やはり、この騎手だけはわからない。それは筆者が凡人だからだろうか。
10日、福島で開催された七夕賞(G3)。レース前から大荒れの結果が予想され、誰が勝っても……言い換えれば、誰にでもチャンスがありそうなハンデ戦だったが、レースを制したのは現在リーディングを快走している戸崎圭太騎手のアルバートドックだった。
やはり「競馬は騎手」ということだろうか。
レースでは、8番人気のメイショウナルトが一発を狙って果敢に逃げを打った。外連味のない逃げを見せ、後続集団を3馬身、4馬身と突き放していく。
だが、そんなメイショウナルト以上に集団をぶっちぎっている馬がいた。
それこそが横山典弘騎手が騎乗したマジェスティハーツである。
あの「武豊以上の天才」といわれている関東の名手は「直線の短い福島で、ここから一体どうするのか」と思わず考え込んでしまう大胆な位置取り。集団からは5馬身ほど離された、堂々の最後方待機である。
つまり、正しくは「ぶっちぎっている」ではなく「ぶっちぎられている」ということだ。
冒頭でも触れた通り、この七夕賞は1番人から5.8倍、5.9倍、5.9倍、6.9倍、7.1倍と続くほどの大混戦で、マジェスティハーツは11.3倍の6番人気だった。要するにワンチャンスあるといった存在だ。
だが、そんなマジェスティハーツの馬券を買っていた人は、レース中にこの馬を見つけることさえ困難だったに違いない。あの位置取りは、それくらい蚊帳の外だった。
しかし、まだレースは中盤。ここから横山典騎手が天才たる所以となる妙技を繰り出してくれれば何の問題もない……とワラにも縋る思いで祈った人はいても、自信をもって“大逆転”期待していた人は少なかったのではないだろうか。
何故なら、この騎手の「最後方ポツンそのまま」は競馬ファンの間では有名だからだ。
案の定、1つ前を走っていた内田博幸騎手のオリオンザジャパンが、勝負所の3、4コーナーに掛けて、内からグングン進出していくのを「どうぞ、どうぞ」と言わんばかりに見送っているようにも見える横山典騎手。
最終コーナーで内側の経済コースを通ったため最終的には16頭中12着だったが、最後の直線での派手なアクションはほとんど見られなかった。
一方で似たような位置から追い込んだオリオンザジャパンは3着に食い込み、11番人気の低評価を覆している。だけに、まさにそんな騎乗を期待していたマジェスティハーツの馬券を買っていた人は堪らないだろう。
これも天賦の才を持つが故の独特の感性なのだろうか……ネット上でも「え?どこにいたの?」「毎度のことだが、何がしたかったんだ?」「やる気あるのか……」と戸惑いの声を数多く上がっている。
中には「この騎手の馬券を買うやつが悪い」といった辛辣な意見も……。
「マジェスティハーツと横山騎手のコンビは2014年のエプソムC以来でしたが、実はその時も1番人気で最後方から競馬をして、メンバー最速の上がり使ったものの6着に敗れています。
ファンの間では、マジェスティハーツの主戦・森一馬騎手の心情を気遣うコメントも多くみられたが、確かにこれなら乗り替わる必要があったのか甚だ疑問と言わざるを得ない結果だが、果たして……。