11月13日の東京株式市場で第2地銀の福島銀行(福島県福島市)の株価は一時、年初来高値の470円をつけた。8月30日の年初来安値179円の2.6倍だ。
9月6日にSBIHDと提携を発表した島根銀行は2日間で一時39.6%高となったが、それを上回る急騰ぶりだ。11月12日は島根銀行もツレ高となり、一時、15.0%高の814円に上昇した。こちらも年初来高値である。
福島県を地盤とする福島銀行は11日、第三者割当増資を実施し、SBIHDから11億円の出資を受けると発表した。出資後、SBIグループは議決権ベースで福島銀株の19.25%を保有する筆頭株主となり、役員を派遣する。持ち分法適用会社にはしない。福島銀行は18年3月期に7年ぶりに赤字となり、同年6月、金融庁から業務改善命令を受け経営改善を急いでいた。
福島県には3つの地銀・第2地銀があり、地銀再編のカードのひとつと見なされてきた。
SBIHDと資本・業務提携した福島銀行は11月14日、プロスペクトの保有比率は18.42%から9.02%に低下したと発表した。株価が高騰したため売り抜けたようだ。
第4のメガバンク構想に「地銀10行程度から打診」SBIHDの北尾吉孝社長最高経営責任者(CEO)は「地域金融機関と『第4のメガバンク構想』を実現していく」とぶち上げた。同社が提案する「第4のメガバンク構想」は、同社が過半を出資して持ち株会社を設立し、大手銀行や有力な地方銀行、ベンチャーキャピタルに出資を募る。SBIHDは支援先の地銀にシステムなどのインフラや資産運用商品・サービスを提供したり、人材育成を支援したりする。
その第1弾が9月6日に発表した島根銀行との資本・業務提携。島根銀行の第三者割当増資分25億円をSBIHDが引き受け、グループ全体の出資比率を34%とした。第2弾が、福島銀行への11億円出資だった。
上場する78の地銀・グループの19年3月期の連結純利益は計860億円で前の期より11%減り、3期連続で最終減益だった。単独で生き残りが難しいとされる地銀は少なくない。SBIHDによる「第4のメガバンク構想」は、今後の地銀再編に多大な影響を及ぼす。北尾CEOは「地銀10行ぐらいから(打診が来ている)」という。一方で、「苦しくなった地銀の駆け込み寺だ」(有力地銀の頭取)といった冷ややかな見方もある。
金融当局が地銀の再編を働きかけるのには限界がある。金融庁はSBIHDの積極的な関与に期待する。具体的には、公的資金の間接的な注入窓口をつくるということだ。SBIHDが設置する持ち株会社が公的資金を申請すれば、地銀は持ち株会社から資本を入れることができる。ワンクッション置くことで地銀側のアレルギーは減る。
金融界が注視しているのが、経営再建途上にあるスルガ銀行だ。SBIHDはかねてからスルガ銀行への支援に意欲を示してきた。最大のネックとなっていた創業家がファミリー企業経由で保有していた株式(13%強)を、家電量販大手のノジマが取得した。ノジマはすでに5%弱の同行株を持つ大株主で、保有比率は18%強になった。
筆頭株主の創業家との関係が解消され、今後、シェアハウス問題の解決の道筋が見えてくれば、SBIHDのスルガ銀への出資が現実味を増す。
(文=編集部)