先日10日、ついにJRAで涙の初勝利を挙げ、大きな注目を集めた藤田菜七子騎手。
その日、ローカルの福島競馬場には重賞開催もなかったが、朝からパドックを満員にできる藤田菜七子騎手の集客力は、今の競馬界で間違いなく「No.1」といえる。
ただ、この"競馬界のアイドル"の恩恵を最も大きく受けているのは、藤田菜七子騎手が所属する日本中央競馬会(JRA)ではなく、長年売り上げ低迷に苦しんでいる「全国の地方競馬」だろう。
藤田菜七子騎手の新人としては異例の"全国行脚"の旅は、神奈川の川崎競馬場から始まった。それもまだJRAでのデビュー戦を迎える前の"フライングデビュー"だったのだから、その期待度の高さが窺い知れる。
もちろん効果はテキメンだった。菜七子デビューに沸いた川崎競馬場には、60社130人以上の報道関係者と30台以上のTVカメラが集まり、前開催の2倍のファンが詰めかけて、売上げも10億円を突破したのだ。
次に"菜七子フィーバー"にあやかったのは、高知競馬と浦和競馬だ。
こちらも藤田菜七子騎手の参戦による売り上げは上々で、高知競馬は連敗記録が話題になったハルウララの出現以来の大盛況。浦和競馬場にも3000人以上のファンが集まり、藤田菜七子騎手が初勝利を挙げた際は、記憶にないほど大きな歓声が上がっていた。
しかし、ここにきて「ちょっとやりすぎでは?」という声も聞こえ始めている。
菜七子フィーバーに乗じた「あまりに露骨な歓迎ムード」が競馬ファンに違和感を与えたのは、先日12日に藤田菜七子騎手が遠征した金沢競馬の熱狂的な歓迎ぶりに対してだ。
この日も金沢競馬場には開門前から多くのファンが詰めかけていた。これだけなら最早「当たり前の光景」と言えるが、金沢競馬は異例の『藤田菜七子紹介セレモニー』まで開催。
たった一人の新人騎手のために主催者がわざわざセレモニーまで開くのも異例だが、さらに目を引いたのは、その日の金沢競馬のレーシングプログラムだ。
1レース目から『ようこそ藤田菜七子騎手杯』が開催され、続いて『藤田菜七子騎手来場記念』、『がんばれ菜七子さん!』と本人でなくとも恥ずかしいレース名がずらずらと並んでいる。
これには競馬ファンも「完全にアイドル扱いだな」「やりすぎだろ」「自分だったら絶対やめてほしい」と金沢競馬全体の過剰な必死さに"ドン引き"の様子......。もちろんこれらは金沢競馬なりの藤田菜七子騎手に対するエールなのだろうが、その目に余る必死さには"理由"があるようだ。
「実は金沢競馬では、ここ数年"八百長疑惑"が何度も浮上しています。ネットの中でも掲示板で『本日金沢9Rで八百長が行われます』というスレッドが立って、次々と予告が当たったことから大騒ぎになりました。その影響でファン離れが加速し、今の金沢競馬が深刻な財政難に陥っているというウワサまであります」(競馬記者)
確かに、今でもネットで金沢競馬を検索すると「八百長」というワードがすぐに出てくる。八百長の証拠を指摘した"疑惑のレース動画"なども存在し、競馬ファンの疑念はかなり強いようだ。
また今回の金沢遠征での"接待"ぶりは、セレモニーやレース名だけに留まらず、藤田菜七子騎手の騎乗馬にも表れていた。その新人騎手としてはあまりに異例の"豪華ラインナップ"に、戦前からマスコミ間では『菜七子、全部Vチャンス!』という文字などが躍ったほどだ。
結果的に、JRAではデビューから51戦目で初勝利にたどり着いた藤田菜七子騎手が、この日は7戦して2勝2着2回。
無論、藤田菜七子騎手と騎乗馬の質と金沢競馬の直接的な関係はない。だが、「八百長」の疑惑が持たれてしまっている以上、今回のような過剰な"菜々子推し"は確かに公平さを欠いていると疑われても仕方のないところか。
それでも、藤田菜七子騎手が参戦した先日の金沢競馬は大盛況。売り上げは、例年の同時期の2倍以上を記録したそうだ。
だが、目の前の売り上げにばかり捉われて「八百長疑惑」という根本的な問題から目を背けていては、金沢競馬の未来は明るくないはずだ。