ジャスダック上場のコンドーム大手、不二ラテックスの株価は7月7日、年初来高値の393円をつけた。同社のコンドーム増産が報じられたことが買い材料となった。
特に中国をはじめとする海外で、旺盛な需要が見込まれている。薄型コンドームは中国の百貨店などで販売されており、現地では高級品だが、円安効果もあって相対的に割安感が出ており、取り扱う店舗が増えている。
不二ラテックスは1949年3月、岡本理研ゴム(現オカモト)から独立したコンドームのメーカー。水枕やゴム風船なども生産するが、近年は産業機械向け緩衝器(急激な衝撃を緩和する装置)が主力事業になっている。本社ビルがコンドームに近いかたちをしていることが有名で、しばしばメディアなどで取り上げられることもある。
創業事業であるコンドームの業績は低迷していた。15年3月期連結売上高は前期比4.6%増の67億円だが、純利益段階では1億5900万円の赤字(前期は1億6300万円の黒字)に転落した。赤字転落の原因はコンドームの不振だった。コンドームは売り上げが年々、落ちていた。コンドームを中心とした医療事業の売り上げは17億8500万円に減少、3億4800万円のセグメント赤字となり、これが全社の業績の足を引っ張った。
にもかかわらず不二ラテックスは、コンドームを増産する。
今年に入り、他のコンドームメーカーの株価にも異変が生じ、上昇を続けた。東証1部上場のオカモトは7月27日、年初来高値の600円をつけた。東証2部上場の相模ゴム工業は7月24日、年初来高値を更新し740円を記録した。年初来安値395円(1月19日)の1.9倍という暴騰ぶりだ。オカモトは国内市場では50%のシェアを占め、世界シェアは第3位である。
●中国人観光客の「爆買い」
こうした動きの要因としては、中国人観光客の「爆買い」がある。この2年間で人民元の価値は対円で4割上昇し、個人観光ビザの発給要件が緩和されたこともあり、日本への旅行はかつてないほど手軽になった。今年2月、春節の休みを利用して訪れた中国人観光客による爆買いで、予想以上に売り上げを伸ばした百貨店や家電量販店の株価が上昇したのは記憶に新しい。
爆買いの対象は、洗浄機能付き便座、電気炊飯器、空気清浄器の「新三種の神器」にとどまらない。コンドームも爆買いのターゲットになった。ドラッグストアでは世界最薄コンドームとして知られる相模ゴム工業製「サガミオリジナル0.01」の品切れ状態が続いた。
中国では、粗悪なコンドームがたびたび問題になっている。こうした事情から、品質に優れ安心して使用できる日本製の薄型コンドームが中国人に人気だ。
ネット通販サイトを使った、転売目的の大量購入も横行している。コンサルタントの大亀浩介氏は、6月22日付情報サイト「ハーバービジネスオンライン」記事で中国のEC事情についてこう語っている。
「世界最大のECサイト『淘宝』には、日本から持ち込まれた製品が多数転売されていて、日本ブランドの化粧品、アパレル、目薬、コンドームや、ベビーカーなどの子供用品が(日本の)2倍近い値で取引されている」
数年前、店頭で買い占められた花王の紙おむつ「メリーズ」が中国で高値転売されていることがメディアを賑わせたが、今では転売目的の商品はコンドームにまで及んでいるのだ。
全世界のコンドーム総消費量は年間58億個で、消費量の一番多い国は中国の11億個超と推定されている。国内市場が縮小していく中、コンドームメーカーは中国などアジア地域での海外展開を強化して、収益の拡大を狙っている。それを株式市場が評価して、株価が上昇した。
(文=編集部)