安倍晋三政権を揺るがす大スクープとなった「桜を見る会」の税金私物化問題だが、安倍首相本人が2日の参議院本会議で一連の問題について答弁したことで、自民党はこのまま幕引きを図る構えだ。
「そもそも永田町では、桜を見る会の問題は驚くほど話題に上がっていません。
「桜を見る会」には、マルチ商法を展開した末に経営破綻したジャパンライフの元会長や反社会勢力の参加も取り沙汰されており、野党議員らによる追及が連日行われている。さらに「桜を見る会」の前夜祭では、安倍事務所の後援会員たちを格安で“接待”していた疑惑も浮上しているが、それでも自民党内は特別問題視していないという。前出の議員が続ける。
「安倍首相が参加者を把握していたとは考えにくいというのが最大の理由です。野党議員ですら簡単に参加することができた同会では、いわゆる会に適さない人間が紛れこんでも、内閣府も物理的に精査することは難しい。そういったセキュリテイ面の問題は、長期政権ゆえの怠慢ともいえますが、首相の首を取れるようなネタではないでしょう。むしろ、前夜祭に関しては、収支が政治資金収支報告書に一切記載されていないことが公職選挙法違反に触れる可能性がありますが、その点を追及できるメディアは限られてきます。
そういった流れからも、党内では“通常運転”といった感じで、対応に追われているという雰囲気はありません。
メディアや野党は「桜を見る会」の招待者名簿の提出を求めたが、内閣府が国会に提出した名簿は、ほとんどが黒塗りにされているという状況だ。さらに、ジャパンライフ元会長が首相名の招待状を宣伝に使っていたとの指摘に対して、安倍首相は他人事のように「桜を見る会が企業や個人の違法、不当な活動に利用されることは決して容認できない」と説明している。証拠隠滅疑惑に対して「資料を破棄したからわからない」と繰り返す様は、常軌を逸した事態ともいえるほど異様だが、それでも自民党内に余裕ともとれる雰囲気が漂うのはなぜなのか。
「今回の一連の騒動に対して、内閣府への取材を試みても煙たがってまともに取り合ってくれません。それは自民党内にしてもしかりです。野党側が予算委員会の集中審議開催を迫りましたが、与党は応じませんでした。つまり、各社の取材方法や焦点はかなり限定的になっています。その背景にあるのは、来年の解散・総選挙でしょう。現状、1月の解散の可能性すらあり得ます。
『桜を見る会』をめぐる騒動で安倍政権の支持率は低下していますが、それでも選挙が行われた場合、間違いなく自民党の圧勝でしょう。
今後も野党による追及は続くとみられるが、決定打となる証拠が出てくる可能性はあるのだろうか。共産党関係者は、こう説明する。
「今後の焦点は、どのような経緯で資料を廃棄したのか、前夜祭の後援会招待に違法性はなかったのか、ジャパンライフ元会長と安倍首相の関係性はあったのか、といったことになっていきます。ただ、現状で安倍首相の発言を覆すだけの証拠や証言は集まっていません。このまま閉会して来年の解散となると、再び安倍政権が続いていく可能性が高い。そうならないためにも、野党が協力して徹底的に安倍首相の責任を問う必要性があるでしょう」
2017年に発覚した森友・加計学園問題の際には、9月に解散へと舵を切り、延命を図った安倍政権。現政権の思惑通り、歴史は繰り返されるのだろうか。
(文=編集部)