長時間のスマートフォンやパソコンの使用で、ねこ背になっている方が増えています。私はこれまで、首の痛み、肩こり、腱鞘炎、背中の痛み、腰痛、ひざの痛み、足首の痛みを抱える患者さんをたくさん診てきましたが、本人はその痛みの原因がねこ背にあることにまったく気がついておらず、痛みを感じている患部だけが悪いと思いがちです。
確かに患部のトラブルが痛みの原因という場合もありますが、実はねこ背が真犯人ということも多いのです。ある日、「ひざが痛い」と訴える患者さんが私のもとにやって来ました。話を聞いてみると、ここ数年、ひざの痛みがひどくなり、日常動作も億劫になっているとのこと。ねこ背によって骨格がゆがんだ結果、ひざに痛みが出ているのではないかと考え、首、肩、背中、腰にもマッサージや指圧を施しました。
施術後には、ねこ背を改善するためのエクササイズをいくつかお伝えし、自宅でも毎日行うようアドバイスしました。それから何度かの通院と日々のエクササイズをこなすうちに、「ひざの痛みが気にならなくなりました!」と患者さんは大喜び。ひざが痛いせいでやめていた趣味の旅行も、再開したとおっしゃっていました。
ひざの痛みや腰痛、肩こりの原因が、なぜねこ背にあるのかを解説し、自宅ですぐできるストレッチの一部を『腰・ひざ・首・肩が痛いなら まずはねこ背を治しなさい』(KADOKAWA)からご紹介いたします。
ねこ背が内臓やメンタルに悪影響も本来、私たちの背骨はS字を描くようにゆるくカーブしています。これは、進化の過程で直立二足歩行ができるようになるなか、頭部の重さや、歩いたり走ったりしたときの衝撃を体全体に分散するためにたどりついた形だといわれています。しかし、前かがみの姿勢でいる時間が長くなった現代人の背骨からは、S字カーブが失われつつあります。
その結果、ストレートネックになったり、骨盤のゆがみから体のさまざまな痛みやしびれ、不具合が出たりするのです。
背骨にゆがみがなければ脳と神経の連携はスムーズに行われますし、新鮮な血液も順調に送られてきますから、臓器は正常に機能することができます。老廃物も、蓄積することなく排出されるでしょう。
しかし、ねこ背の人はそうはいきません。背骨がゆがんでいるため、筋肉がこわばったり椎骨と椎骨の間が詰まったりして、血管や神経が圧迫されています。これが、さまざまな不調を引き起こすのです。
職場でもできる「座って行う基本ストレッチ」職場でも自宅でもできるストレッチの中から、座って行うストレッチを紹介します。時間があるときにいつでも簡単に行えるので、お試しください。
【腰ひねり】10秒キープ×左右各3回
※痛みがある場合は決して無理をしないでください
「立って行う基本ストレッチ」で良い姿勢を維持姿勢が良くなり、美しいS字カーブを取り戻すため、いつでもどこでも1回15秒で毎日行ってみてください。
【フラミンゴのポーズ】5秒キープ×左右各3回
※痛みがある場合は決して無理をしないでください
1日3分、毎日続けることが大切痛みのある部分をいくらケアしても、痛みはなかなかとれません。原因は別の場所にあるからです。
ねこ背改善のストレッチでこまめに体を動かせば、姿勢の悪化を防げるだけでなく、酸素をたくさん含んだ血液が脳に送られるため、集中力がアップします。眠気防止になり、仕事の効率も上がって一石二鳥です。
本書では、今回ご紹介したストレッチのほか、痛みのある部位別など32種類を紹介していますが、まずは1日3分から始めてみてください。大切なのは、毎日継続することです。
(文=福辻鋭記/鍼灸師、アスカ鍼灸治療院院長)
●福辻 鋭記(ふくつじ・としき)
アスカ鍼灸治療院院長。日中治療医学研究会員。日本東方医学会会員。1944年奈良県生まれ。日本大学芸術学部卒後、東洋鍼灸専門学校に学び鍼灸師となる。東洋医学と美容を融合した「美容鍼灸」の第一人者。『寝るだけ! 骨盤枕ダイエット』(学研)は、世界一簡単なダイエットとして話題になり400万部超ベストセラーに。