映画『紙の月』(松竹)が公開から1カ月以上たった今も、着実に観客動員数を伸ばし続けている。原作は直木賞作家・角田光代の同名ベストセラー小説で、監督は『桐島、部活やめるってよ』で第36回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した吉田大八。

いわゆるエンターテインメント系映画とは一線を画す作品だが、「11月15日公開のためすでに上映を終了した劇場もありますが、まだ上映されている劇場では休日ともなれば毎回満席状態」(映画業界に詳しい週刊誌記者)という異例の人気ぶりをみせている。

 物語は、宮沢りえ演じる平凡な主婦・梅澤梨花がある日、歳の離れた大学生・平林光太(池松壮亮)に出会い不倫関係に落ちるところから始まる。梨花は光太との贅沢な逢瀬を重ねるために契約社員として勤める銀行で徐々に横領を重ね、光太と夢のような時間をすごす。しかし、やがて巨額に膨れ上がった横領が銀行にばれ、光太も若い女性の元へ去っていき、梨花の人生は破滅していくというストーリーだ。

 第27回東京国際映画祭観客賞・最優秀女優賞をはじめ計11にも上る映画賞を獲得しており、作品としての評価はすでに定まっているといえよう。一方、ベッドシーンを含め宮沢の体当たりの演技も多数見られるため、観客からは「41歳でこれはヤバすぎる」(40代男性)、「スッピンなのに色気がハンパない」(30代男性)、「平常と狂気を行き来する演技が完璧」(同)、「年上の女性にアダルトな魅力を感じたのは初めて」(20代男性)など、宮沢を絶賛する声が数多く聞かれる。一部インターネット上でも宮沢に“ヤラれた”人々のコメントが多数見られるが、映画業界関係者が語る。

「宮沢の役は普段はとにかく地味で普通の主婦。劇中でもほとんどのシーンでスッピンに近い顔です。そんな宮沢が本気で恋に落ちた年下男性のために横領に手を染め、狂った様子で独り黙々と部屋で書類を偽造する一方、散財して享楽と快楽の限りを尽くすというギャップ、そして人生を転落し破滅していく宮沢の美しさが、まさにこの映画の見所といえるでしょう。さらに吉田監督特有の乾いた映像によるベッドシーンや池松と愛を重ね合うシーンの宮沢も、なんともいえないスッピンの表情が余計にいやらしくエロティックで、素晴らしい奇跡の演技といえます。恐らく主役が宮沢でなければ、本作品の魅力は半減していたでしょう」

●宮沢と主人公の人生がオーバーラップ

 また、本作品がこれほどまでに根強い人気を集めている理由について、前出記者が話す。


「本作品を称賛している人は、特に30代後半~40代が多いように感じます。つまり宮沢と同世代ですが、『ふんどしヌード』やヘアヌード写真集の先駆け的作品『Santa Fe』で社会現象を起こしていた10代の頃の宮沢を鮮明に記憶している世代でもあります。宮沢はその後、当時人気相撲力士だった貴花田(現・貴乃花親方)との婚約解消やメディアによるバッシングなどが続き、一時は芸能活動休止状態に追いやられ、拒食症や激ヤセなども取り沙汰されるまでになりました。しかし、徐々に復帰し今では日本を代表する女優にまで上り詰め、一児の母でもあります。本作品にのめり込んだ観客の多くは、そんな宮沢と主人公の人生を頭の中でオーバーラップさせているのかもしれません」

 最近ではバラエティ番組『ヨルタモリ』(フジテレビ系/毎週日曜夜11時15分~)にもレギュラー出演するなどマルチな才能を発揮している宮沢。しばらくは宮沢の人気は安泰といえよう。
(文=編集部)

編集部おすすめ