韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄した問題で、韓国国内でも反対運動が過熱している。
日韓でGSOMIAの署名が行われたのは2016年11月のこと。
元徴用工をめぐる問題などで日韓関係が悪化の一途をたどるなか、韓国は8月22日にGSOMIAの破棄を発表した。韓国の対応を受け、首相官邸で取材に応じた安倍晋三首相は「約束をまずは守ってもらいたいという基本的な方針は今後も変わりないし、彼らが国と国との約束を守るように求めていきたい」との意向を示した。
24日には、ソウルで行われた野党の集会に数万人が集まり、GSOMIAの破棄について批判が集中。「北朝鮮・中国・ロシアに近づく政権に命は任せられない」などと文在寅大統領の退陣を求める声が相次いだという。すでに、保守系の朝鮮日報が「GSOMIAは我々が一方的に情報を提供するものではない。韓日両国の安全保障に役立つ協定だ」「(日本への)対抗カードに使ったのは自傷行為に等しい」などと文政権の判断を批判していたが、韓国国内でも反対運動が先鋭化してきたようだ。
また、文政権は側近の不正疑惑でも窮地に立たされている。前民情首席秘書官で検察を所管する次期法務部長官候補に指名されたチョ・グク氏について、娘の名門大学への不正入学や奨学金不正受給、息子の兵役逃れ、不動産の偽装売買、巨額の財産隠しなどの疑惑が明るみになり、検察が大学など関係先の一斉捜索に乗り出したことが報じられたのだ。
「韓国国内では、GSOMIAの破棄よりもチョ氏の不正疑惑のほうが関心を集めているといわれています。特に国民の怒りを買っているのは、娘の大学への不正入学です。韓国は超学歴社会であることに加えて、財閥企業とその他の企業の格差が激しく、さらに今は若者の就職率が悪化しています。
朴槿恵前大統領を失脚させた『崔順実ゲート事件』に関しても、国民の怒りは財閥企業との贈収賄よりも崔氏の娘が名門大学に不正入学していた問題に向けられていました。そして、大規模なろうそく集会(抗議デモ)が開かれ、朴氏の罷免、逮捕につながったのです。チョ氏の疑惑も、ただでさえ窮地の文政権をさらに追い込む大スキャンダルといえるでしょう」(政治ジャーナリスト)
23日放送のニュース番組『Live News it!』(フジテレビ系)では、GSOMIAの破棄が韓国国内でも予想外だったことに触れた上で、フジテレビ国際取材部長の鴨下ひろみ氏が「韓国の野党や保守系のメディアからはまさに『火消しのため、チョ・グクさんの疑惑を隠すためにGSOMIAを破棄したんじゃないか』という指摘が出て、批判の渦中にあります」と言及している。
また、GSOMIAの破棄については医師の高須克弥氏がツイッターで「大丈夫か? 韓国 アメリカに捨てられるよ」とコメント。ネット上でも「韓国は在韓米軍を抱えているのにGSOMIA破棄なんて何を考えているのか」「韓国と向き合っても得られるものはもうない。これを機に国交を断絶したほうがいいと思う」などとさまざまな意見が寄せられていた。
フランスで開かれていた主要7カ国首脳会議では、アメリカのドナルド・トランプ大統領が文大統領について「信用できない」「なんで、あんな人が大統領になったんだろうか」などと痛烈に批判したほか、「金正恩は『文大統領は嘘をつく人だ』と俺に言ったんだ」と暴露したことが報じられるなど、文政権は火の車だ。
そして、日米に加えて国内からも批判が噴出している韓国では、来週にもチョ氏の法相としての適格性を審査する人事聴聞会が国会で開かれる予定だ。
「チョ氏は次期大統領の有力候補、つまり文大統領の後継者とも目される人物です。そのため、人事聴聞会の結果が文政権の今後を左右することになるのは必至でしょう」(同)
韓国の苦境は、まだまだ続きそうだ。
(文=編集部)