12月4日金曜朝、大ヒットマンガ『鬼滅の刃』の最終巻23巻の発売に際して、大手全国紙5紙に新聞広告が掲載され、大きな話題を呼んだ。
舞台となったのは、同日朝に発売された朝日新聞、読売新聞、産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞の各朝刊。
当然のごとく鬼滅ファンは素早く反応し、4日午前にはコンビニ等での“新聞売り切れ”なども報道され、ちょっとした騒動に。この流れに乗じ、メルカリなどのフリマサイト、ヤフオクなどのオークションサイトでは、それらの新聞が数多く出品される事態となった。
5紙の店頭での販売価格は日経新聞が180円、産経新聞が120円、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞がそれぞれ150円(いずれも税込価格)の計750円であるのに対して、これら全5紙の広告を“コンプリート”したものの出品価格は3000円前後がほとんど。単純計算で、正規価格の4倍となるプレミアが付いている状態となっている。
禰豆子×善逸、炭治郎×カナヲ、不死川兄弟のカップリングに悶絶するファン多数4日当日のSNSでは、「朝、速攻で買いにいってコンプした」「アイロンかけた後、額に入れて飾った」などの入手報告や、「鬼滅の広告、素晴らしすぎる」「宝物にしたい」など、絶賛の声が殺到した。それぞれの広告に対する「ファンのアツい思い」をネット上から拾ってみよう。
【各紙共通部分】
・12月3日木曜夕刊の全面広告
黒ベタ塗りに白い吹き出しのみで、「永遠というのは人の想いだ」「人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ」(産屋敷耀哉【うぶやしき・かがや】のセリフ)
・12月4日金曜朝刊の全面広告・作者メッセージ
大きな文字で「夜は明ける。想いは不滅。」の言葉と共に、「応援してくださった皆さま、本当にありがとうございます。」から始まる作者・吾峠呼世晴氏からのメッセージ。
・12月4日金曜朝刊の全面広告・各キャラクター共通部分
「夜は明ける。想いは不滅。」「鬼滅の刃、一億冊突破。」の文字
5紙共通で載せられた吾峠呼世晴氏のメッセージについては、「先生の人柄に触れて泣けてしまう」「こちらこそ、素敵な作品をありがとうございました」と、ファンから吾峠氏に対するねぎらいや感謝の声が多く上がる事態に。
【朝日新聞】
・時透無一郎(ときとう・むいちろう)
「僕は幸せになる為に 生まれてきたんだ」
・竈門禰豆子(かまど・ねずこ)
「大切なのは “今”なんだよ」
・我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)
「俺は自分が信じたいと思う人を いつも信じた」
朝日新聞の広告については、主人公・竈門炭治郎の妹である竈門禰豆子へのコメントが殺到。「禰豆子ちゃんかわいすぎる」という声のほか、作中で鬼と化した後、口に竹の口かせを付けられているというキャラ特徴から「セリフが『ムームー』とかじゃなくてよかった」という声も上がっている。また、禰豆子に一目惚れをした我妻善逸ではなく、時透無一郎と禰豆子が見開きで掲載されていることについて、「そこは善逸と禰豆子を並べてあげてよ」「隣に来れない善逸ドンマイ」などの意見も見られた。
【読売新聞】
・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)
「人は心が原動力だから 心はどこまでも強くなれる!!」
・栗花落カナヲ(つゆり・かなを)
「一人じゃ無理だったけど 仲間が来てくれた」
・悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい)
「誰が何と言おうと 私は君を認める」
読売新聞は世界最大の発行部数を誇るがゆえ?、主人公・竈門炭治郎の広告を堂々掲載。「読売取っててよかった」「炭治郎の笑顔、心にくる」などの声が見られた。また、炭治郎に好意を寄せている栗花落カナヲも掲載されているため、「このカップルが載ってるのは最高」「炭治郎のセリフ、カナヲに言った言葉だよね? わかってるなあ」と、セリフやキャラクターの組み合わせに感心するという声も上がっている。
【産経新聞】
・不死川実弥(しなずがわ・さねみ)
「テメェは本当に どうしようもねぇ弟だぜぇ」
・不死川玄弥(しなずがわ・げんや)
「兄ちゃんが俺を守ろうとしてくれたように 俺も兄ちゃんを守りたかった」
・嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)
「俺は動き出す 猪突猛進をこの胸に!!」
産経新聞では、ファンの間で炭治郎・禰豆子兄妹との対比がしばしば語られる実弥・玄弥の不死川兄弟を見開きで掲載。これについて、「不死川兄弟の見開き広告、尊すぎるでしょ」「これだけで映画が作れそう」などの声が上がっている。また、「猪突猛進」が口癖の嘴平伊之助とこの兄弟との3人セットであったことから、「産経の鬼滅広告、めちゃくちゃワイルドだな……」との声も。
【毎日新聞】
・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)
「もう二度と目の前で 家族や仲間を死なせない」
・宇髄天元(うずい・てんげん)
「恥じるな 生きてる奴が勝ちなんだ」
・胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)
「きっと君なら できますから」
今回の広告で最も反響があったのは、毎日新聞に掲載された胡蝶しのぶの広告だろう。「メチャクチャいい笑顔だけど、原作読んでると笑っちゃう」「しのぶの広告、これは…(笑)」と、多くの反応が寄せられることとなった。
【日本経済新聞】
・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)
「俺は信じる 君たちを信じる」
・伊黒小芭内(いぐろ・おばない)
「今度は必ず君に 好きだと伝える」
・甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)
「また人間に生まれ変われたら 私のことお嫁さんにしてくれる?」
日経新聞では、原作で恋仲となっていた“おばみつ”こと伊黒小芭内、甘露寺蜜璃の2人を見開きで掲載。「日経新聞、“おばみつ”が見開きで載ってるなんて、どうやったって泣いちゃう」と、こちらも掲載されたキャラクターのカップリングの妙について絶賛の声が上がるなど、ツボを突いた広告をファンは全力で楽しんだことがうかがえる。
少なくとも数億円の巨費を投じた、今回の「鬼滅の刃広告」の掲載料広告枠の総合サービスサイト「広告ダイレクト」によれば、こうした全国紙の全面広告の掲載料金は、5紙のうち最も安価な産経新聞で1395万円、最も高額の読売新聞で4791万円だという(あくまでも正規の価格)。となれば『鬼滅の刃』発行元の集英社は、少なく見積もっても数億円の巨費を今回の「鬼滅の刃広告」に投じたこととなろう。
10月16日に公開され、現在も公開中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」も、12月7日に発表された最新データでは興行収入288億円超、観客動員数2100万人超となり、絶好調との報が続いている。
この好調が背景にあれば、集英社にとって今回の億を超える広告費など、“安い買い物”だったのかもしれない。
(文=編集部)