初めて賃貸住宅を借りようという方には、ぜひ知っておいていただきたいのですが、入居を申し込んでも契約を断られることがあります。
初めて聞く方は意外に思われるかもしれませんが、入居の申し込みの後、申し込んだ人の審査を行います。
例えば、入居希望者の収入に対して家賃が高い(不相応)な場合や、万一家賃の支払いが滞ったときに肩代わりする連帯保証人がいないという場合は審査で「不合格」となります。ただし、連帯保証人の代わりに「保証会社」を利用できる場合は、保証会社の利用を条件に審査が行われます。
●入居審査の内容
さて今回は、そうした審査がどの程度まで踏み込んで行われているかをご紹介しましょう。
まず、申込書の中で最初に確認するのは年齢です。20歳未満では親権者である親の承諾が必要になるためです。ここからが今回のポイントですが、続いて勤務先と勤続年数、年収を確認します。
勤務先にその人が本当に所属しているか在籍確認の電話をかけたり、場合によってはその会社まで確認しに行くこともあります。実際にあった話ですが、申込書に記載されていた会社は存在せず、書いてあった会社の住所に行ってみたら、まったく違う会社だったケースや、勤務先として記載している会社をすでに退職していたケースなどもあります。
勤続年数については保険証などで確認し、年収は会社員であれば源泉徴収票で、会社経営者の場合は確定申告書の写しなどで確認します。
年収と家賃の関係については、年収300万円の方が家賃20万円の物件に申し込みをするような「明らかに支払いが困難」と見られる場合以外、「多分払えるだろう」という感覚的な部分で判断しています。
ただし、市区町村営、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)、住宅供給公社などの公的な賃貸住宅では、明確な収入基準が存在するので、それを満たさなければ入居審査で落ちてしまいます。
●連帯保証人の審査
次に審査対象となるのが、連帯保証人です。
連帯保証人についても、本人と同じように年齢や勤務先、年収などが審査の対象となりますが、まず大前提として「実際に連帯保証人を引き受けるか」という意思確認をいたします。
これも実際にあった話ですが、連帯保証人の承諾書に申込者の親の署名と捺印があったものの、どう見ても申込者本人と筆跡が同じなので電話で確認したところ、親は話すら聞いていなかったケースや、記入されていた連絡先には該当する人物がいなかったケースなどもあります。
本人の審査が通って、連帯保証人が通らなかった場合には、費用はかかるものの保証会社を利用することで入居審査をクリアすることはできます。この場合、保証会社の審査も受けることになるので、金融機関やクレジット会社と同等の厳しさになります。
ほかにも、大家の意向によっては対面で入居希望者の人物査定をすることもあります。
さて、どうしても入居したいのに審査が通らないケースでは、どうすればいいのでしょうか? 最終的には貸主の判断になりますが、金銭的な不安があって審査が通らない場合などは、1年分の賃料を先払いして定期借家契約にするなどの条件変更で契約に至る場合もあります。
ひと口に「審査」といっても、明確な基準があるケースは少ないのが現場の実際です。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)