現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の主演を務めている杉咲花。同ドラマでは、松竹新喜劇の創設メンバーとして活躍した上方女優・浪花千栄子をモデルとした主人公・竹井千代を演じているが、ナチュラルな関西弁と熱量の高い演技で視聴者を魅了している。

 杉咲はもともと、子役として芸能界デビューを果たしている。子役時代は本名でスターダストプロモーションに所属していたが、志田未来に憧れて、志田の所属事務所・研音に移籍したことをきっかけに“杉咲花”に改名。ちなみに彼女の父親は、元レベッカでギタリストの木暮武彦、母親は歌手のチエ・カジウラ。両親は杉咲が幼少の頃に離婚しているが、彼女の豊かな感性や独特の存在感は両親譲りともいえるだろう。

 彼女の顔がお茶の間に知れ渡ったきっかけのひとつに、2011年に山口智充と共演した「Cook Do 回鍋肉」のCMがある。回鍋肉をおいしそうに頬張る杉咲が印象的で、見る者の食欲をこれでもかと刺激するCMであった。その効果なのか、杉咲の出演CM放送後である2011年度の同商品の売り上げは過去最高だったという。

「監督にすごく泣かされたのに、なぜか楽しくて」という熱い女優魂

「Cook Do 回鍋肉」のCMでは健康的で明るい印象を世間に与えていた杉咲だが、ドラマではシリアスな役柄を演じることも多い。2013年1月クールの『夜行観覧車』(TBS系)では、いじめに悩んで母親に暴力をふるう女子中学生を、2016年の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』でも、いじめられっ子の女子中学生を演じている。いじめられっ子役は、怒りや悲しみの表現がカギとなるが、杉咲は役柄が抱えている負の感情を的確につかんで表現。いじめられることによる悲しさはもちろん、いじめられることを第三者に知られる情けなさや恥ずかしさまで感じられるような器用な演技に、見ている側はすんなり感情移入してしまう。

 2015年の映画『トイレのピエタ』では、1年にも及ぶオーディションに参加してヒロイン役を勝ち取った杉咲。

彼女は「ORICON NEWS」のインタビューで、オーディション参加時について振り返っているが、厳しい演技指導にさえ喜びを見出すという、確固たる女優魂が感じられる。

「オーディションのときは、監督がすごく怖かったんです。『そんな芝居は俺でもできる』『やる気がないなら帰れ!』とか言われて、泣かされて。そういうオーディションも初めてでした(笑)。でもすごく泣かされたのに、なぜか楽しくて! こんなに対等に向き合ってくださった監督は初めてで、それがうれしかったんだと思うんですけど、楽しかったんですよね」(「ORICON NEWS」2015年6月7日配信分より)

いつの日か妖艶でセクシーな演技を見せてくれることもあるか

 子役を経て、10代から演技派として評価されていた杉咲だが、連続ドラマ初主演は意外にも20歳の時の作品で、2018年4月クールの『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)だ。同ドラマは井上真央と松本潤が出演した人気ドラマ『花より男子』のスピンオフで、杉咲の相手役には King & Prince・平野紫耀が抜擢されていた。いわゆる学園モノのラブコメディで、演技の経験が少ないキャストたちが初々しい演技を見せるなか、場慣れしている杉咲がいろんな意味で目立っているようにも感じられた。決してラブコメディが苦手というわけではないだろうが、彼女はヒューマンドラマのなかでより際立つ存在なのか。

 とはいえ、杉咲はまだ23歳。今後年齢を重ねて、さまざまな経験をしていくことで、どんどん演技の幅を広げていくことができるだろう。今はまだ少女感を残している彼女だが、いつの日か妖艶でセクシーな演技を見せてくれることもあるかもしれない。

(文=編集部)

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