ゴールデンウィーク中に東京都や福岡県で開催された人気イベント「肉フェス」。そこで販売された料理を食べた157人が食中毒を発症する事態となったことは、記憶に新しい。



 しかし、この肉フェスに限らず、一部の食フェスでは、運営会社が儲け主義に走り、杜撰な調理や衛生管理、不当に高いメニューなどが横行しているという。これからの夏休みシーズン、全国で多くの食フェスが開催される予定だが、その実態は、いったいどのようなものなのだろうか。

●参加店舗が語る、食フェスの杜撰な実態

 肉フェスで食中毒を発症した人たちが口にしたのは、「ハーブチキンささみ寿司」という、半生状態の鶏のささみを寿司仕立てで提供するメニューだった。しかし、食肉業界の関係者は「そもそも、肉フェスのような屋外イベントで『ささみ寿司』を出すというのが信じられない」と首をかしげる。

「鶏肉は、法律や条例によって生食が禁止されているわけではありませんが、これは、法律で禁じるまでもなく『鶏肉は生で食べてはいけない』というのは常識だからです。多くの日本人は、新鮮で適切な処理がされていれば、なんでも生で食べられると思いがちですが、世界的に見れば、どんな肉も火を通して食べるのが基本です」(食肉業界関係者)

 肉フェスだけでなく、さまざまな料理が楽しめるフード系イベントは、集客力があるため全国各地で盛んに開催されている。しかし、その杜撰な実態について、食フェスに参加した経験のある飲食店経営者は以下のように語る。

「食フェスは店舗ごとのブースが狭いので、簡単な調理器具しか置けず、食材の管理もままならない。その上、スタッフはアルバイトが中心です。そこにたくさんの客が押し寄せてくるので、提供する側は、とにかく客をさばくことしか考えません。店舗側も高い金を払ってフェスに参加しているので、料理の完成度や衛生管理よりも売り上げ重視になってしまう傾向があるのです」(飲食店経営者)

●過去にもトラブルを起こしていた、肉フェスの運営会社

 なかでも、肉フェスは2014年に初開催された頃から「値段設定が不当に高い」「メニュー写真と実物の差が激しい」など、ネガティブな意見が多かった。

 主催会社のAATJは、肉フェス以外にも、主に音楽系ライブや企業イベントなどを主催しているが、それらのイベントでも、トラブルを起こしたことがあるという。


「AATJの主要株主は、サイバーエージェントや博報堂DYメディアパートナーズなど、いわゆるイベンターです。12年に韓流スターが集う『K-POP IN 豊岡・神鍋高原』というライブイベントを開催した際には、突然中止を発表して問題になりました。

 しかも、AATJ側は、チケット代金のほぼすべてを韓国のプロダクションへの前金や開催準備費用に使ったと釈明し、前売りチケット購入者に対しても返金などを行わなかったのです」(イベント関係者)

 肉フェスの開催中も、ささみ寿司に食中毒発生の疑いがあるとして、保健所から販売中止を勧告されていたが、AATJ側は無視して販売を続けたのである。

 こうした批判に対して、AATJの広報担当者は「確かに保健所から指摘を受け、一旦、販売を中止しました。ですが、保健所から『火を通せば販売してもいい』という許可を受けたので、調理方法を変えて販売を開始した」と弁明している。しかし、前出の食肉業界関係者は指摘する。

「今回の食中毒の原因となったカンピロバクター菌は、充分な加熱調理をすることで死滅するとされていますが、結果的に被害が拡大した以上、加熱を怠ったといわれても仕方ありません。ただし、菌というのは目に見えないですから、いつどこで混入したのかはわからない。仕入れた時点で汚染されていた可能性もあります」

 問題のささみ寿司を提供していたのは名和食鶏という食肉加工会社だが、同社も、11年頃に死んだニワトリ1200羽あまりを不法に埋め捨てていたとして、廃棄物処理法違反の罪に問われている。

 こうしてみると、肉フェスでの食中毒発生の原因は、単純に生食のリスクだけでなく、関係企業それぞれの思惑や、食フェスという構造上の問題が重なった結果といえる。

「こういうことを言ってはいけないのかもしれませんが、やはり、消費者側の意識も低くなっているのではないでしょうか。冷静に考えれば、あんな場所で生の鶏肉を食べることがどれだけリスクを伴うか、わかるはず。
特に老人や子供、体調が悪い人などは注意すべきです」(食肉業界関係者)

 今夏も、全国各地で食フェスが多く開催される。出店する飲食店の衛生管理を全面的に信頼するのではなく、今一度、自分たちの目や知識で判断することが必要かもしれない。
(文=ソマリキヨシロウ/清談社)

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