--この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は林賢一氏が、ミネラルウォーター「い・ろ・は・す」の内容量に関する謎に迫ります。

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【ご回答いただいた企業】
日本コカ・コーラお客様相談室

 ちまたでは、さまざまなミネラルウォーターが販売されているが、筆者はその中でも「ボルヴィック」(キリンビバレッジ)と「い・ろ・は・す」(日本コカ・コーラ)が好きだ。どちらも味が筆者の好みにピッタリなのだ。

 そのため、水を飲みたい時にはこの2種類を探すことになり、コンビニエンスストアなどの店舗でどちらかが売っていれば問題ないのだが、困るのはどちらも売り場にある場合だ。2択から選ぶというのは、非常に悩ましい。

「このあいだ『ボルヴィック』を飲んだから今回は『い・ろ・は・す』にしようか。いや、今日の気分は……」

 こんなふうに考えているとキリがない。どちらも好きなのだから、本質的には選びようがない。そこで、ふと思う。「い・ろ・は・す」のほうが量は多いんだよなあ。

 ご存じの方も多いと思うが、普段使いしやすい容器に限った場合、「ボルヴィック」は500ミリリットルで、「い・ろ・は・す」は555ミリリットルである。つまり、「い・ろ・は・す」のほうが55ミリリットル多いのだ。もちろん、多いぶんにはありがたいのだが、この555という数字はどのように決められたのか。
うーん、気になる。

●「い・ろ・は・す」が555ミリリットルのワケ

 そこで、日本コカ・コーラお客様相談室に直接聞いてみた。

「『い・ろ・は・す』は、なぜ555ミリリットルになっているのでしょうか」

担当者 通常のペットボトルは500ミリリットルが主流ですが、「い・ろ・は・す」はなぜ555ミリリットルなのかということでございますね。皆様に多くお飲みいただきたいお気持ちもあり、感謝の気持ちを込めまして通常サイズよりも大きなサイズにしております。

--やはりそうですか。しかし、できればほかの商品でも同様にしてほしいと思ってしまいます。なぜ「い・ろ・は・す」だけなのでしょうか。

担当者 現在は、緑茶の「綾鷹」なども525ミリリットルのサイズにしており、「い・ろ・は・す」ほどではありませんが、通常よりも増やしています。

--600ミリリットルなどわかりやすい数字ではなく、525や555というのは何か意味があるのですか。

担当者 お茶やミネラルウォーターについては、「量が多いほうが嬉しい」というお声をいただいておりますので、感謝の意を込めて少し増量したというところです。お客様としては、もう少し増量することをお望みでしょうか。

--いや、充分です! ちなみに、大きいサイズに関しても、「い・ろ・は・す」は1000ミリリットルではなく、1020ミリリットルになっていますね。


担当者 このサイズについても、「量が少しでも多いほうが嬉しい」というお客様のご要望を反映させて1020ミリリットルとなっております。

--これは555ミリリットルの2倍の1110ミリリットルではないのですね。

担当者 実は「い・ろ・は・す」も500ミリリットルから始まりました。それが少しずつではございますが、量が多くなり555ミリリットルとなっています。

--わかりました。あと、「い・ろ・は・す」は“エコ”を掲げていますが、「い・ろ・は・す」で使われている「潰しやすいペットボトル」はほかの商品では使用できないのですか。

担当者 「い・ろ・は・す」のボトルに関しましては、植物由来の容器を使っているのですが、今のところはこの植物素材を使った容器は「い・ろ・は・す」のみです。潰しやすいという意味においては、2リットルのサイズの「綾鷹」のほか、「爽健美茶」「アクエリアス」「森の水だより」などでも潰しやすい「ペコらくボトル」というものを導入しております。

--やはり他商品には応用できないのでしょうか。

担当者 徐々に広げたいとは考えていますが、今のところは「い・ろ・は・す」のみとなっております。

--ありがとうございました。

 このように、「い・ろ・は・す」が555ミリリットルという微妙に“刻んでいる”わけは、「感謝の気持ちを込めて」とのことだった。
ありがたい。とてもありがたい。

 ただし、他社もそれに負けじと増量しており、最近は600ミリリットルの商品などもよく見かけるようになってきた。この感謝の気持ちを込めた争いが今後も続いていくと、「次は700ミリリットルだ」「うちは800ミリリットルで勝負だ!」「それならば900ミリリットルで返り討ちだ!」などと過熱して、気がついたら1リットルが売れなくなってしまうので、争いは“よきところ”で止まるのでしょう、などということを555ミリリットルの「い・ろ・は・す」を飲みながら思うのでした。ごっくん。
(文=酒平民 林 賢一/ライター)

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