一戸建ての建物の価値は20年でゼロになる――。
そんな常識がまかり通っていますが、果たしてこれは正しいのでしょうか。
●新築や築浅物件は一戸建てのほうが安い!
まずは図表1をご覧ください。これは、首都圏で取り引きされている中古マンションと中古一戸建ての成約価格が、建築後の経過年数によってどう変わるかを示しています。
築0~5年以内の新築に近い状態では、マンションのほうが圧倒的に高くなっています。特にここ数年は新築マンション価格が大幅に上がっていることもあって、築浅の中古マンション価格も上昇、4739万円に達しています。それに対して、築浅の中古一戸建ては3710万円で、なんと中古一戸建てのほうが1000万円以上も安くなっています。
新築や新築後間もない物件では、マンションに比べて一戸建てのほうが格段に手に入れやすくなっていることがわかります。
●マンションは築25年まで急激に下がる
その後、築年数が経過するにつれて、マンション価格は急激に低下します。特に建築後25年までは、まさに右肩下がりといっていい状態で、築21~25年になると1729万円で、築0~5年の4739万円に比べると3分の1近い水準まで低下します。さらに築31年~では1572万円と、築0~5年の3分の1以下まで下がります。
それに対して、一戸建ての下がり方は緩やかです。
●新築時にはマンションのほうが格段に高い
新築時の価格をみると、図表2にあるように、マンションが5000万円を超えているのに対して、建売住宅は3000万円台の前半です。一戸建てが安いというよりは、このところマンション価格が高くなりすぎているという見方もできます。
この状態が続けば、やがて消費者がマンション価格の上昇についていけなくなるのは自明の理。やがて横ばいから下降局面に入るでしょう。これまでのマンション市場を振り返ってみれば、7~8年から10年程度のサイクルで上昇・下降を繰り返してきました。そろそろその潮目の変化が近いのかもしれません。
●中古マンション価格も上がりすぎている
いずれにしても、マンションは先に触れたように中古になると価格が急激に低下します。新築時にはマンションのほうが圧倒的に高いのに、図表3にあるように、中古市場では一戸建てのほうがむしろ高くなっています。
ただ、このところは中古マンション価格の上昇による逆転現象もみられます。
●日本人の土地信仰、一戸建て指向は正しい?
国土交通省が行っている「平成26年度土地問題に関する国民の意識調査」によると、日本人の79.2%は、自分の住む家について、「土地・建物については、両方とも所有したい」としています。かつての90%前後に比べると若干少なくなっているとはいえ、日本人の土地信仰には根強いものがあります。
さらに、同調査から望ましい住宅形態をみると69.1%が「一戸建て」としています。「一戸建て・マンションどちらでもよい」が18.9%で、「マンション」と答えた人は10.3%にとどまります。
日本人の土地信仰や一戸建て指向には根強いものがあり、それもやはり土地付きの一戸建ての資産価値の高さからきているのではないでしょうか。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)