天王山でもテレビの地上波中継はなかった――。
プロ野球ペナントレースは佳境に入り、セ・リーグは東京ヤクルトスワローズと読売ジャイアンツ(巨人)が史上稀に見るデッドヒートを繰り広げてきた。
残り10試合を切ったなかでの大混戦にもかかわらず、巨人のお膝元である日本テレビは27日の試合を、デーゲームであるのに地上波中継しないという異常事態が起こった。日本テレビ関係者が話す。
「一昨年、優勝の懸かった試合を土曜のゴールデン帯で急遽生中継し、5.1%(ビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)という大惨敗に終わった。あれ以来、それまで以上に巨人戦の価値は下がってしまった」
確かに、日テレは今年、巨人戦ナイター中継を7月限りで打ち切りに。通常番組が視聴率2ケタ当たり前の状況で、1ケタ確実の巨人戦を放送すれば、大きな痛手を被ってしまうことを考えれば当然の策といえる。また、8月25日にフジテレビがナイター中継したヤクルト対巨人戦は3.7%というゴールデン帯では考えられない低視聴率に終わっている。もはや、巨人戦ナイターでの高視聴率は見込めない状況なのだ。
だが、ナイターならばまだしも、デーゲームですらも巨人戦中継は地上波から見放されるようになってしまったのか。
「『BSがあるから地上波で中継する必要はない』という意見がテレビ局内では圧倒的ですね。
地上デジタル放送に移行され、BSは全国の家庭で見られるようになっている。しかし、普及率は70%程度。地上波でないと巨人戦を見られない層が30%いることも事実である。野球記者が話す。
「シーズン中にもかかわらず、原監督の解任、江川卓氏の監督就任が囁かれるのも、視聴率と無関係ではないでしょうね。3連覇中であり、第2次原政権の9年間(06年~14年)で6回リーグ優勝を果たしている名将を、今年優勝を逃した程度で解任するのは考えられない。まして、コーチ経験もなく、現場から30年近く離れている江川氏が候補ですからね。確かに原監督ではこれ以上視聴率の上昇は望めないし、江川監督が誕生すれば、江川嫌いのアンチ巨人も興味を持つだろうし、話題にはなりますよね。
いくら中継数が大幅に減ったとはいえ、日テレは巨人を完全に切ることはできない。となれば、通算12年にわたった原監督時代が終わり、江川新監督を望んでもおかしくない。ちなみに元巨人の4番で米大リーガーに渡った松井秀喜は読売グループとは距離を置きたがっていますから、就任は当分ないでしょう」
9年にわたる長期政権を築いた長嶋茂雄監督が勇退し、原辰徳監督に代わった02年、巨人戦の平均視聴率は前年を上回った。視聴率回復起爆剤として、日テレは「江川卓監督誕生」を望んでいるのか。
(文=編集部)