10日、Go To イートの食事券を販売する東京事務局は、その販売方法を急きょ変更すると発表した。大きく変わった点は、すべて先着順だったものが、一部を除いて抽選方式にすることだ。
東京の場合、300万セット販売される紙の食事券は、事前申し込みが必要で、その方法は「スマホ等の端末携帯」か「専用葉書」であることに変わりはない。今までは、いずれも先着順だったが、専用葉書の場合は抽選方式に変更された。
先着順が抽選になったからといって、攻略法に変更はない。どこの配布場所に、いつ何枚配布されるのか、何日間にわたって配布されるのかは未定のままだが、抽選方式になったということは、配布枚数は当然多くなるはずだ。
例えば、販売枚数の300万セットのうち、専用葉書の当選分が半分の150万セットとすると、配布枚数がその数倍では足りないだろう。少なくとも数十倍(1500万枚以上)か、それ以上の申込葉書を配布しなければ、抽選にした意味がない。
抽選にするということは、不公平感をなくすことであり「抽選葉書すら手に入れることができなかった」となれば、消費者の不満は爆発するかもしれない。配布枚数が多くなるということは、行列が長くなるということだ。
しかも、応募葉書は到着次第順次抽選するという。それは、何日分かをまとめて抽選するのか、毎日抽選するのかはわからないが、応募葉書を送るのが遅くなれば、抽選が終了している可能性もある。
さらに、筆者が事務局に問合せて確認したのだが、驚愕する事実がわかった。先着順のスマホも抽選の専用葉書も、たとえ引換券を獲得したとしても、それは単に「購入する権利を得ることができただけで、購入できるとは限らない」というのだ。なぜかというと、販売所で販売される食事券の枚数は決まっている(枚数は現在は非公表)ので、販売所に並んで購入しようとしても、予定していた枚数が販売されれば、その販売所での販売は終了するという。
スマホの場合、11月19日から申込がスタートする。先着順なので抽選はないが、運よくサイトにつながって引換券を獲得できたとしても、翌日、販売所で食事券を購入しようとしても、その販売所での販売枚数がなくなれば、購入することができない。どの販売所も長蛇の行列ができる可能性があるので、購入できなかったからといって他の販売所に向かっても、その販売所でも売り切れている可能性が高い。つまり、引換券を獲得しても購入できるとは限らないということだ。
一方、専用葉書の場合は抽選になる。当選葉書(引換券)は、応募後1~2週間後に届く。それから販売所に出向いて購入することになる。
他の都府県の場合は、引換券(引換票番号)さえ手に入れれば、期限内に購入すればよいのだが、東京の場合は「引換券はあくまで購入する権利を得たにすぎない」ので、結局「早い者勝ち」になる。
これは大問題である。11月20日過ぎから、食事券を求めて消費者は「一刻も早く販売所に出向かなければならず」、そこで購入できないとなれば、購入できる販売所を探すのに「右往左往しなければならない」のだ。
デジタル食事券もどうなるかわからないデジタルの食事券も抽選方式に変わったが、攻略法に変化はない。抽選方式なので、先着順よりは慌てて申込む必要はないように思えるが、当然、申込は殺到するので、決められた申込件数内(あるいは時間内)にサイトにつながらなければ、抽選される資格さえ得ることができない。抽選に変わっても、いかにサイトにつながるかが勝負だ。できるだけ多くの端末で、チャレンジする体制を整えるしかない。
デジタルの食事券は、125万セットがすべて抽選になった。第1次の抽選は、今月20日~24日の予定。その後、何回申込抽選が行われるかは未定なので、第1次からすべて申込んだほうが良い。
デジタル食事券も抽選なので、当選しても「購入する権利を得た」だけにすぎない。ただし、販売数は125万セットと決まっているので、それ以上当選メールを送ることはないはずだ。念のため、当選メールが届いたらすぐに購入したほうが良いだろう。いずれにしても、1回2セット申込めるので、当選者は62万5000人より少し多い程度だろう。考えられない倍率になる可能性がある。
多数のクレーム発生の懸念もそれにしても大胆な変更をするものだ。なぜ変更しなければならなかったかというと、先行してウェブ申込での販売が実施された大阪、京都、兵庫、愛知等では、希望者が殺到して「サイトがつながらなかった」「不公平だ」「ウェブは使えない」というクレームが非常に多かった。そこで、京都と愛知、兵庫では、不公平感をなくすために、ウェブも葉書も最終販売時には、先着順から抽選に変更せざるを得なかったのだ。
東京も、同じように、いやそれ以上にクレームが多くなる可能性が高いので、最初から抽選方式を取り入れたようだ。
さらに、2~3日でできるとは思えないが、偽造応募葉書を見分けることはできるのだろうか。食事券そのものの偽造は見分けることはある程度可能だが、葉書はできるのだろうか。
そもそも、当初予定したよりも数倍の葉書を用意しなければならなくなった。今、ファミリーマートでは、紙の食事券の紙が用意できていないために、食事券が発行できないという状況に陥っている。予定していた枚数さえ用意できていない事務局が多数あるのに、急きょ抽選にした東京の事務局は、配布期日までに、いったい何百万枚の葉書が用意できるのだろう。
サイトにしても、先着順であれば、その時点で終了ということになるが、抽選にする場合、1日当たりどれだけの件数を受け付けることができるのだろう。急きょ抽選にしたために、かえって準備不足で大混乱にならないか心配だ。
一方、飲食店にしても、利用開始日の11月20日からは、食事券の利用客が殺到すると期待していたのではないだろうか。ところが、実際の利用開始日が遅くなる可能性が出てきた。紙の食事券の応募開始は19日、デジタルの食事券は20日から申込受付開始に変更はない。しかし、抽選をするにはそれなりの時間がかかる。しかも、数回に分けての申込になる。果たして、食事券はいつから利用できるのだろうか。遅くなればなるほど、11月末から12月の売上に期待していた飲食店は当てが外れた格好になる。
筆者も今まで何度も指摘してきたが、そもそも販売枚数が少ない食事券だ。特に大都会になればなるほど需要は高い。最初から、もっと慎重に検討すべきだったが、今さら遅い。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

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