲームシステムについてもっと掘り下げていこう。

「先ほども触れましたが、本作の目的は“終了時に他のプレイヤーより多くのフォロワーを獲得すること”。そして、“インフルエンサーカードに書かれた条件を達成してインフルエンサーになること”です。

 フォロワーとは、ルーレットの周りにたくさん置かれた白いコマのことで、1個で100万フォロワーを表し、これをたくさんゲットするのが目的です。では具体的にどうやって集めればいいのかというと、特定のマス目に止まることでもらえるほか、ゲームスタート時にプレイヤーに3枚ずつ配られる“インフルエンサーカード”に記載の条件を達成すると、そこに書かれた数のフォロワーが獲得できるのです」(タカラトミー広報担当)

 こう聞くと、フォロワーは旧シリーズの紙幣の代わりだと考えられるだろう。一方でインフルエンサーカードとは、どのようなものなのだろうか。

「インフルエンサーをイメージするキャラクターのカードで、そこに書かれている条件を全部達成することで“インフルエンサーになった”と認められます。全プレイヤーで合計10回インフルエンサーカードの条件を達成した時点でゲーム終了です。インフルエンサーには『tsubuyaki』、『photogenic』などの種類があり、インフルエンサーカードに書かれている条件には、それらの種類も関係してきます。

 次に書かれている条件ですが、それは簡単に言うと指定のアイテムカードを集めることになります。このアイテムカードはルーレットで止まったマス目に指示があった場合に山から引いていくカードなのですが、その内容はSNS時代を反映した“あるあるネタ”をご用意しました。例えば『#ボイパ』や『#写真映えスポット』『#歌ってみた』といったように、SNS世代の方にはおなじみの面白ネタが盛りだくさんとなっています」(タカラトミー広報担当)

 なるほど、このアイテムカードをいかに効率よく集めてインフルエンサーになり、フォロワーをどれくらい集められるのか、そうしたことを総合的に考えながらゲームを進めていくところに戦略性が生まれるのだろう。バズってインフルエンサーになるためには、こうした細かな努力の積み重ねをしなければならないところのリアリティは、「さすが人生ゲームシリーズ」という印象だ。

新元号発表に合わせて軌道修正? 開発時の驚きのエピソード

 開発の段階では、どのようなエピソードがあったのだろうか。

「本作は開発に1年以上を要した商品なのですが、新元号に変わる、という情報が飛び込んできたタイミングで、それを急遽コンセプトに織り込むことになったのです。そのため、細かな微調整などを図っていくのに苦労しました。

 一番緊張したのが、4月1日に東京の渋谷109前で実施した、本作の商品発表イベントです。リリースについては新元号が公表されるのとほぼ同時刻、イベントはその数時間後に行う予定だったために、前もって準備をしておき、令和だと発表された瞬間に印刷会社で“令和版”のシールを制作。それをすぐさまイベント会場に持っていき、シールを来場者の目の前で貼り、抽選で100名様にプレゼントする……というスケジュールでした」(タカラトミー広報担当)

 従来の人生ゲームとは大きく異なる要素を入れつつも、「長年親しんでくれたファンのために人生ゲームの大事なエッセンスを残しながら仕上げました」、とも語ってくれたタカラトミーの広報担当者。タカラトミーの思いが詰まったこの新たな人生ゲームを、ぜひ家族や友人と楽しんでみてはいかがだろうか。
(文=A4studio)

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