2020年末の嵐の活動休止まで、残すところあとわずか。嵐メンバーの5人は、1999年11月のCDデビューからの21年間、私たちの胸を打つ歌やパフォーマンスを届け、またバラエティ番組では私たちを大いに笑わせてくれもした。
そんな嵐メンバーへ感謝と敬意を込めて、それぞれの俳優としての活動を振り返っていきたい。今回は二宮和也編だ。
「僕は俳優じゃないんです。5人でグループをやってる日本のアイドルなんですよ」2006年の映画『硫黄島からの手紙』でジャニーズ初のハリウッドデビューを果たしたこともあり、演技派としてのイメージが強い二宮和也。劇中で彼が演じた元パン屋の陸軍一等兵・西郷昇からは戦争への絶望と覚悟、そして生きることへの希望など、強いメッセージ性が感じられた。同映画は第79回アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚本賞・音響編集賞にノミネートされ、音響編集賞を受賞している。
『硫黄島からの手紙』に出演した当時、二宮は23歳。若くして偉業を成し遂げた場合、人によっては天狗になってしまう可能性もあるが、二宮にそうした傾向はなく、あくまでも“嵐の二宮和也”というスタンスを崩さなかった。
2019年9月28日放送の『嵐にしやがれ 超メモリアル!丸ごと嵐!秋の怒涛の3時間SP』(日本テレビ系)にゲスト出演したジャニーズ俳優・風間俊介は、二宮が同映画の記者会見で、外国人記者に対して「僕は俳優じゃないんです。5人でグループをやってる日本のアイドルなんですよ」と説明していたと明かしている。二宮は「ソロの仕事は5人に還元してなんぼ」という考えを持っており、ジャニーズ事務所にも「5人に還元できないことはやりません」と伝えているという。
二宮は、ジャニーズJr.時代から俳優としてさまざまな作品に出演している。1998年10月クールの『あきまへんで!』(TBS系)では、どこか冷めた秀才の高校生役に抜擢。さらに、1999年4月クールの『あぶない放課後』(テレビ朝日系)では、当時ジャニーズJr.だった渋谷すばるとW主演。同時期には『8時だJ』(同)が放送されており、「ジャニーズJr.黄金期」などと呼ばれていた時代だった。
また、2007年7月クールの『山田太郎ものがたり』(TBS系)は、櫻井翔とのW主演。共に名門私立高校に通いつつも、実は極貧の山田太郎(二宮)と、裕福な家庭に生まれた御村託也(櫻井)という、真逆のキャラクターを演じた。ファンの間で櫻井のイニシャル「S」と二宮のイニシャル「N」を磁石のS極とN極に例え“磁石コンビ”と呼ばれるこの2人にピッタリな配役だが、同作は基本的に平和でポジティブなストーリーであることとも相まって、彼らの間に漂うほんわかした空気感に癒されたものだった。
『母と暮せば』で吉永小百合と共に表現してみせた、親子愛を超えた“何か”前出の『硫黄島からの手紙』もそうだったが、二宮は、戦中戦後を懸命に生きたキャラクターを演じることに長けている。2015年の映画『母と暮せば』では、原爆投下後の長崎を舞台に、被爆死したものの亡霊となって母親のもとに現れる医学生・福原浩二を演じた。
この『母と暮せば』では、浩二と吉永小百合演じる母親・伸子の長崎弁での会話シーンが頻出する。明るく口が達者な浩二の様子からは、原爆によって自分でもわけがわからぬまま、一瞬にして命を奪われた彼が、亡霊という立場ではあれど母親に会えてどんなにうれしかったかが、ひしひしと伝わってくる。
そんな浩二は一方で、伸子との会話を重ねるうち、徐々に自身の死を受け入れていく。彼の一挙手一投足から、迷いや無念、決意などさまざまな想いが垣間見える。しかし、浩二が死を受け入れるということは、同時に親子に残された時間があとわずかであることを示唆し、そのことを理解した鑑賞者は、涙なしには見ていられなくなる。浩二と伸子の間にあるものは確かに親子愛なのだろうが、そうした言葉だけでは表現しきれない、深い切なさもにじみ出ている。
めんどくさがりな性格と、俳優としての圧倒的な才能、そのギャップがファンの心をつかむ二宮がパーソナリティを務めるラジオ番組『BAY STORM』(bayFM)の2019年5月26日放送回では、「練習が大嫌い」だと明かし、「ドラマとか、もういらないもん、テストとか。もう本番だけでいいっていつも思ってる」「踊る前に準備体操もしないし、コンサートの前にストレッチとかもしないし。本番一発で出た感じで『ぶつかりたい』と思ってるわけ」と持論を展開していた二宮。
ゲーマーで出不精、めんどくさがりな性格と自称する二宮らしいエピソードではあるが、これまで述べてきたように、俳優としての彼は、役柄のわずかな心の機微をごくごく自然に表現してみせる。そんなギャップが、ファンの心をつかんで離さない理由なのかもしれない。
(文=編集部)