
準大手ゼネコンのインフロニア・ホールディングス<5076>は、同じくゼネコン準大手の三井住友建設<1821>をTOB(株式公開買い付け)で子会社化する。
2025年7月上旬に公開買付けを開始し、2026年1月ごろに三井住友建設をグループ内に取り込む予定だ。
実現すれば両社合わせた売上高が1兆円を超え、規模面で竹中工務店などの大手ゼネコンに近づく。インフロニアは経営統合によって何を目指すのだろうか。
M&Aを活用し提案型のモノづくりに転換
インフロニアは三井住友建設の子会社化によって見込まれるシナジーとして最初に上げているのが、三井住友建設が持つエンジニアリング力(設計、計画から施工管理までを効率的で安全に進める能力)によって、インフロニアが目指している「総合インフラサービス企業」に大きく近づくという点だ。
総合インフラサービス企業とは、道路や水道、空港、港湾、公共施設、スポーツ施設などを対象に、案件の組成や企画開発などの上流から、運営、更新などの下流までのすべての領域で事業を展開する企業のことで、従来の請負型のビジネスから事業主⽬線での提案型のモノづくりに転換することを意味する。
インフロニアは建設を軸に、上流領域と下流領域に事業範囲を拡大することで、総合インフラサービス企業を実現する計画で、このためにM&Aを積極的に活用し、上流領域、下流領域の企業を取り込む方針を打ち出していた。今回の三井住友建設の子会社化はこうした戦略に沿った取り組みなのだ。
建設業界は人手不足や資材価格の高止まりなど厳しい環境下にある。他方、道路や水道などの⽼朽化が社会問題として顕在化しており、インフラを再構築する需要が見込める。
インフロニアでは、防災や国防、カーボンニュートラルなどに関わる公共投資額は堅調に推移し、道路の補修量も徐々に増加すると予測する。
同社では建設業界を取り巻く厳しい環境とインフラの維持管理需要が拡大する状況を踏まえ、総合インフラサービス企業へのシフトと並行して、DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)戦略や技術開発、ガバナンス体制の強化、人材育成などを三井住友建設と共同で推進するとともに、三井住友建設が持つアジアを中心とした実績やネットワークを活用し、インフロニアグループとして海外展開の推進にも取り組む計画だ。
インフロニア傘下入りで早期の業績回復を
一方の三井住友建設は、1887年に和歌山県で創業した企業を前身とする三井建設と、1876年に愛媛県新居浜市の別子銅山で創立した組織を前身とする住友建設が2003年に合併して誕生した企業で、プレストレストコンクリート(事前に圧力を加えて構造を強化したコンクリート)技術に強みを持ち、橋梁や超高層マンションなどで多くの施工実績がある。
同社は国内大型建築工事での損失計上により、2022年3月期に70億円を超える当期赤字に陥り、2023年3月期はさらに大きな257億円ほどの当期赤字を余儀なくされた。
2024年3月期は40億円ほどの当期黒字に転換したものの、2025年3月期は売上高4629億8200万円(前年度比3.4%減)に対し、当期利益は8億5500万円(同78.6%減)と厳しい状況が続いている。
インフロニアは前田建設工業、前田道路、前田製作所の3社が2021年に経営統合し持ち株会社として誕生した企業で、現在は建築(集合住宅や工場、物流施設など)、土木(橋梁やトンネルなど)、舗装(道路舗装やアスファルト合材の販売など)、機械(建設機械の製造や販売など)、インフラ運営(再生可能エネルギー事業など)を主な事業の柱としている。
2025年3月期は売上高8475億4800万円(前年度比6.8%増)、営業利益471億4800万円(同7.7%減)、当期利益324億1600万円(同0.5%減)だった。
三井住友建設はインフロニアの傘下に入ることで、インフロニアが持つ再生可能エネルギー事業などの分野に参画できるようなるほか、人材や設備、技術などの経営資源を共有し効率化を進めることで、業績の早期回復につなげたい考えだ。
シティインデックスイレブンスはTOBに応募
三井住友建設については、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスやレノなどが共同で29%近くの三井住友建設株を保有している。
同グループは2021年11月に5.17%を新規保有し、その後買い増しを続けていた。
インフロニアは、シティインデックスイレブンスとの間で2025年5月13日に、公開買付応募契約を結び、シティインデックスイレブンスと共同保有者が所有する同社株式の全てをTOBに応募することで合意を得ているという。
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・インフロニア・ホールディングス<5076>、三井住友建設<1821>をTOBで子会社化
文:M&A Online記者 松本亮一
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