ハンバーガーチェーン大手のバーガーキングが、競合他社のマクドナルドの店内からしかはっきりと見えない大きな広告看板を、マクドナルド店舗の目の前に掲出。さらに看板には「すぐそこ→」と数軒先のバーガーキングの店舗場所を指し示す記述もあり、SNS上では「マクドナルドにケンカを売っている」「仲がいい」などと話題を呼んでいる。
全国に2960店舗(2月現在)を展開するハンバーガーチェーン最大手のマクドナルドに対し、バーガーキングは185店舗(同)と約17分の1の規模。店舗数ベースでみると、フレッシュネスバーガーやサブウェイと同程度の規模といえる。
バーガーキングの特徴といえるのが、肉感がガッツリとした直火焼きの100%ビーフパティだ。独自のブロイラーで焼かれ、「余分な油は除去され必要な肉汁は溜め込み、ジューシーでスモーキー」(バーガーキングのHPより)な仕上がりとなっており、その厚めのパティが根強いファンを獲得している。
また、他の競合チェーンと比べて割高な商品がラインナップされている点も特徴だ。たとえば、パティとオニオン、トマト、レタスをセサミバンズではさんだ代表的なメニュー「ワッパー」は単品で590円、これにドリンクとフレンチフライがついた「ワッパーセット」は890円、期間限定で販売中の「チーズ&チーズ ビッグマウス」は単品で1490円、セットは1790円と2000円に迫る価格となっている。また、「ワッパー」とは別に「バーガー」というカテゴリーもあり、「チーズバーガー」は280円、「フィッシュバーガー」は400円、「ダブルチーズバーガー」は460円となっている。
このほか、真っ黒なバンズにパティやビッグサイズのベーコンをはさんだ「黒 NINJA(KURO NINJA)」(2013年)など、ユニークなメニューをたびたび投入してニュースに取り上げられることも多い。
「『バーガーキングは高い』というイメージが強いが、たしかに『ワッパー』類は高価格だが、『バーガー』類はマクドナルドの類似商品と比べてもほぼ同等か少しだけ上というレベル。『フレンチフライ(S)』のようにマクドナルド(『マックフライポテト』Sサイズ)より安い商品もあり、広い価格レンジのメニューを揃えているという言い方が正しい。また、『チリチーズフライ』など他のチェーンでは少ないユニークなメニューもリピーターを獲得している」(外食チェーン関係者)
過去には「縦読み」広告もそんなバーガーキングだが、過去には攻めた広告が話題になったことも。20年に東京・秋葉原にあったマクドナルドの店舗が閉店するに際し、付近のバーガーキングは「私たちの2軒隣のマクドナルドさんが今日で最終日を迎えます」「どうかみなさん、勝手なお願いですが、今日は彼のところに行ってください」「スマイルを込めて、お疲れさまでした」と書かれたポスターを掲出。
そして今回、東京・渋谷センター街のマクドナルド店舗の目の前に「正面から大勝負!」と書かれたバーガーキングの看板が設置。この看板は、屋外で正面からみると全体が歪んで見えるのだが、マクドナルドの店舗内から見ると歪みが消えて明確に見える仕掛けになっているのだ。さらに看板には「すぐそこ→」と数軒先のバーガーキングの店舗場所を指し示す記述もあり、SNS上では以下のように話題になっている。
<なんでハンバーガーチェーンっていつもバチバチに喧嘩売るの?>(原文ママ、以下同)
<じゃれあっとるだけ>
<ペプシのコカ・コーラ挑発みたいなもんか>
<次はバーガーキング行こうかな って思わせれば勝ち>
<マックから客奪う方が効率いいんだろう>
<センスはある>
<でも普通マクドナルドで飯食ってて、またハンバーガー食べたいって思わない>
ネットマーケティング会社プロデューサーはいう。
「ペプシはたびたびコカ・コーラの商品を具体的に示して自社商品の優位性を訴求する広告を打つが、そうした事例とは違い、これまでのバーガーキングのマクドナルドをイジる広告はマクドナルドを貶める内容ではない。むしろ両者共に話題になることでマクドナルドの宣伝にもつながっているし、今回の渋谷の広告でいえば、消費者に『話題の看板を見るためにマクドナルドに行こう』という行動を誘発してさえいる。こうしたライバルの広告を許す懐の深さがあるということでマクドナルドの企業イメージ向上にもつながっており、広告戦略としてはうまい。マクドナルドとバーガーキングでは企業規模が違いすぎることから『シャレ』として許される面もあり、『弱者ゆえの戦略』ともいえる。具体的に両社の商品を挙げる比較広告にもなっていないのでトラブルに発展するとは考えにくい。
こうした他社の商品・サービスに触れる広告への許容度は、業界によってまちまち。
マクドナルドとバーガーキングには、これからも仲良くハンバーガー業界を盛り上げていってほしいものだ。
(文=Business Journal編集部)