今や男性のファッションの一部として認められつつある“ヒゲ”。近年では、清潔感があればオフィスでもヒゲを生やしてOK、という職種や業界も増えつつある。

しかし、いざヒゲを伸ばしても正しくケアができていないと、顔に水虫菌が繁殖する「ヒゲ白癬」を発症することもあるという。

 男性専門の総合美容クリニック「ゴリラクリニック」総院長の稲見文彦氏は、ヒゲのトレンドについてこう話す。

「当院でヒゲの脱毛をする患者さんのなかでも、全脱毛ではなく、ある程度ヒゲを残して整える『デザイン脱毛』の施術を受けるケースが増えてきた印象があります。もちろん、脱毛をしなくてもデザインヒゲをつくることはできますが、不要な部分をきれいに剃って残す部分は残すというのは意外に難しいため、部分脱毛を希望するようです」(稲見氏)

 オシャレなヒゲが流行している一方で、「肌のケアが行き届いていない男性が多い」と稲見氏は指摘する。

「スキンケアが習慣化している女性に比べ、男性はまだまだ基本的な肌ケアが不十分といわざるを得ません。特に日焼け対策ができていない患者さんが多いと感じますね。たとえば、カミソリ負けをして肌が荒れたまま紫外線対策をせずにゴルフやアウトドアに行き、日焼け痕が茶色くなる“色素沈着”だらけになっている男性も少なくありません」(同)

 また、保湿をしていない男性の肌は吹き出物ができやすく、それを潰したり放置したりすると、表面に凹んだ痕が残ることもあるという。デザインヒゲが人気になっているものの、肌のケアまでは意識が向いていないようだ。

カミソリ負けが老けて見られる原因に?

 日頃のケアができていないヒゲ男子は肌のトラブルも引き起こしやすい、と稲見氏。もっとも注意が必要なのは「カミソリ負け」だという。

「カミソリ負けは、医学的には『毛のう炎』と呼ばれます。見た目はニキビと似ていますが、ニキビの原因菌はアクネ菌なのに対し、毛のう炎の原因菌はブドウ球菌。

どちらも細菌が原因ですが、毛のう炎を放置すると色素沈着を引き起こして、将来的にはシミになります。大きなシミが増えると、年齢以上に老けた印象を与えますよ」(同)

 毛のう炎を引き起こす原因のひとつに、「古いカミソリ」がある。

「古いカミソリの刃は肌を傷つけやすいだけでなく、細菌が繁殖しているので使用リスクがとても高いです。刃の替え時はカミソリのメーカーによって異なるので、一度確認してみましょう」(同)

“ヒゲ水虫”の原因とは

 デザインヒゲを嗜む男性が気をつけるべきトラブルには、水虫菌が原因になる「白癬性毛瘡(以下、ヒゲ白癬)」もある。

「“顔に水虫”と聞くと驚く人もいるかもしれませんが、ヒゲ周りにできるヒゲ白癬と、足や手の水虫を引き起こす紅色白癬菌は、大きな枠でいえば『真菌』が原因です。特にヒゲ白癬は、古いカミソリに付着した真菌やステロイドなどの外用薬が引き金となって発症するのが特徴。肌が赤くなる、ガサガサする、毛が抜ける、膿が出る、などが主な症状です」(同)

 前述のニキビや毛のう炎は抗生物質による治療が効果的だが、真菌には効果がなく、使用する薬を間違えると治療が長引く可能性もある。そのため、見た目だけで自己判断するのは危険だという。

「ヒゲ白癬を発症した場合は医療機関で検査すれば真菌が見つかり、抗真菌薬を使用した正しい治療が受けられます。治療中はヒゲを伸ばさず患部を清潔に保ち、体調を整えましょう。この類の症状は、患者さん自身が積極的に治療する意思がないとなかなか治りません」(同)

 そして、ヒゲ周りのトラブルを未然に防ぐカギは「ヒゲの処理方法」にある、と稲見氏はアドバイスを送る。

「カミソリでヒゲを剃る場合は、洗顔後にシェービングフォームを使い、カミソリには力を込めずに優しくすべらせるように剃るのがコツ。

使用後のカミソリはしっかり乾燥させて保管しましょう。剃った後は、必ず肌に化粧水をつけて保湿を欠かさないなど、ケアを習慣化することでリスクは下がるはず。ケアをしても肌が荒れてしまう人は、思い切ってヒゲ脱毛も視野に入れてみてください。ヒゲ剃りの煩わしさから解放されて楽になる、と話す患者さんは多いですよ」(同)

 せっかくデザインヒゲがキマっても、肌が荒れていては魅力が半減。充実したヒゲライフを送るためにも、日頃のケアを心がけよう。

(文=真島加代/清談社)

●「男性専門の総合美容クリニック ゴリラクリニック」

●稲見文彦(いなみ・ふみひこ)
男性専門の総合美容クリニック『ゴリラクリニック』総院長。大手美容整形外科に10年以上勤務し、多数の研修医や新人看護師の育成に携わる。高い技術力と朗らかな人柄に定評があり、ひとりひとりに最善の治療法を提案する。テレビ番組や雑誌など、メディア出演多数。

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