激戦の末、ハナ差でキタサンブラックの勝利に終わった天皇賞・春(G1)。とはいえ、2着となったカレンミロティックもこれ以上ないレースができていた。
直線、主戦の池添謙一騎手が万を持して追い出し、ゴールドアクターや他のライバルを交わして前を行くキタサンブラックに詰め寄った。一度は完全にキタサンブラックの前に出ており、多くのファンも「まさかカレンが……」と思ったに違いない。最終的にキタサンブラックの脅威の差し返しに屈したわけだが、ラスト100m時点では「カレンの勝ち」と断定しても仕方のない状況だった。
どうやら、このカレンミロティックの激走に「困惑」したのはファンだけではなかったようだ。このレースを放送していたNHKの藤井康生アナウンサーである。
最後の直線、キタサンブラックにカレンミロティックが詰め寄ったあたりで藤井アナは興奮気味に実況。外から迫るトーホウジャッカルをかなり大声(外からトーホウジャッカル! と連発)で実況している間にカレンミロティックは一瞬キタサンブラックを交わした。ここから藤井アナは、まさかの「断定実況」を始めてしまう。
残り50m、一瞬先頭に踊り出たカレンミロティックに「なんとなんと! カレンミロティック先頭!」と実況、キタサンブラックが差し返しにいっているにもかかわらずさらに「カレンミロティックーーーー!」と絶叫してゴールインしてしまった。この時点で「いやいや、これはわからないだろ」と思ったファンが大多数に違いない。
さらに藤井アナの「暴走」は続く。
藤井アナはその後「状況」に気づいたのか「ほとんど並んでゴールですがどうか……さあどちらか!?」「非常に微妙です」「キタサンブラックがもう一度差し返したかもしれません!」とシレっと修正していた。もう完全に手遅れではあったが。解説の白井寿昭元調教師が「若干キタサンブラックが勝ったような気がします」というのだからさらにバツが悪い。
ネット上では「なんでこうなる、完全に並んでただろ」「際どいのに着順明言はタブーだろ」「競馬実況としては最大の失態だ」「あそこまで言い切って無かった事のようになんとも言えませんにシフト」など非難する声もあれば「まあ、あの脚なら勝ったと思うかも」と擁護する声も極一部あった。
NHKは、競馬はとりわけビッグレースしか放送しないためにアナウンサーの「場数」という点では劣るという認識がある。この藤井アナもどちらかというとメインは「大相撲」の印象なので、致し方ないといえばそうなのだが、それでもかなりの「事故」ではある。
藤井アナの実況でキタサンブラックの単勝馬券を破り捨てたファンがいなかったことを祈りたい。あまりにも不憫だ。