毎年大みそか恒例の音楽番組『NHK紅白歌合戦』が先月31日に放送され、第2部の平均世帯視聴率が35.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となったことが発表され、2部制が始まって以降の歴代最低となった前年(34.3%)より1.0ポイントのアップにとどまった(第1部は前年より0.3%ダウンの31.2%)。

「NHKは2年連続の歴代最低更新を回避すべく目玉企画も多数詰め込み、裏の民放番組も弱いということもあり、大幅な視聴率回復も期待されたが、NHK的には予想外の低調という結果だろう。

日本人の『紅白』離れが鮮明になりつつある」(テレビ局関係者)

 今回の『紅白』は特別企画として、X JAPANのYOSHIKIらが結成したバンド・THE LAST ROCKSTARSや、桑田佳祐が佐野元春、世良公則、Char、野口五郎と結成したバンド(曲目は「時代遅れのRock’n’Roll Band」)、松任谷由実が出場したほか、安全地帯も37年ぶりの出場を果たした。

 このほか、日本ハムの球団公式チアチーム「ファイターズガール」が話題の「きつねダンス」で山内惠介、日向坂46とコラボする企画や、坂本冬美と東京スカパラダイスオーケストラの共演、恒例となった三山ひろしの「けん玉世界記録挑戦」、氷川きよしの「限界突破×サバイバー」、純烈とダチョウ倶楽部、有吉弘行の共演なども注目されていた。

「冒頭から数曲の間、司会の大泉洋や橋本環奈がハイテンションで大声を出し、ステージ上には出場歌手たちが勢ぞろいしてペンライトを振って盛り上げようとしていたが、空回り感が否めなかった。4組目の郷ひろみのパフォーマンスでは、なぜか大勢の女子高生の制服を着たダンサーやお笑いコンビのテツandトモ、ダンディ坂野、スギちゃんが一瞬登場したり、2組目の天童よしみの歌唱時には『なかやまきんに君』とティモンディの高岸宏行がずっと体操を続けたりと、お祭り感を出そうとしていたが、統一感がなくごちゃごちゃし過ぎて、何をしたいのかよくわからないと感じた視聴者も多かったのではないか。また、悪趣味だと受け止める視聴者もいたのでは」(テレビ局関係者)

 視聴率がダウンした原因について、別のテレビ局関係者はいう。

「目玉とされたTHE LAST ROCKSTARSや工藤静香、安全地帯もいまいち盛り上がりに欠け、氷川きよしの『限界突破×サバイバー』や松任谷由実の登場もここ数年の定番となっておりマンネリ感があった。歌唱中に他のアーティストが応援で登場しコラボするなどして豪華さを演出しようとしていたが、ステージ上にやたらと人が多い場面が多く、見ている側が消化しきれないままどんどん進行していき、冷めた気分になってしまう。司会に加えて歌やダンスも披露しフル稼働だった橋本環奈の天才ぶりだけが印象に残った『紅白』だった。

 また、例年のことだが、相変わらず登場順的に演歌歌手とアイドルグループを交互に並べて年齢が離れた視聴者層をつなぎとめようとしていたが、視聴者を軽視しているともいえ、結局どの年齢層にも刺さらない結果となった。40代の視聴者でも、出場者のうち半分以上の歌手を知らないという人は多く、すべての年代をターゲットとした『紅白』のコンセプトそのものが限界を迎えている」

 民放各局の裏番組では、大みそか夜の視聴率争いで鉄板の強さを誇った『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけない』シリーズ(日本テレビ系)が2年連続での放送見合わせとなるなか、『ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会』(テレビ朝日系)の平均世帯視聴率第1部が11.2%、第2部が10.0%となり、2年連続の民放トップとなった。

「ゲームやネット配信など他の娯楽ツールの利用シーンが増えているとはいえ、それでも日本人の間には『大みそか夜は地上波のテレビを見る』という習慣がいまだに根強い。一方、近年では60代以上でも『紅白』は見ないという人も増えており、このまま『紅白』離れが進行すれば、民放番組に視聴率で逆転される日がそう遠くないうちに来る可能性もある。

 NHK的には『30%超えキープ』というのが1つの目標として掲げられているといわれており、それはクリアできたものの、2年連続で過去最低水準となってしまい、次の『紅白』では根底から方針やコンセプトを見直す必要に迫られるかもしれない」

(文=Business Journal編集部)

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