日産自動車は20日、俳優の木村拓哉が同社の新ブランドアンバサダーに就任したことを発表した。低迷する日産の復活を目指し、今後の躍進に向けた決起大会ともいえる社内イベントで、オンラインで全国各地の拠点をつないでミーティングを行った。

そのなかで木村は同社社員に向けて、こうメッセージを寄せた。

「クルマ、技術、特に自動運転技術の進歩に本当に驚かされました。みなさんが熱意を持ってこだわり抜いていることが伝わってまいりました」

「CMでは、そんなみなさんの、どんな逆境だって乗り越えていくという熱い気持ちをメッセージに込めさせていただきました」

「みんなで一緒に、新たな時代の幕開けを楽しみましょう。やっちゃえNISSAN」

 木村が出演するテレビCM第1弾「やっちゃえ NISSAN 幕開け篇」は、22日からオンエアされる。

 木村が日産のブランドアンバサダー就任が報じられると、インターネット上では「トヨタのCMにずっと出ていたのにライバル社に乗り換えるのか」と疑問視する声が飛び交った。木村は1994年発売のトヨタ自動車「RAV4」のCMに出演して以降、20年以上にわたってトヨタと蜜月関係にあった。その間、木村が2度のスピード違反などで免許停止処分を受けたことが明らかになり一時的にCMへの出演が見合わせられたが、のちに復帰。2017年4月までトヨタのCMに出続けた。

 そのため、「いくら契約が終了しているとはいえ、長年CMに出続けたトヨタを裏切るのはどうかと思う」といった批判の声が渦巻いている。また、日産に対しても、「あえてキムタク使う意味がわからない」「新たな時代を強調しているのに、キムタクが適任とは思えない」と疑問視する声が多い。さらに、「違反で免停食らったり、追突事故起こしたりした人物をクルマのCMに起用するほうも、引き受けるほうもおかしい」と双方の判断が不適切だと感じている人もいる。

 ほかにも、「矢沢永吉のほうがよかったのに、なぜキムタクにしたのか」「矢沢永吉の“やっちゃえ日産”のセリフがかっこよかった。

キムタクだと違和感」「どの層に向けたCMなのか。どの世代を対象にするにしても、永ちゃんのほうが断然良かった。日産の広報のセンスを疑うレベル」など、これまで日産のCMを担ってきたロック歌手・矢沢永吉のままがよかったという意見も多い。

 これには日産の社員からも不満の声が出ている。

「自社の製品には自身と誇りを持っていますが、キムタクをブランドアンバサダーに起用したことは非常にガッカリしています。表立っては言えないですが、社内でも別の人がよかったという意見が多いように思います。経営状態が悪いなか、消費者のイメージを向上させないといけないのに、キムタクで挽回できるとは思えません。また、契約料もかなり高額になるといわれているので、それも懸念材料です。意外とテレビCMは販売台数に直結するので、これが悪い方向に影響しないように願います」

 木村のアンバサダー就任については反対意見も多いようだが、それだけ注目度が高いことの表れともいえる。2020年3月期の6712億円の赤字に続き、21年月期も6700億円ほどの赤字が見込まれている日産だが、木村が起爆剤となって経営再建を進めることができるのだろうか。

(文=編集部)

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